イスラム国は中東の国家システム崩壊象徴-軍閥割拠の時代へ
Glen Carey中東では地域のリーダーや組織の下 で土地や人々が支配され、国家による統制がますます困難になってお り、軍閥割拠の時代に移行しつつあるのかもしれない。
中央政府の支配がほとんど及ばないイラクやシリア、イエメン、リ ビアでは武装した不正規軍の勢力が増している。宗教的イデオロギーや 分離主義が動機付けとなり、これらの勢力は石油施設と武器を掌握。税 金を課したり学校のカリキュラムを変更したりしているほか、政府軍と だけではなく、軍閥間で互いに争っている。
ロンドンの外国政策研究所、チャッタムハウス(旧王立国際問題研 究所)の中東・北アフリカプログラムのアソシエートフェロー、ナディ ム・シェハディ氏はインタビューで、「20世紀に構築されたこの地域の 秩序全体がほぼ崩壊しつつあるようだ」と指摘。「国家以外の勢力が空 白を埋めている」と述べた。
世界の原油の半分以上が埋蔵されている中東地域の分裂によって過 激派組織が台頭し、それを阻止するために外国勢力が介入している。こ れらの紛争の多くの根底には、中東の各国政府が安全保障や基本的社会 サービスを提供する能力を欠いている実態がある。機能する行政組織な しに経済政策の失敗を改善することは一層困難であると予想される。
米チャップマン大学の世界教育担当ディレクター、ジェームズ・コ イル氏は、イラクとシリアでの空爆など米国主導の介入が、分裂した国 家を元に戻すことができるかどうかは分からないと指摘。各国政府が安 全保障と基本的社会サービスの提供を通じて人々から合法性を与えられ ていなければ、軍事行動は短期的な効果しか発揮しないだろうとの見方 を示した。
イラクとシリアの一部地域でカリフ(預言者ムハンマドの後継者) 制国家の樹立を宣言したイスラム過激派組織「イスラム国」は、中東の 国家システムに対する最も顕著な挑戦だ。中東の国家システムの大部分 は、第1次世界大戦でのオスマン帝国崩壊後に欧州の宗主国によって持 ち込まれた。
原題:Islamic State Leads Mideast Into Warlord Era as Nations Dissolve(抜粋)