科学的根拠に基づく健康に良い/悪い食べ物

主に以下の情報源を元に、健康に良い/悪い食べ物についてまとめました。

WHO(世界保健機関)NIH(アメリカ国立衛生研究所)Mayo ClinicWebMD日本国立がん研究センター日本厚生労働省、リチャード・J・ジョンソン『肥満の科学』、津川友介『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』




「健康に良い/悪い食べ物」の定義

WHOの定義だと、NCDになる確率を下げる/上げるで健康に良い/悪いが判断されます。
NCD(Non-Communicable Diseases:非感染性疾患)には、糖尿病、心臓病、脳卒中、脂肪肝、肝硬変、癌、認知症などが含まれます。



こまけぇこたぁいいんだよ!! 有用情報だけ簡潔に教えろ!

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という方のために、まずは、有用そうな情報をいくつかピックアップして、簡潔に列挙します。

●「野菜ジュースが健康に良い」という強いエビデンスは今のところない。

●「果汁100%であってもジュースは健康に悪い」という強いエビデンスがある(WHOが公式に認めるレベル)。

●「精製穀物(白米、パン、パスタ、うどん)が健康に悪い」という強いエビデンスがある。(ただし、一日一時間以上の激しい肉体労働or運動をする人に対する白米の悪影響は見られない、などの条件がつく)

●「カロリーの過剰摂取は健康に悪い」という強いエビデンスがある。(太らない体質の人でも有害)

●「果物は健康に良い」というそれなりに強いエビデンスがある。

●「ナッツ類(アーモンド、カシューナッツ、ヘーゼルナッツ、くるみ、ピーナッツetc.)が健康に良い」という強いエビデンスがある。(ピーナッツは豆だけど、ナッツと同様の効果がある)

●「乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト、etc.)は前立腺癌のリスクを高める」という強いエビデンスがある。

●オーガニック食品が健康に良いという強いエビデンスはない。ただし、ごく限定された状況で微弱な効果はありうる。

●健康に良いという強いエビデンスのあるサプリメント、ビタミン剤、ミネラル剤は、非常に少ない。

●「豆腐や豆乳が膵臓癌のリスクを高める」というエビデンスを国立がん研究センターが公開している。

●「甘いお菓子とジュースは両方とも健康に悪い」という強いエビデンスがある。

●「甘いお菓子とジュースでは、ジュースの方がより健康に悪い」というエビデンスがある。

●「オリーブオイルが健康に良い」という強いエビデンスがある。

●卵を1日1個以上食べると糖尿病リスクが大きく上がるという強いエビデンスがある。

●WHO(世界保健機関)は、公式に、アルコールは発がん性物質であると認定している。人類が日常的に摂取する飲食物の中では最凶クラスに有害。

●「オメガ3脂肪酸(魚油、エゴマ油、アマニ油)は健康に良い」という強いエビデンスがある。

「『ドライフルーツは健康に悪い』という従来の常識」を覆すエビデンスが出始めている。

●食塩を過剰摂取すると太るというエビデンスがある。

●水を飲むと肥満を抑制できるというエビデンスがある。(ただし、人間の子供と、動物実験で。人間の大人でどうなるかは、今、調べているところ)



エビデンスの強い/弱い


エビデンスには強弱があります。
たとえば、「ランダム化比較試験」による結果は、強いエビデンスです。
「ランダム化比較試験のメタアナリシス」は、さらにもっと強いエビデンスです。
「ランダム化比較試験」に比べると、観察研究は、弱いエビデンスです。
被験者数が少ないより、被験者数が多い方が強いエビデンスです。
弱いエビデンスが少ししかない場合は話半分に聞いておいたほうがいいですが、強いエビデンスがたくさんある場合は信頼に値します。
この他、エビデンスには「効果量」「出版バイアス」などの問題もあります。詳しくはこの記事で解説しました。



情報源の信頼性について


『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』
この手の本は、最初に著者略歴、謝辞、出典を読んだ方がいいです。とくに謝辞が重要です。信頼性の見当がつくからです。
この本の場合、著者はUCLA医学部(内科)・公衆衛生大学院(医療政策学)准教授で医師。執筆段階で、複数の大学の公衆衛生学や栄養疫学の研究者によってレビューされているので、それなりの信頼性が担保されていることがわかります。

『肥満の科学』
謝辞がすごい。この分野の大勢の研究者と連携しながら、長年研究を続けてきたハイレベルの研究者であることがわかります。
タイトルどおりの内容の本じゃないです。むしろ『NCDの科学』の方が内容を適切に表したタイトルです。

WHO(世界保健機関)
新型コロナのパンデミックのときに、中国の圧力で偏った発表をしているのではないか、と批判されていますが、大国の利害のあまり関係ないNCDに関するWHOの見解は、世界中の研究者に信頼されているものです。

NIH(アメリカ国立衛生研究所)
アメリカの保健福祉省(Department of Health and Human Services)に所属する主要な医学・生物医学研究機関です。世界最大規模の公的資金による医療・健康研究を支援しています。

Mayo ClinicWebMD
一般向けに健康・医療情報を提供するサイトとしては、信頼性が高いサイトとして知られています。

日本国立がん研究センター日本厚生労働省
日本語のサイトの中では、この2つは信頼性が高い方です。



果物の摂取量についての矛盾


『肥満の科学』では、「果物の食べ過ぎは健康に悪い」としています。
以下、引用します。

一日一個のリンゴは医者を遠ざけるが、 一日五個のリンゴは医者に払う金が増える。

一方、日本の農林水産省は、毎日200g以上の果物を摂取することが健康増進に必要であるとしています
以下、引用します。

これは摂取量の少ない人を念頭に置いた目標量であって、現在既に1日200g以上食べている人に対して摂取量を制限するものでないことは、言うまでもありません。

https://www.maff.go.jp/j/seisan/ryutu/engei/attach/pdf/iyfv-53.pdf


つまり、果物をたくさん食べても健康に問題ないとしているのです。

言っていることが食い違っています。

どちらが正しいのでしょうか?

