2004年4月にイラクで日本人3人が現地の武装勢力に人質として拘束される事件が起きてから20年がたった。拘束から9日目の4月15日に解放されたが、帰国後に待っていたのは、3人の「自己責任」を問う強烈なバッシングだった。3人の中で最年少だった今井紀明さん(38)は今、困窮する若者を支援する認定NPO法人「D×P(ディーピー)」(大阪市中央区)の代表を務める。今井さんは「自己責任という言葉が広く使われる社会がいいのでしょうか。この言葉にあらがってきた20年だった」と振り返る。
孤立、困窮を抱え、親にも頼れない
「国や自治体には、子どもや若者の困窮に関し、相談に乗る仕組みが乏しい。そんな中だからこそ、僕たち非営利団体が声を上げ、セーフティーネットを作る必要があるんです」
そう語る今井さんたちが支援するのは、孤立や困窮という問題を抱える全国各地の13歳から25歳までの若者だ。無料通信アプリ「LINE(ライン)」を通じて匿名で相談ができる「ユキサキチャット」への登録者は約1万3000人を超えた。
「相談者の9割以上が親に頼れない人。これまで相談する場所がなかったケースが多い」。困窮している人に、レトルト食品や缶詰、飲み物など30食ほどを箱に詰めて月1、2回程度送り、これまで計20万食支援してきた。
支援を希望する約1200人を対象にした団体の調査では、46%が「1週間に何も食べていない日がある」と回答した。困窮度が高い人には現金支援もしており、給付総額は7000万円に達した。
D×Pは12年に設立され、スタッフはアルバイトも含め約50人。相談に応じるスタッフ全員が大事にするのが「否定しないこと」だ。幼少期から虐待や性暴力を受けたり、奨学金を使い込まれたり――。誰もが困窮の背景に深刻な事情を抱えており、今井さんは「本来は家庭で得られるものが得られなかった人が多い。それは彼らの責任でしょうか」と問いかける。
「否定しない」ことを重視する背景には、強烈に否定された自身の…
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