社説:NHK国際放送 再発防止で自主性守れ

 公共放送の信頼を大きく揺るがす問題だ。

 NHKのラジオ国際放送の中国語ニュースで先月、中国籍の外部スタッフが原稿にない発言をした。尖閣諸島を中国の領土と述べ、南京大虐殺や慰安婦、731部隊を忘れるな、といずれも英語で、約20秒間発言した。電波の乗っ取りともいえよう。

 NHKはきのう、国際放送担当理事の更迭や稲葉延雄会長ら役員4人の報酬カットなどの処分を発表した。自らを律し、再発防止に取り組んでもらいたい。

 NHKの調査報告によると、このスタッフは20年以上前からニュース翻訳とアナウンスを担当していた。以前から国際放送の伝え方や待遇面に不満を示していたという。適切な対応が取られなかった上、放送内容の管理・チェック体制の不備は否めない。

 国際放送が長年、外注頼みになっていたことにも疑問を抱かざるを得ない。重要な仕事を任せる以上、正規雇用で待遇を保障し、公共放送の意義や番組づくりを習得、実践すべきではなかったか。

 一方で気になるのは、政府の立場と相いれない発信をしたとして、放送内容に介入する声が与党などで勢いづいていることだ。

 たしかにNHKの国際番組基準は「事実の客観的な報道やわが国の立場を鮮明にする」ことが明記されている。

 国際放送は本来業務の一つで、日本の政策や政府見解を伝える役割もある。総務省が放送事項を指定して国際放送を行うことを要請する仕組みもある。

 だが、NHKは「国策放送局」ではない。国際放送にもNHKの編集権は認められている。

 それだけに、その後の経緯やNHK側の対応には違和感が残る。

 稲葉会長は自民党の情報通信戦略調査会に呼ばれ、「日本政府の立場を繰り返し放送してバランスが取れる」と責められ、後日、総合テレビで日本政府の公式見解を何度も流した。

 自民議員からは、外国籍スタッフの採用の厳格化を求める声も出たというが、短絡的に不合理な差別を招かぬよう、公正な人材登用と資質向上に努めてほしい。

 国際放送も自主的な編集で放送しているという立場は、公共放送の信頼性を支える生命線である。政治の圧力で自主自律が損なわれることがあってはならない。

 NHKが今後、独立性をしっかり守り抜けるか。国民は注視していることを自覚してもらいたい。

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