実はこれ、根拠データを調べてみると、両方正しいことが分かります。
言っていることが矛盾しているように見えるのは、前提条件が違うからです。

重要なのは、その前提条件です。

まず、視野狭窄に陥らないように、他の情報源がどう言っているのか見てみましょう。

WHOは「健康に良い食べ物(healthy diet)」の一つとして果物をあげています
『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(以下『究極の食事』)の見解も同じです。

多数決だと『肥満の科学』の分が悪そうに見えますが、科学的真実は多数決で決められるようなものではないので、データを吟味しましょう。

日本国立がん研究センターの日本人を対象にした大規模コホート研究から引用します。

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このデータを見る限り、果物を大量に摂取しても死亡リスクは上がっていません。むしろ少し下がっています。
なので、これだけ見ると、「果物をたくさん食べても問題ない」ように見えます。

一方、『肥満の科学』では、実験と調査から、果糖の過剰摂取がNCDを引き起こすことを明らかにしています。

『肥満の科学』のロジックは、「果物には果糖がたくさん含まれているから果物の過剰摂取は健康に悪い」というものです。

これらのデータは矛盾しているように見えます。
しかし、データをよく吟味すれば、両方のデータを矛盾なく説明できる原理が見えてきます。

国立がん研究センターのコホート研究では、普通の生活者の果物摂取量を調べてます。
たとえば、ミカンやリンゴを大量に食べるときって、他の甘いお菓子やソフトドリンクの摂取量が減りませんか?
果物をたくさん食べてる場合、それがおやつ代わりになって、それ以外の甘いおやつを食べる量が減ることが多いわけです。
甘いお菓子には砂糖がたくさん含まれています。砂糖(ショ糖)はグルコース(ブドウ糖)分子とフラクトース(果糖)分子が結合してできていますし、ソフトドリンクを甘くしている異性化糖の半分以上は果糖のことが多いです。
つまり、果物をたくさん食べる人は、その分、お菓子やソフトドリンクからの果糖摂取が減るので、トータルの果糖摂取量は、あまり変わらない、という可能性が高いのです。

そして、WHOによれば、遊離糖(free sugars)は健康に悪いです。
遊離糖とは、食品や飲料に添加された糖類、及びフルーツジュースに含まれる糖類です。ペットボトルとかの成分表示を見ると「果糖ぶどう糖液糖」とか「ショ糖」とか書かれてるやつ、あれです。
つまり、甘いお菓子とジュースは健康に悪いのです。

『肥満の科学』によれば、果物の過剰摂取は健康に悪いですが、遊離糖の過剰摂取はもっと健康に悪いです。
なぜかというと、遊離糖の方が、より速く果糖が吸収されるからです。

なぜ、果糖の吸収速度が問題なのか?
吸収速度が遅い場合、一定時間内に腸から吸収される果糖の量は少ないです。
時間あたりに吸収される果糖が少量の場合、果糖は腸でブドウ糖に変換されます。この場合、何も問題は起きません。
しかし、一度に大量の果糖が腸から吸収されると、腸では処理しきれず、その果糖は肝臓で代謝されることになります。
肝臓で果糖が代謝されると尿酸が産生され、「サバイバル・スイッチ」がオンになります。
この「サバイバル・スイッチ」は、『肥満の科学』の中で使われている用語です。
このスイッチがオンになると、身体は「脂肪蓄積モード」になります。
このモードになると、身体は、カロリー摂取を増やし、カロリー消費を抑える体勢に入ります。
具体的には、食欲が増進し、代謝が落ち、インスリン抵抗性が上がり、細胞が使えるエネルギーが減ります。
野生動物の場合、冬になって、食物が不足してきてからこのスイッチがオンになっても手遅れです。いまさらカロリーを節約し、脂肪を蓄積しようとしても、もう食物が手に入らないのですから、冬を乗り切るだけの脂肪を蓄積することが出来ず、餓死してしまいます。
なので、このスイッチは、果糖の摂取量が十分に多くなるとオンになる仕掛けになっています。つまり、秋になって、入手できる果物の量が十分に増えると、体内に入ってくる果糖の量が増え、このスイッチが入り、脂肪を蓄え始めます。これなら脂肪が十分にたまってから冬を迎えられるので、食べ物が入手できない冬を乗り切れるというわけです。

現代人の問題は、季節に関係なく、一年中、果物・甘いお菓子・ジュースが摂取できるので、ひっきりなしに果糖が体内に入ってきて、このスイッチがオンになりっぱなしで、オフにならなくなってしまうということです。
ずっと脂肪蓄積モードになりっぱなしなので、その副作用でNCDになってしまうというわけです。

WHOは「遊離糖は健康に悪い」としていますが、遊離糖には果糖だけでなくブドウ糖も含まれます。
『肥満の科学』によると、一度に大量のブドウ糖が体内に入ってくると、ポリオール経路が作動します。ポリオール経路はブドウ糖を果糖に変換する経路です。
遊離糖は吸収速度が速いので、一度に大量のブドウ糖が体内に入ってきます。なので、体内で果糖が生成され、サバイバル・スイッチが入ってしまうというわけです。
以下、『肥満の科学』から引用します。

ソフトドリンクは摂取を通して果糖を供給するに留まらず、人体における果糖の産生を三倍にすることがすでに研究で確認されており、人体研究のデータも集まりつつある。

つまり、砂糖(ショ糖)と異性化糖は、その果糖によってサバイバル・スイッチを入れるだけでなく、そのブドウ糖によってもサバイバル・スイッチを入れるので、強烈な悪影響があるのです

この「サバイバル・スイッチ」は、スイッチというより調節ツマミみたいなもので、ゼロイチでスイッチがオンオフされるわけじゃなく、その中間の値がグラデーションになっています
なので、程度問題です。遊離糖はその程度が強烈なので、悪影響が大きいのです。

こういうわけで、甘いお菓子とジュースの摂取量が多いとNCDリスクが上がるのです。
果物の場合、食物繊維と果糖・ブドウ糖・ショ糖が一緒になっていますので、吸収速度が遅く、甘いお菓子やジュースに比べると、サバイバル・スイッチをオンにしにくいのです。

