あれから公園の女とは出会うことはなかった。
当然といえば当然なのだが、公園の前を通る度に視線を彷徨わせてしまうのは矢張り少し気になっているからか。
だが日が経てば経つほどにそんな想いも薄れ、部活に勉強と俺は毎日を過ごしていた。
「や、柳君っ」
蓮二、幸村と昼飯を食べていると女子が声をかけてきた。
急いで走ってきたのだろうか。
頬を赤く染めているのを一瞥してからまた弁当に向き直り咀嚼を繰り返す。
「どうした」
「あの、先生が柳君を呼んできてくれって…」
「…すまないが、少し出てくる」
弁当をしまい席を立つ蓮二に幸村と頷き見送った。
蓮二が居なくなった後の会話は専ら本日の練習メニューについてだ。
先輩方が作ってくださる練習メニューは些か温い。
常勝していくには俺たちはまだまだ練習を熟さなければならないのだ。
蓮二が戻ってきたのは昼休憩終了10分前だった。
「おかえり。先生の用事なんだったの?」
「あぁ、俺のクラスメイトのことなんだが」
「蓮二は委員長だったか」
「ああ。転校生が学校に来なくてな。それで帰りにプリント等を届けて欲しいと言われたんだが、副委員長が変わりに行ってくれるそうだ」
「へー。良かったじゃん。さ、俺らはもう教室に戻るよ」
幸村が席を立ったので教室の時計を確認すると終了5分前だった。
俺も鞄を持ち立ち上がり蓮二に別れを告げ、幸村と共に教室へと帰る。
次の授業の準備をしなければ。
(こうしていつもの日常を過ごしていく。)
(公園を通っても視線を遣ることはなくなった。)