創業半年の投資会社に売却?
コーナーに追い詰められたように見える共生バンクは、事業の継続に向けてどんな奥の手を使うのか。前号 2024年9月号 で報じた、ロンドン証券取引所へのSPAC(スパック=特別買収目的会社)上場に続いて、世間の耳目を集める発表があったのは9月3日だ。
同社は米国の投資会社、Lloyds Capital(ロイズ・キャピタル) LLCによる発表資料の“日本語訳” とする文書を公開した。この中でロイズは「共生バンクグループからゲートウェイ成田開発プロジェクトのSPV(注)の100%株式を取得するための、拘束力のある契約を締結した」としている。取引完了は今年11月30日までを予定。共生バンクの窓口担当者は本誌の問い合わせに対し「交渉がまとまれば、成田開発は上物も含めてロイズが引き継ぐことになる。細かいことは言えないが、ファンドに対しては同社が賃料を払っていくことになると思う。投資家への配当も継続していく」と説明する。
【注】SPV=special purpose vehicle(特別目的事業体)。SPC(特別目的会社)と同じ意
ロイズは租税回避地として知られるデラウェア州に本籍を置き、ワシントンDC、ドバイ、東京に展開。日本時間9月11日時点の同社ウェブサイトには、アドバイザーとしてトランプ政権で国務長官を務めたMike Pompeo(マイク・ポンペオ)氏や、国際協力銀行(JBIC)会長で、岸田文雄政権の内閣官房参与も務める前田匡史(ただし)氏などが名を連ねていた。ただし、同州の法人登記によると、ロイズは今年2月に設立されたばかりで、その活動実態は不明。存在するとされる英文発表資料の所在についても、本稿執筆時点で共生バンクからの情報提供はない。JBICの前田氏は広報を通じて、「アドバイザーを務めている事実はない」と本誌に回答を寄せた。この問い合わせの後、同氏の写真はロイズのサイトから削除されている。
実は、共生バンクグループが成田プロジェクトに関して、海外からの巨額投資の存在を主張するのはこれが初めてではない。裁判記録によると、同社は今年5月2日に大阪府に提出した文書において、香港籍の中国系建設会社による5000億円規模の投資や、上海の投資会社による2000億円規模の投資が契約済みと主張。さらに、タイ企業による生成AI計算センターやR&D施設の誘致契約締結も近いなどと述べ、「不利益処分を下すと、償還に重大な悪影響をおよぼす可能性がある」と強調している。
投資家のAさんは、「メールが届くたび、『大家さん』からの悪い知らせかと思いドキリとする。毎晩のように悪夢を見てよく眠れない」と話す。一刻も早い正確な情報提供が待たれる。
「テレビCM」と「元本割れなし」で投資を決意
「みんなで大家さん」の顧客の中には、不動産投資の経験を持つ人も少なくない。2021年以来、毎号のように「シリーズ成田」に投資してきたBさん(60代・女性)に話を聞いた。
東京郊外に住む彼女が、初めて1口(100万円)を購入したのは、同年8月発売のシリーズ成田8号だ。「それまでは九州のバナナ加工施設や伊勢のテーマパークなど土地勘のないエリアの物件でしたが、成田なら比較的容易に現地も見られます。実家から引き継いだ賃貸マンションを運用している経験から、納得できる配当水準だとも思いました」(Bさん、以下同)。7%の利回りがあれば、5年間の間に合計35%の分配金が入る。「これだけの配当があれば、評価額が多少落ちても大損はしない。普通に考えて、不動産の価値が5年で半額に下がることはまずないだろうと判断しました」。
彼女が「大家さん」を知ったのは約10年前のこと。最初は家族の反対で投資を見送るが、同商品はその後、“元本割れなし”で運用を続け、2021年頃にはテレビコマーシャルも頻繁に目にするようになって、信用できると判断した。「優先劣後システムで、値下がりしても20%までは会社側が損失を負担する点も評価できました」。本当は成田7号に申し込むつもりだったが、当時は販売が大盛況で、申込書類が会社に着くまでに完売になったため、8号から開始したのだという。それからは、新たなファンドが組成されるたび1口ずつ投資していった。1口につき1万3000円〜1万8000円のギフトカードが提供され、投資残高に応じて1口あたり2000円〜6000円の追加還元もあった。一連のやりとりは郵送とメールで行われ、しつこい勧誘などは記憶にない。
解約殺到で回線がパンク
一抹の不安が芽生えたのは、昨年5月のこと。成田プロジェクトの進捗について、共生バンクのウェブサイトで告知を確認するようメールが届き、計画変更や工事の一時中断を知ることになる。いずれは解約を、と考えた。ただし「日割り計算で分配金を受け取る仕組みのため、あまり早々に手続きする気になれず、アンテナだけは張っていました」。
決断を後押ししたのは今年5月上旬、土木技術者の解説で成田開発の進捗を取り上げたYouTube動画(資産形成チャンネル)だ。「動画を見た人が一斉に解約する事態を恐れ、乗り遅れまいと申請しました」。6月17日の行政処分を聞いて再び不安になり、先方に電話で確認を試みたものの、回線がパンク状態で繋がらなかった。結局、数日経ってから返金の連絡をもらったという。引き留めはなく、60営業日後の8月初め、解約手数料3.3%を除いた元本の入金が確認できた。
株や投資信託のように日々の値動きがなく、安定しているところに不動産投資の魅力を感じると話すBさん。上場他社が手がける不動産クラウドファンディング商品について 「10万円くらいなら投資してもいいか」とも考えるという。
(「日経不動産マーケット情報」2024年10月号より。購読者限定のPDF版はこちら→)

















