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記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
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メフィスト 2023 SUMMER Vol.8 感想

講談社が運営している会員制読書クラブ「Mephisto Readers Club(MRC)」が季刊で発行している有料会員向け会報「メフィスト」2023年7月号の感想記事です。

直接的にネタを割ってはいませんが、あらすじ等内容に言及はしているので、気になる方はご注意ください。いちおうネタバレタグつけときます。

前号の感想記事はこちら

連載長編

「双子館の殺人」第1回 綾辻行人

とうとう始まった館シリーズ最終作、「双子館の殺人」
第一回の内容は、暗黒館当主から「中村青司の手掛けたある館と、そこに住む双子の様子を見てきてほしい」と依頼された河南孝明が、鹿谷門美に相談を持ちかけるというところまで。

また、暗黒館ので展開される鏡写しのような男女の逢瀬も妖しく美しい雰囲気たっぷりに描かれていて、シリーズファンにはたまらないんじゃないでしょうか。わたし自身は館シリーズをあまり読んでいないので、ちょっとアウェイ感を感じてしまいました。

新たな館の詳細は次回で明らかになるのかな? とりあえず双子は複数組出てきたぞ!

「日本扇の謎」第2回 有栖川有栖

「日本扇の謎」のアイディアに行き詰まったアリスが「扇といえば京都!」と思い立ち、取材旅行に出ようと火村に連絡をとったところ、洛北の日本画家の邸宅で起こった密室殺人のフィールドワークに同行することに……というお話。
この日本画家の邸宅が、前回登場した記憶喪失の青年の実家ということで、話が繋がりましたね。

今回は事件の概要や関係者一覧、現場検証での情報などが提示されました。関係者への本格的な聴取は次回以降に持ち越しですが、どうもすでに火村は密室の謎は看破しているようです。これは次回までに読者も推理してねということなのかなあ。

広大な日本家屋で起きた密室殺人に、癖のありそうな芸術家一家、そしてまたも消えた男と扇。こう書くといかにもミステリ的なケレン味に溢れているのに、さらりとした書きぶりであまりそう感じなくて、普通に現実の日本に溶け込んでるような感じが面白い。

読み切り短編

「私ノケモノ」 岩城裕明

高校時代から友だち同士の美弥、祈里、浦子の三人は、久々の同窓会の帰りにふらりと寄ったショッピングセンターで、巨大なケモノが人間を食べている現場に遭遇する。傍らに落ちていた手帳に目を通すと、どうやら彼女らはケモノの「飼育員」としてエサを与え続けなくてはならなくなったようで――。

面白かったです!
ルールに則って人を喰らう愛らしいケモノの存在を前提にした犯罪小説で、ある意味では特殊設定ミステリとも言えるのかな。

ルールの隙をついた犯行はなるほどスマートだし、表面上は「最高のトライアングル」、よい友達同士だった彼女らの関係が、視点を変えるとガラッと色を変えるのは野次馬的な興味をそそるし、各人の思惑が絡み合う先の読めない展開に読む手が止まらず一気読み! でした。

まあ、こういうドロッとした女同士の関係と無縁だから気楽に楽しめたのかもしれないな。

読者参加型謎解き企画〈推理の時間です〉

今回は第3弾「ハウダニット」
犯人や動機と違ってトリックは直感じゃ解けないよなあと不安を抱いていたのですが、どちらの作品も適度に足がかりとなる手がかりを撒いてくれていて、今のところ途方に暮れず考えることができています。頑張るぞ~!

「竜殺しの勲章」[問題編] 北山猛邦

祖父の葬儀のため実家に帰り着いた大学生の「僕」は、ひょんなことから妹に請われ、かつて祖父から伝え聞いた英雄譚――曽祖父・アンティ・ヴィネルヤン少尉が第二次大戦中従事した列車砲輸送任務と、その最中に発生した不可解な殺人事件の話を語ることになる。

タイトル予告時点では「折れた竜骨」みたいなファンタジー系の特殊設定ものかしらと想像していたのですが、第二次大戦時のフィンランドを舞台にした不可能犯罪ものでした。昔語りの形式が「神の光」や「未完成月光」に近い感じ。タイトルの「竜殺し」は作中に登場する列車砲「ジークフリート」にちなんでいるんでしょう。

トリックに◯◯◯(一応伏せ)が使われていることは間違いなくて、多分こういう使われ方をしたんだろうというところまではわかるんです。でもそれを利用するためには犯人はどう動けばいいんだろう? と考えると途端にわからん。共犯者の存在は否定されていないのでその可能性も含めて考えていこうと思います。妹ちゃんが見抜いたってことは特殊な知識が必要なわけではなさそうだし。

舞台がフィンランドということで、冒頭の日付もお話に絡んできそうですね。

「波戸崎大尉の誉れ」[問題編] 伊吹亜門

満州に駐屯する日本軍のある連隊で、軍事物資が横流しされていると糾弾する投書が相次いだ。出所の特定を任された探偵・月寒三四郎は、内部告発者と目された波戸崎大尉に面会するため二村台へやってきたが、大尉はゲリラの攻撃を受け、重傷を負ってしまう。
そしてその夜、波戸崎大尉は施錠された病室から忽然と姿を消したのであった。

なんとこちらも軍隊内で発生した不可能状況による事件を扱った作品。それぞれ普段通りの作風っぽいし偶然なのかな? とはいえ、どこか不思議なおとぎ話めいた北山作品と、汗と血の匂いを感じるリアル寄りな伊吹作品でテイストが全然違って面白いです。

地名も単語も漢字が多いし登場人物の動きも複雑でなかなか把握しきれない! しっかり情報整理して取り組まねばな。こちらもラスト付近でかなりヒントを出してくれてるんですが、この鍵をどう解釈したらいいか。

「ハウダニット」つってんのに設問で手段・計画者・目的全部問うてくるの鬼すぎて笑っちゃったけど、現時点で組み立てる仮説ではこの辺全部繋がってそうなので、ちょっと手応えを感じています。

【追記】わたしが投稿した推理と答え合わせ

本格的なネタバレを含むので、外部サイト(ふせったー)に詳述しました。
迷推理っぷりをどうかご笑覧あれ😂

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メフィスト 2023 SUMMER Vol.8 感想|Cinita
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