ちょうど9月11日、マヤ暦で白い世界の橋渡しの13日に入った日に、アメリカでトランプとハリス、2人の大統領候補がTVでライブ討論をするのを世界中が見ていたのは、何かしら時代の切り換わりを示しているように思えた。アメリカでは10日の夜だったけれど、世界のほとんどの地域では、すでに日が変わって11日になっていた。
6月末に当時大統領候補だったバイデンと討論したときは、原稿の持ち込みなしでという条件で、どちらも質問を知らされていない状態での討論だった。そこでバイデンは、大統領を勤めるのには認知症があまりにもひどい状態だということを暴露することになった。それで、バイデンが候補を降りて、ハリスが立つことになったのだけれど、このときは民主党内部でバイデンを降ろして入れ換えるために、敢えてバイデンが無能力をさらすようにし向けたのだろうと言われていた。実際、民主党サイドのテレビ局だったのにもかかわらず、バイデンをかばおうとしていなかった。
ところで今回、ハリスとの討論は、「これは3:1の戦いだ」と多くの人が言っていたけれど、2人のモデレーターは明らかにハリスをかばって、トランプを悪く見せようとしていた。その3人に対して、トランプはたった一人で戦っていたのだ。
ハリスの答え方や表情の作り方を見ていると、事前に質問をもらっていて、入念に準備していたことが見て取れる。その場で応じているのではなくて、演技している感じなのだ。セリフを言っている。ハリスは数日前からホテルに缶詰になって、特訓を受けていたというような情報もあった。それが事実なのかどうかはわからないけれど、しかし事前に準備して練習していた演技だというのは、かなりはっきり見て取れる。同じように感じた人も多かったらしく、YouTubeのライフ配信には、「リハーサルしてるみたいね」といったコメントがいくつも入っていた。
その日ハリスがしていたパールのイヤリングに、イヤフォンが仕込まれていたということを言っていた人もいた。実際にそういう製品があって、ハリスがしていたイヤリングは、それにそっくりだった。
ハリスは、アメリカの中間層のアメリカン・ドリームを助けるために、家を建てる人たちに援助をするというようなことを言っていた。この人は、これまでの4年間でアメリカがどういうことになっているのかをすべて棚に上げて、中間層のアメリカン・ドリームの話なんかをしているのだ。こんな話をまだ信じている人がいたら、よほどメディアに深く洗脳されている人たちなのだろうと思わないではいられない。
バイデン政権が移民を無差別に入れたために、犯罪と貧困が増し、ウクライナでもイスラエルでも戦争が始まって、バイデン政権は一貫して軍事援助をし続け、停戦交渉をさせないようにしている。米ドル離れが進み、アラブやアジア諸国に対する影響力も失っているのに、この人は中間層のアメリカン・ドリームを叶える話なんかをしている。単純な人たちが気に入りそうな話をしているだけだ。軍事費に使われるお金の何百分の一でしかないようなプロジェクトを、大きく言っているだけのようだ。
彼女は、トランプを悪く見せるために、嘘を語りまくってもいた。トランプは妊娠中絶を禁止するつもりだと非難していたけれど、事実は、トランプは妊娠8ヶ月とか9ヶ月での中絶を許可することに反対しているということにすぎなかったようだ。副大統領候補のヴァルツが知事をしているミネソタ州では、出産後の中絶さえ現実に行われているというのだ。出産後ならば殺人になると思うけれど、妊娠中絶が失敗して生まれてしまった場合、これも妊娠中絶になるというメチャクチャな理屈らしい。
ハリスは、働く女性たちの自由を守るために、中絶の権利を守るべきだと言っていたけれど、こんな後期の中絶の話ならば、むしろ母親を保護することを考えるべきところだ。女性の権利などというのはきれいごとにすぎなくて、臓器売買とかの闇のビジネスに関わっているにおいが濃厚にする。
そういう非難を浴びせられるたびに、トランプは毅然として、それは違うと説明していた。それでハリスに向かって、「8ヶ月、9ヶ月、出産後の中絶はOKなんですか?」と聞いていた。するとモデレーターが別の話にそらし、ハリスはその質問には答えなかった。
パレスチナの紛争については、即時停戦するべきだとハリスは言っていたけれど、これまで何度も国連で停戦決議が行われるたびに、否決権まで使って停戦交渉を阻止していたのは、バイデン政権なのだ。それをすべて棚に上げて、こんなきれいごとを言っている。トランプはそれに対して、彼はネタニヤフ首相ともいい関係を持っているのだから、ネタニヤフと取引して、こんなことは起こさせないと言っていた。彼が大統領だったら、そもそも起こっていないことだったと。
ウクライナの戦争については、トランプはプーチンとゼレンスキーの両方と話していれば、そもそも戦争にならなかったのだと言っていて、バイデンは一回もプーチンと話していないと批判していた。事実、バイデンは就任当初、プーチンから会談の要請を奇妙にも断り続けていたし、ロシアが軍事作戦を始めてからは、一度も話していない。ハリスは、トランプはすべてロシアに譲って戦争を終わらせるつもりなのだろうと笑っていた。ウクライナの独立をロシアの利益のために犠牲にするつもりなのだと。
