映画

2023.12.28 12:00

ミッキーマウスがついに「著作権切れ」、2024年1月1日から オリジナル版が対象

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『蒸気船ウィリー』のミッキーマウス(Getty Images)

2024年1月1日、映画やテレビで最も人気のある2つのキャラクター、ミッキーマウスとミニーマウスのオリジナルバージョンがパブリックドメイン(知的財産権消滅)となる。これにより、クリエイターはこれらのキャラクターを使って、あらゆる種類の新しいプロジェクトを自由に制作できるようになる。それによって、著作権保護の期間が切れた他の人気キャラクターを基にした『プー あくまのくまさん』や『高慢と偏見とゾンビ』などの映画や書籍が生まれたようなことが起こりそうだ。

無声映画『蒸気船ウィリー』(1928年公開、ウォルト・ディズニーとアブ・アイワークスが監督)が2024年1月1日にパブリックドメインとなり、それに伴いオリジナル版のミニーマウスとミッキーマウスもパブリックドメインとなる。

同キャラクターのオリジナルバージョンの著作権が切れるのは初めてで、これにより漫画家、映画製作者、作家などが自由に使用できるようになる。これは、長年ディズニーによる著作権侵害阻止の訴訟によって制限されてきたクリエイターにとって画期的な出来事だ。

だが、その後に数多くのディズニーの映画やテレビ番組に登場したミッキーとミニーの後期バージョンの著作権はまだ残っている。ディズニーはAP通信に対し、ミッキーは「ウォルト・ディズニー・カンパニーのグローバル・アンバサダーとして主導的な役割を果たし続けます」と語っている。

2024年にパブリックドメインとなる他の作品には、D.H.ローレンスの『チャタレイ夫人の恋人』、ヴァージニア・ウルフの『オーランドー』、アガサ・クリスティの『青列車の秘密』、そしてティガーが初めて登場した「くまのプーさん」シリーズの続編『プー横丁にたった家』などがある。

ここ数年で、『くまのプーさん』の原作、『華麗なるギャツビー』、『メトロポリス』、『下宿人』(アルフレッド・ヒッチコック初のスリラー映画)、アーサー・コナン・ドイルのシャーロック・ホームズ最終作などの作品がパブリックドメインとなった。

このような著作権保護期間が切れた結果、『プー あくまのくまさん』(これは続編の製作も決定している愛すべきクマが主役のホラー映画だ)、Netflixの『エノーラ・ホームズの事件簿』(ホームズの妹が活躍するという設定)、ジェーン・オースティン、ベン・H・ウィンタース、クック・コレリッジの古典をパロディ化したシリーズの第1弾『高慢と偏見とゾンビ』などのプロジェクトが作られるようになった。

ミッキーとミニーは、ピーターパン、バンビ、人魚姫、白雪姫、シンデレラなど、著作権保護期間が切れてパブリックドメインとなった他のディズニーのキャラクターたちの仲間に加わる。これらのキャラクターたちは、ディズニーが映画で再解釈するまでは、グリム兄弟やハンス・クリスチャン・アンデルセンなどの作家による古典作品中の登場キャラクターだった。

著作権の保護期間が切れると、キャラクターは、書物、映画、音楽など、あらゆる種類の新しい作品で公正に使用できるようになる。デューク大学パブリックドメイン研究センターのジェニファー・ジェンキンスは「『ゾンビを追加するだけ』というのが流行りのようですね」と、エンターテイメント産業誌Varietyに語っている。
次ページ > 何度も延長された著作権の保護期間

翻訳=酒匂寛

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2024.08.30 11:00

最先端ディープテックで社会を救え 世界大会進出のスタートアップはどこだ⁉

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KPMGジャパン主催のピッチイベント「KPMG Global Tech Innovator Competition in Japan 2024」(以下、GTI)が、7月26日に都内で開催された。3回目の今回は、昨年の2倍近い38社が参加。“オールKPMGジャパン”で催された一日をレポートする。 

監査・税務・アドバイザリーサービスを提供するプロフェッショナルファーム「KPMGジャパン」が主催するGTI。最優秀賞受賞企業は同年11月、ポルトガルのリスボンで開かれる世界大会「KPMG Private Enterprise Global Tech Innovator」日本代表の切符を手にする。

当日は、KPMGジャパン共同チェアマン/あずさ監査法人理事長・山田裕行のあいさつで幕を開けた。山田は、今年のGTIには約100社の応募があったことに触れ、「生成AIや再生医療の技術がスタートアップから生まれている。今日のピッチイベントを世界に羽ばたく第一歩にしてほしい」と、参加企業に期待を寄せた。参加企業は4ブロックに分けられ、各社3分の短いもち時間のなかで、自らの技術力や将来性をアピールした。
KPMGジャパン共同チェアマンの山田裕行。あいさつで期待を寄せた。

