小園には、そうできないなにかしらの事情があるのかもしれない。そうだとしたら、私の指摘は情報不足と認めるしかない。

21年のセンバツ大会で見た小園の真っすぐには、将来性が詰まっていた。今はその将来性を喪失したという意味ではない。ポテンシャルを発揮したフォーム、力感での真っすぐを見たいというのが本音だ。

この試合で立ち上がりに2つの空振り三振を奪っているが、いずれも低めを狙った真っすぐが、高めに抜け、それを空振りしての三振だった。高めに抜けたボールに、たまたま西武の主軸が反応したまでで、これは厳密にはバッテリーが描いた末の三振ではないだろう。恐らく、小園本人は満足していないはずだ。

低めに、しっかり指がかかった真っすぐで勝負して、理想は空振り、悪くてもファウル、もしくは打ち損じが、小園が期待されるピッチングスタイルではないか。少なくとも私はそういう期待を抱いている。

そしてフォークの落ちが甘かった。右投手が左打者を攻略する時、フォークは有効な決め球となるが、この日のフォークでは危ない。これも精度の問題だろうが、まだここぞの場面で信頼してサインが出せるクオリティーではない。

真っすぐの質がいまひとつであるがゆえに、ますますフォークの質が求められる。真っすぐに威力があれば、フォークはワンバウンドになるくらい思い切り落とすなど、割り切って投げることができる。

ここまで真っすぐとフォークへの物足りなさを述べてきたが、カーブは正反対の印象を受けた。縦に割れるカーブはとてもいい。この日のピッチングを見て物足りなさが増したのは、恐らくこのカーブの良さが際立っているからだろう。

このカーブがあるのに、と言いたくなるのだ。今の球界では、広島森下のカーブは素晴らしい。ブレーキが利いた、いったん浮き上がってから縦に曲がる理想的な軌道を描く。小園のカーブはそこまでではないものの、緩急をつけるにはもってこいの質と言える。