なので、「甘いお菓子とジュース」を「果物」で「置き換える」条件の場合、果物をたくさん食べても、NCDのリスクは上がらず、むしろ下がるというわけです。

これに対し、『肥満の科学』は、「甘いお菓子とジュースは健康に悪いから摂取を控えるのは大前提で、その上で、果物をどれだけ食べていいか?」という議論をしているのです。
なので、「一日一個のリンゴは医者を遠ざけるが、 一日五個のリンゴは医者に払う金が増える」という主張になるわけです。

農林水産省の言う「毎日200g以上の果物を摂取することが健康増進に必要」は、あくまで、「甘いお菓子とジュース」を「果物」で「置き換える」という前提での話だと理解すべきでしょう。

甘いお菓子とジュースをほとんど摂取しない人の場合、果物の摂取は「控えめ」にする方が健康に良いわけです。

ここで重要なのは「控えめ」とは、具体的に何グラムかということです。

以下、『肥満の科学』から引用します。

果糖を食品から摂ると、肝臓に届く前にその少量が腸で代謝される。この量は四グラムから五グラムの範囲で、他のカロリーと同じように代謝され、注目すべきことに、スイッチを活性化させることはない。
(太字引用者)

しかし、果物の場合、食物繊維が吸収速度を遅くしますので、もう少し多くても大丈夫そうです。
『肥満の科学』では以下のように言っています。

特に果糖含有量が八グラムを超える果物の場合には、その一部が肝臓に運ばれる。
(太字引用者)


果物100gあたりの糖組成を見てみましょう。
例えば、つがるりんごの場合、100gあたり、果糖5.19g、ショ糖2.31gです。
ショ糖の半分は果糖分子になるので、概ね5.19+1.16=6.35gが果糖です。
平均的なりんごは300gぐらいで、その可食部は85%なので、255g。
6.35x2.55=16.2g
つまり、計算上は、リンゴは半個くらいが健康に良い範囲内だということになります。

ただし、前述したように、スイッチは調節ツマミですから、「りんご半個ならスイッチがオフだが、りんご1個だとスイッチがオンになってしまう!」というものじゃない点に注意が必要です。
コカ・コーラがぶ飲みを毎日頻繁に続けるのが1だとすると、りんごを1個食べるくらいなら、0.01とか、そんなイメージで捉えたほうがいいです。
つまり、少量の果物摂取(りんご1個とか)は気にするほどのものじゃないってことです。




お菓子v.sジュース、最凶はどっち?


以下、『肥満の科学』より引用します。

肝臓は果糖の量にではなく、濃度に反応するのである。
果糖が少しずつ入ってくれば、肝臓がさらされる果糖の濃度は、果糖が一度に全部押し寄せた場合より低くなる。
(改行太字引用者)

この理屈からすると、ショートケーキよりもジュースの方が健康に悪いということになります。
後者の方が消化吸収速度が速いからです。
以下、『肥満の科学』より引用します。

糖を飲むことは、食べることより悪い場合が多い。 
肝臓は果糖の量にではなく濃度に反応するからだ。
これこそ、ソフトドリンクが固形の糖よりずっと簡単にスイッチを活性化する理由である。
(改行引用者)

ここで言う「固形の糖」は、クッキーとかグミとかケーキとかのことです。
エビデンスはあるのでしょうか?

栄養学者かつ遺伝学者のジョン・スピークマン氏が行った実証研究では、液糖を与えられたマウスは固形糖を与えられた マウスより肥満になることが確認されている。
臨床研究でも、液糖(ソフトドリンクなど)と固形糖(お菓子やデザートなど)の 摂取量をヒトで比較したところ、どのケースでも液糖の方が肥満または前糖尿病あるいはその両方を引き起こしやすいとい う証拠が得られた。

『肥満の科学』

果糖 and/or ショ糖をたっぷり含んだジュースは、それが果汁100%でも30%でも0%でも、最凶レベルに健康に悪いと思ったほうが良さそうです。




飲むスピードによっても違いが出る


肝臓が果糖の量ではなく濃度に反応するのだとすれば、作用機序からして、ジュースを飲むスピードによっても違いが出るはずです。
それを確かめた実験について、『肥満の科学』では、以下のように書いています。

液糖は固形糖よりも肥満をもたらしやすいが、液糖を飲むスピードによっても違いが出る。
このことを実証するために、 私たちの共同研究者であるイスタンブール、コチ大学のメフメット・カンベイ氏は、ソフトドリンクと同等の果糖を含むリンゴジュースをボランティアに飲んでもらうという実験を行なった。
グループの半数は五分間で五〇〇ミリリットルの ジュースを飲み、残りの半数は一五分ごとに一二五ミリリットルのジュースを一時間かけて飲んだ。
一時間経った時点で、どちらのグループも同じ量のリンゴジュースを飲んだことになったが、両者の違いには目を見張るものがあった。
リンゴジュースを迅速に飲んだグループでは、尿酸と、脂肪ホルモンであるバソプレシンが急激に増加していたのだ。それとは対照的に、リンゴジュースを一時間かけて飲んだ被験者では、変化はより穏やかだった。
尿酸とバソプレシンの上昇はサバイバル・スイッチが活性化した証拠であるため、ことソフトドリンクに関しては、どうしても飲みたいのであれば、急いで飲むより、ゆっくり飲んだほうが安全であることを示唆している。
(改行引用者)


健康に悪い食事の最凶王者決定戦をやったとすると、決勝戦は「空腹時の酒の一気飲み」と「空腹時のジュースor栄養ドリンクの一気飲み」の戦いになりそうです。




スポーツドリンクは健康に悪い?