ウクライナの戦争は、明らかにバイデン政権がウクライナに挑発させてしかけていたのだけれど、トランプはそれについては言わず、バイデン政権がアフガンから米軍を撤退させたから、ロシアをつけ上がらせたのだと言っていた。アフガンから軍隊をとうとつに撤退させたので、紛争状態になって、犠牲者も出た。結局それで、911のあとから延々と続いていたアフガン紛争が、アメリカの敗退に終わることになったのだ。
ところで事実は、バイデン政権は米軍をウクライナに差し向けるために、アフガンから米軍を撤退させたのだ。それでロシアを挑発して、侵攻に踏み切らせた。だから、バイデン政権がアフガンから米軍を撤退させたりしなければ、ロシアがウクライナに侵攻することはなかったというのは、確かにそうだ。
トランプは、どちらが勝つかではなくて、とにかく戦争を終わらせて、犠牲者をなくしたいのだと言っていた。ロシアは核兵器を持っているのだから、私たちは核戦争へと向かっているということを考えるべきなのだと。そこでモデレーターは、アフガンのことに話を変えて、ハリスはトランプがテロリスト組織のタリバンと取引したと言って非難し始めた。それで、核戦争の危険については、ハリスは答えることがなかった。
嘲笑するような態度や表情で相手を牽制して、相手が言っていることが正しくないかのように思わせ、現実的でないきれいごとを信じさせるやり方は、この数年でさんざん見てきた。その意味では、この討論でハリスがやっていたのは、まさにその見本のようなものだったと言える。表情の作り方やタイミング、ものの言い方など、すべて完璧だった。
その辺がまさに、ずいぶん時間をかけてリハーサルしたのだろうと思わせるところだった。その完璧さこそが、すべてが演技だったことを暴露してしまっているようだ。即時的に反応しているときの感情の揺れのようなものがないのだ。それに、これまでのハリスの発言の稚拙さから考えて、内容があまりにもできすぎていた。
前回のバイデンとの討論が、バイデンの認知症を暴露してしまったのに対して、今回のハリスとの討論は、ハリスが言われたままに嘘を騙る女優でありマリオネットにすぎないことを世界中に暴露してしまったようなものだったかもしれない。民主党サイドの主流メディアで、ハリスの支持率が60%以上と出していて、それを日本のメディアでは報道していたようだけれど、アメリカのいろいろな世論調査では、多くはトランプが上位だったようだ。共和党サイドのメディアなどでは、トランプの支持率90%以上というのもあった。元民主党のロバート・ケネディ・ジュニアやトゥルシー・ギャバードがトランプ支持を表明したあとで、民主党側のメディアの視聴者も、もはやハリス支持とはかぎらない。
そうした中で行われたこのTV討論は、もはや多くの人々がメディアの心理トリックにもうかからなくなっていることを、示しているような気が私にはした。この数年間、あの手この手で心理的に揺さぶりをかけてくるモデレーターに対して、じっと肚を据えて事実を語ろうとする人たちの姿を、私たちはどれほど見てきたことだろう。あとで発言を切り取られたり、画像を変に変えられたりして、いかにも信憑性がないように細工されてきたのだけれど、彼らの忍耐と真実に留まろうとする精神力には、毎回多くの人がただ頭が下がる思いを感じていた。
今回の討論でのトランプは、モデレーター2人とハリスの3人を敵に回して、たった一人で見事な論議を繰り広げていた。いかに叩かれようと、トランプはじっと肚を据えて、枝葉ではなく核心のところで議論し続けていた。その姿を見ていて、ロバート・ケネディ・ジュニアが、暗殺未遂事件のあとで、トランプは変わった、と言っていたのはこういうことだったのだなと納得した。見かけを気にしてパフォーマンスしているようなところがなくなって、終始ぎりぎりのところで勝負しているような気迫を感じた。その姿が、かつてのジョン・F・ケネディの姿に重なった。
この数年の激しいプロセスを通り抜けて、世界はついに嘘を見破って、真実を見抜く力を手に入れたのだろうか? 私には、このTV討論はそのことを示しているように思えた。いかに巧妙に演じられた嘘でも、もはや多くの人々は見抜く目を持っているのだと。たとえすべてではないにしても、もはや世界中が騙されてしまうほど、抵抗力がないわけではないのだ。ついに真実が嘘に勝ち、嘘が支配する時代が終わったことを、この討論は示しているように思えた。
ちょうど9月11日、アフガン戦争の口実になった自作自演の嘘が演じられた23年後のことだ。あの大がかりな残虐な嘘が、その後の世界を戦争から戦争への時代に変えてしまった。この激しいプロセスが、ついに終わりになるときが来たのかという気が、私にはするのだ。