KPMGジャパン共同チェアマンの山田裕行。

大会の特徴となったのが、医療・ヘルスケア領域の企業が3割強と目立ったことだ。特に、がん治療への貢献を複数企業が掲げた。そのほか、バイオ、環境問題解決を絡めたエネルギー事業などの領域で活躍する企業も多かった。技術面で光ったのは、AI活用。診療の精密化や大量のデータ解析などさまざまな用途で導入されていることがうかがえた。東京大学や東北大学などの大学発のスタートアップも、確かな研究基盤などを強みに存在感を放っていた。

ピッチ終了後は、審査員からの質疑応答があった。ヘルスケアやエネルギー領域などは、世界規模で課題解決が目指されている問題を含む。「グローバルでの勝機は?」「商品訴求のためにインパクトのある数字を提示できるか」といった成長につながる実践的な質問が飛び交った。

最優秀賞はThermalytica
次世代の「断熱材」に評価

6つ(イノベーション、市場成長性、顧客目線、マーケティング、長期の成長可能性、ピッチのレベル)の同等加重による審査基準により採点され、審査員が各賞を選出した。選考は難航し、予定より20分も長く議論された。

最優秀賞には、断熱材の開発、遮熱コーティングサービスを提供する「Thermalytica(サーマリティカ)」が選ばれた。

同社が開発する断熱材「TIISA」は、手のひらに厚さ2mmほどのものを置いて1,300℃の熱を加えても熱さを感じないほどの断熱性を誇る。顆粒などさまざまな形状にでき、建材に混ぜることで建物のエネルギー効率を上昇できるという。

同社経営戦略部長の篠本遼は受賞について、「グローバル展開を進めている段階での最優秀賞受賞は、大きな励みになる。日本のディープテックはまだ評価されていない部分が大きいが、現況をブレイクスルーし世界大会でインパクトを残したい。ヨーロッパでの拠点を整えつつあるので、大会を通じてネットワークを構築したい」と意欲を示した。
最優秀賞を受賞した「Thermalytica」の篠本遼。

最優秀賞を受賞した「Thermalytica」の篠本遼。

審査員長で、「イノベーション・インテリジェンス研究所」代表取締役社長の幸田博人は「グローバルな社会課題を解決するということを日本から発信できる」と選定理由を明かした。

アーリー企業のなかで最も今後の活躍が期待される「KPMG Dream賞」は、高い生産性と栄養価を兼ね備えた次世代タンパク源「ウキクサ」の安定生産技術を開発する「Floatmeal(フロートミール)が受賞。本拠地を置く北海道では餃子の具材として販売されており、実装が近いと評価された。

今後の成長性が高い企業と認められた「あずさ監査法人インキュベーション賞」には、半導体に続く第4の物質群として注目されるトポロジカル物質を使った電子デバイスなどを開発する「TopoLogic(トポロジック)」に贈られた。

イノベーション創出が最も期待される企業へ贈る「Private Enterprise賞」は、プラスティックを分解する独自の化学触媒を開発する「AC Biode(エーシーバイオード)」が選ばれた。問題解決のインパクトと経済性が決め手となった。

社外審査員6人が選んだ「審査員特別賞」は、新たなカーボン材料グラフェンメソスポンジを開発する「3DC(スリーディーシー)」が受賞。ピッチのレベルが高かった企業に贈られる「プレゼン優秀賞」は、歯の再生治療薬の研究開発をする「トレジェムバイオファーマ」が受賞した。

3年目はピッチ以外も充実
グループ全体でGTIを盛り上げる

今年は、審査中の時間を使い、「ディープテックスタートアップの成長に向けて」と題したパネルディスカッションも開催。

登壇者はKPMG FASや、KPMGコンサルティング、KPMG税理士法人、あずさ監査法人といったKPMGジャパンのファームの多様な面々だ。IPOのトレンドや地域型オープンイノベーション、グローバル展開をする際に注意すべき税務処理といった、各ファームの専門領域からみたスタートアップの課題などをディスカッションした。

特に地域型オープンイノベーションの話題は盛り上がりを見せた。地域はオーナー企業が多く意思決定が速いために、スタートアップとの協業の動きが大企業に比べるとスピーディであるといった分析が、事例とともに紹介された。日頃からスタートアップに伴走しているメンバーだからこその視点も多く語られ、スタートアップ支援をKPMGジャパングループ全体で注力していると印象づけた。会場となった渋谷ストリームホールには、多くの来場者が詰めかけた。