スポーツドリンクの健康への影響は、「果糖・ブドウ糖・ショ糖の濃度」、及び、「一度に摂取する量」に依存します。
具体的にどれくらいの濃度と量にすべきかは、これまでの多くのエビデンスを突き合わせて、『肥満の科学』では、ブドウ糖4%、果糖1~2%が良いとしていますが、異論もあるとしています。
その根拠は、8オンス(237ml)のドリンクに4~5gの果糖が含まれることになるからです。

ポカリスエットのサイトを見ると、原材料に砂糖・果糖ぶどう糖液糖が含まれていて、炭水化物6.2gとなっています。
砂糖は半分が果糖です。
「果糖ぶどう糖液糖」の定義は、「果糖含有率が50%以上90%未満のもの」です。
なので、6.2gのうち半分が果糖だとすると、ざっくり、3.1%果糖、3.1%ブドウ糖、ということになります。
『肥満の科学』の主張からすると、健康に悪いということになります。

アクエリアスのサイトを見ると、原材料に果糖ぶどう糖液糖とあり、炭水化物4.7gです。
半分が果糖だとすると、ざっくり、2.4%果糖、2.4%ブドウ糖ということになります。
これならそんなに健康に害はなさそうですが、果糖ぶどう糖液糖は、実際には、果糖50~90%なので、果糖含有量がもっと高い可能性があります。その場合は、ちょっと健康に悪い可能性があります。

さらなる問題は、スポーツドリンクをペットボトルで買うとき、500mlのものを買うことが多いということです。
500ml(≒500g)の3%は15gぐらいですから、3回に分けて、1回ごとに十分な時間を空けてから摂取しないと健康に悪いということになります。
冷たいまま飲めるのは最初の1/3だけですね。

ちなみに、『肥満の科学』では、スポーツドリンクは、運動または病気の時に飲むものであり、それ以外で飲むのは非推奨としてます。



カロリーゼロジュースは?


Mayo Clinic Healthy Living Program」のリーダーをやってるドナルド・ヘンスラッド博士は、ダイエット炭酸飲料が健康に悪いとは言ってませんが、痩せることが目的なら、あまりいい方法ではないと言っています
ダイエット飲料それ自体はカロリーは含まないのですが、脳が、甘いものをより欲するようになるので、別の機会のカロリー摂取が増えて、少し太ってしまうのだそうです。
甘いものをより欲するようになるのは、ちょっと嫌な感じです。なぜなら、甘いものを我慢する苦痛が増えるので、QOLが低下するからです。

『肥満の科学』では、人工甘味料について、どう言っているでしょうか?
以下に引用します。

一部の人工甘味料は、カロリーがほとんどないにもかかわらずサバイバル・スイッチを活性化させる。
たとえば、無糖シロップとしてよく使われるソルビトールはポリオール経路の一部で、実際には体内で果糖に変換される。
(改行引用者)

『肥満の科学』では、ソルビトール、タガトース、サッカリンにNCDリスクがあるので、避けるように勧めています。

ただ、私としては、これらを避けることに あまり意味を感じません。
なぜなら、多くの日本人が摂取する人工甘味料の分量は、かなり少ないからです。
「少ない分量のものでも大きな影響がある」という強いエビデンスがあれば話が別ですが、そんな強いエビデンスは見当たりません。

また、アスパルテームとアドバンテームは、体内で分解される際に、副産物としてメタノール(有毒)を生成するという理由から、この本の著者は「好きじゃない」と言っていますが、私としては、ちょっと気にしすぎかな、と思います。
健康上問題になるほどの分量のメタノールが生成されるのだとすれば、そもそも、政府が規制するはずだからです。

現時点では、カロリーゼロの飲料が健康に悪いという強いエビデンスは見当たりません。
害があるとしても、普通のソフトドリンクの凶悪さに比べると、雑魚レベルのように見えます。



白米を止めて玄米を食べるべきか?


WHOは未精製穀物(玄米、全粒小麦、十割蕎麦など)を「健康に良い」としています。
『究極の食事』も同じです。

また、『究極の食事』では精製穀物(白米、パン、うどんなど)を「健康に悪い」としています。
しかしながら、「精製穀物は健康に悪い」の根拠とされるデータが示しているのは「精製穀物の摂取量が多い人は、NCDリスクが高い」ということにすぎません。
なぜ精製穀物がNCDリスクを高めるかというと、デンプンが分解されてグルコースになってそれが吸収される速度が速すぎてポリオール経路が活性化して果糖が産生されてしまうからです。
ということは、たとえば、「野菜を食べてから5分後にご飯を食べる」のであれば、白米を食べても、グルコースの吸収速度は遅くなるので、ポリオール経路は作動しにくく、NCDリスクもそこまで高くならない、ということになりはしないでしょうか。

さらに言うと、一度に摂取する絶対量が問題となります。
以下、『肥満の科学』より引用します。

その食品が血糖値を上げるかどうか(GI値が高い食品かどうか)ということに加えて、通常摂取する量にどれほどの炭水化物が含まれているかを考える必要がある。
たとえば、スイカはGI値が高いが、一切れ食べても血糖値はそれほど上がらない。
なぜなら、スイカ一切れにはさほど炭水化物が含まれていないからだ。
他方、スパゲッティはGI値こそ中程度だが、一度にたくさん食べることが多いため、サバイバル・スイッチを活性化させるのに十分なレベルに血糖値を上げやすい。

たとえば、餃子の皮は精製穀物に相当しますが、日本の餃子は皮が薄いので、餃子を食べても、体内に一度に入ってくるグルコースの量は少なく、ポリオール経路も作動しにくいのではないでしょうか。

一方、「十割蕎麦は健康にいい」と『究極の食事』には書いてありますが、これ、ちょっと怪しいと思います。
中華料理屋で餃子を食べる場合、「あらかじめレバニラ炒めを食べてから餃子を食べる」というような工夫ができますが、蕎麦屋で ざる蕎麦を食べる場合、そういう工夫が難しいことが多いです。
だから、いきなり蕎麦から食べ始めることが多いじゃないですか。
しかも、スパゲティみたいに、一度にたくさん食べる。
なので、ポリオール経路は作動しやすく、NCDリスクも高くなる可能性があるのではないでしょうか。

同じような理由で、果物は、野菜を十分に食べたあとに食べたほうが、健康に良いことになります。
ようは、果物は、間食で食べるよりも、食後に食べた方が健康に良い、ということです。

