アメリカ利下げで「円高」が進みそうもない諸事情 やがて見える「利下げの終わり」と構造的な円安の今
このように述べると、「日米金利差の縮小に応じて過去2カ月弱は強烈な円高が進んだではないか」という声も聞こえてきそうである。だから、円高を予想すべきではないのか、と。それは半分正しいが、半分正しくない。
今後ますます「やはり円安はすべて金利差で説明可能だった」という論調が勢いを得やすくなる雰囲気は強まるだろう。
過去の本コラムでも論じたが、ドル/円相場の方向感を規定する説明変数として日米金利差が重要であることは論を待たない。筆者は、需給構造の変化を注視すべきと主張しつつ、方向感を規定する金利差の重要性自体、否定したことは一度もない。その意味で上記のような声は正しい。
しかし、110円付近から162円付近まで進んだ円安・ドル高のすべてを金利差に帰責させるのもまた、無理があるのではないかというのが筆者の立場だ。
円高地合いには需給改善も寄与している
では金利差以外の説明変数には何があるのか。
それは国際収支統計に集約される需給環境であったり、消費者物価指数(CPI)などに象徴される一般物価であったり、内外の政治・経済環境に影響を受けた投機的なポジションメークであったりするだろう。それぞれの説明変数の力(計量分析的に言えば係数)は可変的であるため、「これが未来永劫、唯一絶対の要因」ということはあり得ない。
需給環境に主眼を置くべきという筆者の主張の「軸」がぶれていないことを強調するために示すが、最近の円高地合いは金利差縮小だけではなく需給改善も明らかに寄与している。
過去2年間(2022~2023年)に関して言えば、貿易赤字は累積約30兆円という未曽有の規模にあった。この結果、筆者試算のキャッシュフロー(CF)ベース経常収支は約11兆円という赤字を記録していた。
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