会場となった渋谷ストリームホールには、多くの来場者が詰めかけた。

閉会に際し、KPMGジャパンプライベートエンタープライズセクタースタートアップ統轄パートナー、あずさ監査法人常務執行理事企業成長支援本部インキュベーション部長パートナーの阿部博は、総評とともにスタートアップ企業がグローバルレベルでスケールするための課題を、以下のように分析。多くの参加企業へのアドバイスとなった。

「日本のスタートアップは技術力で世界に劣ることはない。課題となるのは英語力とピッチのレベルだ。ここを磨き続け、世界のコミュニティに入ってさまざまなネットワークを築いてほしい」
審査員を務めたKPMGジャパン・阿部博。

審査員を務めたKPMGジャパン・阿部博。


「KPMG Private Enterprise Global Tech Innovator」とは

KPMG UK単独開催から世界規模へと発展した、グローバルピッチイベント。各国の代表者は、地元メディア報道およびKPMGのコーポレートチャンネルを通して認知度を高めることができ、同時に投資家やパートナーとなりうる企業などのネットワークも構築できる。

受賞企業一覧

最優秀賞
Thermalytica
あずさ監査法人インキュベーション賞
TopoLogic
Private Enterprise賞
AC Biode
審査員特別賞
3DC
プレゼン優秀賞
トレジェムバイオファーマ
KPMG Dream賞
Floatmeal

KPMGジャパン プライベートエンタープライズ
https://kpmg.com/jp/ja/home/industries/private-enterprise.html

Promoted by KPMG | text by Noriko Saionj | photographs by Yoshinobu Bito | edited by Kaori Saeki

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KPMG Global Tech Innovator Competition in Japan

Netflixのドラマ『ドント・ルック・アップ』に著作権訴訟、作家が盗用を主張

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"Don't Look Up"の特別上映会に出席するアダム・マッケイ(Photo by David M. Benett/Dave Benett/Getty Images for Netflix)

Netflixのドラマ『ドント・ルック・アップ』のプロットが、自身が出版した小説からの盗用だと主張する作家が、Netflixとこのドラマの脚本家で監督のアダム・マッケイを著作権侵害で訴えた。Netflixは、これまで数多くの類似した訴訟に直面してきたが、その多くは棄却されたり、法廷外で和解になったりしている。

作家のウィリアム・コリアーは先週、Netflixとマッケイらが彼の著書の『In Extremis, Two Novels』のプロットを盗んだとして、カリフォルニア州の連邦裁判所で訴訟を起こした。コリアーは、自身の娘に同書を送ったが、その当時の娘の勤務先がマッケイがマネージャーを務める制作会社だったという。

コリアーによれば、2007年に彼が娘に送った物語のプロットやテーマは、マッケイが2019年に執筆したとされる『ドント・ルック・アップ』の脚本と類似しているという。

Netflixは、過去にもドキュメンタリーシリーズの『究極のペテン師: 人を操る天才たちの実像』から大ヒットドラマの『ストレンジャー・シングス 未知の世界』まで、さまざまなプロジェクトで著作権侵害で訴えられている。

Netflixのリアリティ番組『サバイバー: 宿命の大統領』の元出演者は今年初め、Netflixと制作会社を著作権侵害で訴えた。ジェルベーゼ・ピーターソンとされるその人物は、Netflixの別のリアリティ番組『お宝キング~ゴールディン流オークション術』のアイデアが、自身がオークションハウスで働いていたときに米国著作権局に登録したものだと主張している。

ジェフリー・ケネディが所有する制作会社アイリッシュ・ローバー・エンターテインメントは、Netflixの『ストレンジャー・シングス』のクリエイターのマット・ダファーとロス・ダファー兄弟が、自身の脚本からキャラクターやプロット、台詞、テーマを盗んだと主張してNetflixを訴えた。

しかし、Netflixはこの作品のプロットがあらゆる面でケネディの作品とは異なると主張し、ケネディは8月にこの訴訟を取り下げることに同意した。

マンハッタンの悪魔崇拝寺院は2018年に、Netflixのドラマ『サブリナ:ダーク・アドベンチャー』で描かれたヤギの頭をしたバフォメット像が、同寺院のものと酷似しているとして5000万ドルを要求したが、この訴訟は法廷外で友好的に決着し、同寺院の名前は番組のクレジットに記載された。

フォーブスは、『ドント・ルック・アップ』の訴訟の件でマッケイとNetflixにコメントを求めたが、即座に回答は得られなかった。

ハリウッドの制作会社が著作権侵害で訴えられることはよくあるが、スタジオに対する訴訟の多くは最終的に失敗に終わっている。作家や脚本家が著作権侵害で訴訟を起こす場合は、原告側に所有権があることや被告が原作にアクセスする手段を持っていたこと、そしてその盗用作が実質的に類似しており、2人の人間が単に同じアイデアを思いついただけでは不可能であることを証明する責任がある。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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