結局、「野菜を食べてから5分後に少量の精製穀物を食べる」というルールを守った場合の精製穀物のNCDリスクを計測した強いエビデンスは今のところ見当たらないので、そういう工夫をした場合の精製穀物の有害性は未知数だということになります。



ジャガイモとサツマイモ


WHOの定義する「健康に良い食べ物」からは、ジャガイモとサツマイモは除外されています。
『究極の食事』でも、ジャガイモは「健康に悪い食べ物」と定義しています。
『肥満の科学』の研究結果と整合させると、これらも、消化吸収速度が速すぎて、一度に体内に入ってくるグルコース量が多すぎて、ポリオール経路が作動してしまうから、という話になります。

ちなみに、カレーにジャガイモを入れたい場合、代わりにひよこ豆とかレンズ豆とかいれると、吸収速度の問題を改善できます。
WHOも豆類を健康に良い食べ物としています




甘くないお菓子


お煎餅やポテトチップスやクラッカーは甘くないですが、健康に悪いです。
これも、デンプン → グルコースの消化吸収速度が速すぎて、ポリオール経路が作動してしまうからです。

どうしてもお煎餅やポテトチップスを食べたい場合、野菜たっぷりの食事をとった直後に食べれば、吸収速度を遅くすることができます。
また、食後にお煎餅やポテトチップスを食べるつもりなら、グルコース過剰にならないように、食事のご飯やパンを抜いた方が、ポリオール経路は作動しにくくなります。



果糖の害にやられやすい人とやられにくい人


『肥満の科学』によれば、果糖は、食べれば食べるほど吸収と代謝の効率が良くなります。
子供が果糖を単独で摂取した場合、その一部は吸収しきれずに排出されてしまいます。
一方、長い年月をかけて果糖の吸収・代謝能力を鍛え続けた中年は、果糖の吸収能力が高いので、より多くの果糖を吸収・代謝します

ようは、子供がアイスクリームやチョコレートを食べるより、中年が同じことをやったときの方が、ダメージがでかいってことです。
大人は子供のマネをしてはいけません。

果糖を産生するポリオール経路も同様です。
長い年月、白米・パン・うどんなどの高GI食品を食べてポリオール経路を鍛え続けた中年は、ブドウ糖から果糖を生成する能力がとても高くなっています

子供がお腹いっぱいご飯を食べるより、中年が同じことをやったときの方が、ダメージが大きいということです。
大人は子供のマネをしてはいけません。

『肥満の科学』では、この問題に対する、興味深い解決法を提示しています。
以下に引用します。

果糖に対する感受性の亢進は、五日から二週間、食事から果糖を除去する ことで元に戻すことができる。
動物実験では、餌から果糖を取り除くと、急速に体内システムがリセットされることが判明し ている。
人間についても、そのことこそ、低炭水化物ダイエットを始める際に通常推奨される二週間の厳しい炭水化物制限が非常に重要である理由だと思われる。
それにより、体が本来の状態に戻るのだ。
私はこれを「システムの再起動」と呼んでい る。
(改行引用者)

中年になったら、ときどきリセットをやった方がいいかもしれません。




誤解を招く「健康に良い食品」という表現


『究極の食事』では「健康に良い食品」として、以下の食べ物を挙げています。

●魚
●果物
●ナッツ
●オリーブオイル
●茶色い炭水化物(玄米とか全粒小麦とか蕎麦とか)
●野菜

これを読んだ人は、以下のように行動する可能性があります。

「じゃあ、サラダを食べるとき、オリーブオイルを追加でかけるようにしよう」
「じゃあ、食後にナッツや果物を追加で食べるようにしよう」
「いつもの食事に、ときどき魚を一品加えるようにしよう」
「いつもの食事に、サラダか野菜炒めを加えるようにしよう」
「玄米は健康にいいからお腹いっぱい食べよう」


しかしながら、現代人の多くは摂取カロリーが過剰であり、かつ、過剰カロリーが健康に悪いという強いエビデンスは、たくさんあります。
つまり、いつもの食事に「健康に良いカロリー源」を追加すると、カロリー過剰が悪化して、健康を害する可能性が高いわけです。

なので、ミスリーディングにならないように表現を修正すると、上記の食べ物は「それらの食べ物で、他のカロリー源を置き換えると健康に良い」となります。

また、野菜は、一見、カロリーがなさそうに見えますが、サラダはたいていドレッシングかマヨネーズをかけますし、野菜炒めは油で炒めるので、結局、追加的なカロリー摂取になります。

じゃあ、この記事に「健康に良い/悪い食べ物」などというタイトルをつけるなよ。
と思われる方もいるでしょうが、タイトルはあまり長くするといろいろ不都合が出ます。
記事本文でちゃんと説明しますので、タイトルは勘弁してください。




豚肉・牛肉・ソーセージ・ハムはどのくらい健康に悪いのか?


『究極の食事』の第三章『身体に悪いという科学的根拠のある食べ物』では、「牛肉、豚肉、ソーセージやハムは健康に悪い」としています。
以下、この本から引用します:

2015年10月、世界保健機関(WHO)の専門組織、国際がん研究機関(IARC)が、「加工肉は発がん性があり、赤い肉はおそらく発がん性がある」と発表した。IARCは、世界中の研究結果を元に、ハム、 ソーセージ、ベーコンなどの加工肉をグループ1(人に対して発がん性がある)、赤い肉をグループ2A(おそらく発がん性がある)に分類した。

しかし、これ、日本人にも当てはまるんでしょうか?
アメリカみたいに毎朝カリカリに焼いたベーコンを食べたり、ドイツみたいに毎日ソーセージ食べたりする人が多い国なら問題でしょうが、日本なんてたまにコンビニのハムサンド食べたり、朝食でときどきハムエッグ食べたりする程度の人が多いじゃないですか。しかも、日本のハムって、めっちゃ薄い。
牛肉だって、アメリカ人と日本人じゃ、食べる頻度も量もかなり違いますよね。

そこで、日本の国立がん研究センターのページのデータを見てみると、このリスクを大きいとみるか、小さいと見るかは、人によって解釈が別れる程度の大きさでしかありません。

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https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/2869.html より引用

WHOは赤い肉の悪影響を「おそらく発がん性がある」程度にしか評価してませんし、日本の国立がん研究センターだと「加工肉(ハム・ソーセージなど)摂取、日本人の一般的なレベルなら大腸がんリスクとならない」と言ってます。

もちろん、アメリカ人やドイツ人並に食べるのは止めた方がいいと思いますが、日本のほとんどのご家庭では、「豚肉・牛肉・加工肉を、QOLを下げない範囲で魚・鳥肉に置き換える」ぐらいで十分だと思われます。




脂質は肥満の犯人か?


『肥満の科学』は「肥満の主犯は果糖、脂質は共犯者」としています。
どういうことでしょうか?
以下、『肥満の科学』より引用します。

私たちの共同研究者である生理学者フィル・スカーペイス氏が、 実験動物に添加糖類を一切加えずにラードを食べさせる実験を行なったところ、レプチン感受性が保たれ、必要に応じてカロリー摂取量がコントロールされたため、太ることはなかった。
ただし、果糖を含む糖や塩辛い食べ物によってすでにスイッチが活性化されている場合には、脂肪分の多い食べ物が加わると、カロリーが高いために体重は急激に増加する。
私たちはフィルと共に、このことを実証した。
まず実験用ラットに果糖を与えてレプチン抵抗性を持たせた後、果糖の投与を中止して、ラード食を与えた。
すると、ラットはレプチン抵抗性に陥っていたため、食欲をコントロー ルすることができず、通常の実験用ラットが食べるよりもはるかに多くのラードを食べ、急激に脂肪を増やしたのだった。

つまり、サバイバル・スイッチがオンの状態だと、脂肪分の多い食べ物をどんどん食べてしまうため、太ってしまう可能性が高いということです。

主犯をなんとかする方が優先順位が高そうです。




オメガ3脂肪酸はどれくらい摂取すればいいか?


『究極の食事』では、オメガ3脂肪酸(魚油)の摂取量と乳がんのリスクの関係がグラフが紹介されています(出典はZheng et al.(2013))。

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『究極の食事』より引用

興味深いのは、「0.1g/日」で効果が飽和してるというということです。
ネイチャーメイドのフィッシュオイルのサプリメント1粒に含まれるEPAは162mg、DHAは108mgなので、オメガ3脂肪酸の量だけで言うなら、このサプリを一日1粒飲めば、(少なくとも乳がんに関しては)それだけで十分ということになります。

一方、『肥満の科学』の見解は以下のとおりです。

オメガ3脂肪酸は、果糖の作用の多くをブロックすることができる非常に健康的な脂質として際 立っており、健康増進に役立ち、血中中性脂肪、血圧、心臓病、腎臓病などに良い影響を与えることが多くの研究で示唆されている。
オメガ3脂肪酸はまた、少なくとも動物実験では、果糖が認知機能に及ぼす悪影響の一部をブロックするように見受けられる。
ハチドリの筋肉にはオメガ3脂肪酸が多く含まれており、ショ糖に満ちた花蜜を毎日大量に飲むことで生じるはずの酸化ストレスからミトコンドリアを守っている可能性がある。
脳やエネルギー工場に良いことに加えて、オメガ3 脂肪酸は、重要な抗炎症特性も備えている。

乳がんに関しては、オメガ3脂肪酸はごく少量でいいとしても、それ以外のNCDリスクに対しては、それよりも多めに摂取した方がよさそうに見えます。

これについて、日本政府はなんと言っているでしょうか?
厚生労働省によるオメガ3脂肪酸の目安量は以下のとおりです。

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https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586558.pdf より引用

大人の場合、魚の缶詰なら1日1個、焼き魚なら1日1匹食べれば、これを少し上回る、そういう量です。



たんぱく質は何から摂取すればいいか?


世間一般での卵の評価は、
「栄養があるから良い → コレステロールを含むから悪い → 血中のコレステロール値が上がらないから問題ない」
と変遷してきました。
ところが、『究極の食事』には以下のように書かれています。

2013年に発表された16個の研究をまとめたメタアナリシスによると、卵と健康の関係に関しては以下のようなことがわかっている。
・卵を1日1個以上食べるグループは、ほとんど卵を食べない(1週間に1個未満)グループと比べると、2型 糖尿病を発症するリスクが42%高い
・卵の摂取量と、心筋梗塞、脳卒中、 およびこれらによる死亡との間には有意な関係はない。
・しかし、糖尿病患者に限って解析を行うと、卵を1日1個以上食べるグル—プは、ほとんど卵を食べないグル—プと比べると、心筋梗塞や脳卒中によって死亡するリスクが69%高い
(太字引用者)


では、タンパク質は、何から摂取するのがいいのでしょうか?

レッドミート(牛肉、豚肉、羊肉)と加工肉(スモークチキン、ベーコン、ハム、ソーセージとか)は、前述した理由でなるべく避けた方が良いです。

乳製品(チーズ、牛乳、ヨーグルト、ホエイプロテイン)は前立腺癌のリスクを上げます。 
以下、『究極の食事』より引用します。

乳製品と前立腺がんの関係についてはよく知られている。
2015年に複数の研究結果を統合したメタアナリシスが発表された。
その結果、乳製品の摂取量が1日あたり400g増えるごとに、前立腺がんのリスクが7%上昇することが明らかになっている。
(太字改行引用者)


非発酵の大豆食品(豆腐、豆乳、油揚げ、厚揚げなど)も、膵臓癌のリスクを上げるというエビデンスがあります。 
ソースは日本の国立がん研究センターです。

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膵臓がんは初期症状がほとんどないため、進行してから発見されることが多いです。その上、治療が困難という、かなり凶悪な癌です。スティーブ・ジョブズもこれで死にました。

納豆は発酵大豆食品だから膵臓癌のリスクはありませんし、たんぱく質含有率も高いですが、1パックあたりの絶対量が少ないので、摂取できるたんぱく質量も少ないです。
納豆から十分なタンパク質を取ろうとすると、納豆を何パックも食べることになり、食べるのが手間ですし、イソフラボンの過剰摂取も気になります。

魚は健康にいいですが、料理が面倒くさいです。
魚の缶詰は簡単ですが、安いのは不味いし、美味しいのは高いです。
シーチキンは簡単で、それなりに美味しく、安いのですが、そればかりだと飽きます。

チキンは焼くのに時間がかかります。分厚いからです。
チキンを薄くスライスすれば短時間で焼けますが、スライスするのが面倒です。
短時間で焼くには、チキンの挽肉もしくは細切れが良いですね。冷凍パラパラミンチは素晴らしいです。

個人的には、鶏もも肉をミートプレスを使って焼くと、比較的短時間に、僅かの手間で、すごく美味しく焼けるので、それを頻繁に食べています。

でも、毎食料理するのは面倒くさいです。
プロテインパウダーなら簡単に摂取できますが、
上述した理由で、ホエイプロテイン、大豆プロテイン、エッグプロテインは健康に有害である可能性がある。

ヘンププロテインや玄米プロテインは値段が高い。

となると、消去法で、「エンドウ豆プロテイン」が残ります。
えんどう豆プロテインは、比較的バランスの取れたアミノ酸プロファイルを持っています(メチオニンの含有量がやや少なめですが)。
Amazonで1kg二千円くらいで売ってたりするのでお財布にも優しいです。




塩分の過剰摂取で肥満する理由


以下、『肥満の科学』より引用します。

高塩分食は、体内での果糖産生を刺激することにより、肥満やメタボリック症候群を引き起こす。

どういうことでしょうか?
以下、『肥満の科学』より、マウスでの実験結果を引用します。

五〜六力月経つと、高塩分食を与えたマウスは、通常の量の塩分を与えたマウスに比べて驚くほど太ってしまった。
また、脂肪肝や前糖尿病を含め、メタボリック症候群の症状のほとんども発症させていた。
さらには、高塩分食を数力月間続けたことから予想されるように、これらのマウスでは血圧が上昇し、心臓の肥大もいくらか見られた。
だが、最もワクワクさせられたのは、餌に果糖がほとんど含まれていなかったにもかかわらず、肝臓と脳で高レベルの果糖が検出されたことだ。

要するに、塩分の摂取が多いと、ポリオール経路が活性化されて、体内で果糖が産生されて、サバイバル・スイッチがオンになって、肥満とNCDを発症してしまうわけです。

これ、人間にも当てはまるのでしょうか?
以下、『肥満の科学』より引用します。

塩辛い食べ物が実験動物の肥満を引き起こすという所見は、私たち人間にも当てはまるのだろうか? 
塩分が人間に与える影響を調べた研究のほとんどは、血圧や心臓病との関わりに焦点が当てられているが、高塩分食は肥満や糖尿病とも関連がある。
一九九〇年代初頭、健康な人を対象に、五日間に限って、減塩食(一日あたり塩分〇・五グラム)または高塩分食(一 日あたり塩分ーニグラム)を摂取してもらう研究が行なわれた。
五日後の研究終了時には、高塩分食を食べていた被験者にす でにインスリン抵抗性の初期症状が見られた。
小規模の疫学調査でも、肥満やメタボリック症候群の被験者は高塩分食を摂る傾向があることが報告されている。
さらに、ドイツ、フィンランド、デンマークで行なわれた研究では、子供も大人も、 高塩分食を摂っていると、後に肥満やメタボリック症候群になるリスクが高くなることが報告されている。

やはり、塩分は控えめにした方が良さそうです。




なぜ水を飲むと肥満抑止になるのか?


まず、マウスを用いた実験で、水分摂取量を増やすことで肥満を防ぐことができた、という研究があります。
以下、『肥満の科学』より引用します。

動物の 水分摂取量を二倍にすることで、肥満とインスリン抵抗性の発症を阻止することができたのである。
さらには、動物がすでに太ってから水分摂取量を増やした場合でも、高糖質・高脂肪食を続けたにもかかわらず、さらなる体重増加を防ぐことができたのだった。


ヒトについてはどうでしょうか?
以下、『肥満の科学』より引用します。

水分摂取量を増やすことが肥満防止に役立つかどうかについては、ヒトを対象とした研究がいくつかある。
なかでも最も優れているのは、小学校や中学校で行なわれたもので、校内に給水機を設置し、水分を十分に補給することの重要性について頻繁に教育学的指導を行なうことにより、子供たちにより多くの水を飲むように促したものだ。
三つの異なる研究(アメリカ、ドイツ、イギリスでそれぞれ行なわれた)では、子供たちにもっと水を飲むように促した結果、肥満頻度の低下につながったことが示された。
ドイツの研究では、学校に給水機を設置したところ、一日に飲む水の増加量はほんのコップ一杯分だけだったものの、給水機が設置されていない学校の子供に比べて、過体重になるリスクが三〇パーセントも減少した。
本書執筆中の現在、スウェーデンで継続されている大規模研究では、水分摂取量の増加が大人の肥満も減らせるかどうかについて調べている。


どうしてこうなるのでしょうか?
脱水状態になると、脳内のポリオール経路が活性化され、果糖が産生され、脂肪の産生を促すのですが、水を飲むと、脱水状態が緩和されるので、これが起きにくくなるわけです。

なので、こまめな水分補給は健康にいいし、ダイエットにも効きそうです。




サバイバル・スイッチまとめ


『肥満の科学』では、サバイバル・スイッチが入る経路を一つの図にまとめています。
それを以下に引用します。

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この図にあるとおり、グルタミン酸、イノシン酸、アデニル酸などの旨味成分もサバイバル・スイッチをオンにすることが実験で確かめられていますが、これらを問題になるほどの量、摂取している人って、日本では、そんなに多くなさそうに思いますので、この記事では取り上げませんでした。




信頼できる健康情報を得る方法


基本的に、日本語でググると、インチキ情報だらけで話になりません。
日本語の情報源で比較的マシなのは政府機関のWebサイトですが、農林水産省のサイトを読むときは、少し懐疑的に読んだ方がいいと思います。
たとえば、「白米は健康に悪い」「牛肉・豚肉は健康に悪い」「卵は健康に悪い」「豆腐は健康に悪い」「果物ジュースは健康に悪い」「乳製品は健康に悪い」と書くことは、政治的な理由から、難しいでしょうから。
国立がん研究センターと厚生労働省のサイトは、そういう政治的圧力が、農林水産省ほどはかからないので、比較的信用できます。

調べ方としては、あらかじめ信頼できるサイトのリストを作っておいて、それをChatGPTに渡して、「これらのサイトの中から、○○について解説しているWebページを教えて下さい」などと言って、出てきたページをチェックするのが手っ取り早いです。

たとえば、遊離糖の害について知りたければ、ChatGPTに以下のように言います。

「遊離糖の摂取の健康への影響」について書いてある記事を、「WHO、NIH、Mayo Clinic、WebMD」のいずれかのサイトから、見つけてもらえますか?

信頼できるサイトというのは、だいたい定番のサイトです。
たとえば、WHO(世界保健機関)、NIH(アメリカ国立衛生研究所)、Mayo Clinic(メイヨークリニック)、ハーバード公衆衛生大学院、WebMDは、概ね信頼できると見て良さそうです。

それで見つからなければ、リストを増やしていきます。
どのサイトがどれくらい信用できるのか、なぜ信用できるのかを、ChatGPTに根掘り葉掘り聞きながら、自分が許容できる信頼度の範囲でカバー範囲を広げていきます。

それで、良さげなページが見つかったら、そのページをGoogle翻訳で日本語にして読んでみます。
また、別ウィンドウを隣に並べて、そちらでは英語の原文を表示しておきます。日本語訳を読んでいて、よく分からないところは、原文をオンライン辞書を使って読みます。文法構造・ニュアンス・背景のわからない文は、ChatGPTにそれらを解説をしてもらいます。



健康寿命を支払って、美味しさを買う


健康に悪いものを食べるというのは、
「健康寿命を支払って、美味しさを買う」
という行為です。

豚肉の生姜焼きを食べると、その分健康寿命が減りますが、それで減った健康寿命に見合うだけの美味しさがあれば、それは、割に合うディールですよね。
一方で、あまり美味しくない酒をのんで健康寿命を減らしたら、割に合いませんよね。

ようは、支払った健康寿命に見合うだけの美味しさであれば、健康に悪いものでもどんどん食べていいんです。
止めるべきは、支払った健康寿命と釣り合わない美味しさの食事をすることだけなのです。

しかしながら、「将来の健康寿命」のために「目の前のショートケーキ」を我慢する方が得でも、サバイバル・スイッチがオンになっていると、得な方を選びにくくなるという問題があるようです。
以下、『肥満の科学』から引用します。

健康なボランティアに果糖を摂取してもらった場合とブドウ糖を摂取してもらった場合の影響を比較し た臨床研究では、ブドウ糖を摂取した場合に比較して、果糖を摂取した場合の方が、より即時的な 空腹感と、高カロリー食品に対するより大きな欲求に関連づけられることがMRIによって示されている。
さらに果糖を摂取した場合には、意志を司る脳の領域(つまり前頭前皮質)の電気的活性が低下し、誘惑に負けるリスクの増加、ノーと言う能力の低下、意志力の全般的な低下と一致していた。
これらの変化は、果糖が衝動性、新奇探索行動、リスクテイク行動を増加させることを示唆している。

なので、健康寿命を支払って美味しさを買う場合は、サバイバル・スイッチに脳を支配されて割の合わない買い物をしてしまわないように、最優先でサバイバル・スイッチをオフにする必要があるのです。

また、美味しい食べ物は、食べれば食べるほど、美味しさが低減していくということに注意しないといけません。
極上のチョコケーキでも、あまりにも頻繁に食べていると、それに慣れてしまい、そこまで美味しいとは感じなくなることが多いのです。
つまり、最初のうちは支払った健康寿命に見合うだけの美味しさなのですが、惰性で食べ続けていると、支払いに見合わない美味しさにまで低減してしまうのです。
損益分岐点を超えて、赤字になってしまうのです。
人間には現状維持バイアスという認知バイアスがありますので、ついつい、同じ行動を惰性でし続けて赤字を垂れ流してしまうのですが、この罠にやられないように、注意しないといけません。

また、あまり美味しくない食べ物も、食べ続けていると、それに慣れてしまい、とくに苦痛ではなくなります。
なので「健康的であまり美味しくないもの」を食べるのは、最初は割に合わなくても、慣れると割に合うようになります。
損益分岐点を超えて、黒字になるのです。
この場合、現状維持バイアスがプラスに働きます。現状維持バイアスに身を任せて、黒字を積み上げていくという戦略はありだと思います。

さらに、スマホやテレビを見ながら、あるいは、自分が書いている小説のシーンを頭の中で練りながら食事する場合、食べ物の味って、あんまりよく分からないんです。
美味しいものを食べても、その美味しさをあまり味わえないんです。
なので、「不健康で美味しいもの」を「ながら食べ」すると、支払った健康寿命に見合うだけの美味しさが得られなくなりがちなのです。

そういうわけで、食事は、「不健康で美味しい食事に集中」と「ながら食べ」を分けるのがいいと思います。
「不健康で美味しい食事に集中」をするときは、細心の注意を払って調理し、スマホもテレビも見ず、趣味や仕事や家事のことも忘れて、食事を味わうことだけに集中することで、支払った高い健康寿命に見合う美味しさを味わうようにします。
「ながら食べ」をするときは、どうせ味なんて大してわからないんだから、支払う健康寿命を最小に出来る範囲で、美味しく、安く、手間も時間もかからない食事にするのです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

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※この記事は、文章力クラブのみなさんにレビューしていただき、ご指摘・改良案・アイデア等を取り込んで書かれたものです。















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複数の企業を創業。そのうち一社は上場。作家。 分裂勘違い君劇場の中の人。 https://www.furomuda.com/
科学的根拠に基づく健康に良い/悪い食べ物|ふろむだ@分裂勘違い君劇場
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