「飛行機の壁の“▲印”の意味はね…」現役CAが明かす小ネタ、覚えておくといいことあるかも?

  • 文:青葉やまと
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Thanakorn.P-Shutterstock ※画像はイメージです

飛行機の機内の壁に、知られざる「▲」印が刻まれている。気にしなければ見逃してしまいそうな小さなマークの秘密を、現役の客室乗務員(CA)が明かした。

動画を公開したのは、ヘニー・ジョイス・リムさん。フィリピンのセブ・パシフィック航空で、客室乗務員として勤務している。彼女は勤務の合間に仲間のクルーたちと機内で短い動画を撮影し、視聴者たちの好奇心に応えている。過去にも「客室乗務員はなぜ離陸時に手をお尻の下に敷くのか」など、興味深いテーマを紹介してきた。

今回の動画のテーマは、小さな三角形について。飛行機の内壁をよく観察すると、機内の通路を進んだ中程付近、両側の壁にそれぞれ1カ所だけ、数センチ大の黒い「▲」が印字されている。高さは機窓よりも上、天井との間あたりだ。これは特別な役割を持った窓を指し示す意味があるのだという。

「特定の窓を示しています」

動画でリムさんは、「機内で黒の三角形を見つけたことはありますか? 秘密をご紹介しましょう!」と切り出す。このマークは翼の後端位置を意味しており、機内から翼の各部を最も観察しやすいポイントを示しているという。

万一機体に異常が生じた際、客室乗務員はこのマークが刻まれた窓を探す。この位置からであれば、翼上にあるスラットやフラップの稼働状況をすぐに目視で確認できるためだ。

なお、スラットは翼前端、フラップは翼後端に設けられた装置だ。どちらも離着陸中の低速飛行時、斜め下にせり出して翼の形状を変化させ、低速飛行では本来発揮しにくい揚力を確保する。

米ニューヨーク・ポスト紙は3月にこの動画を取り上げ、「黒い三角形に隠された『秘密』」として紹介。ちょっとした知識欲を満たしてくれるこの動画は、TikTokで30万回以上再生される注目を集め、1万1800件以上の「いいね」が寄せられている。

座席選びのヒントにも

三角形の意味を覚えておくと、乗客としてもささやかなメリットがあるようだ。航空会社や空席状況によっては、指定された座席以外への移動が許可される場合がある。あらかじめ客室乗務員に確認し、問題ないようであれば、ドアがクローズし空席が確定した時点で座席を移動することが可能だ。

その際、壁に刻まれた黒い三角を目印にすると良いという。リムさんは動画で、「この三角印の席に座った乗客は、ベストな位置から翼を眺めることができます」と紹介。機窓は翼のすぐ後部に位置するため、目の前の翼越しに迫力の写真や動画を撮ることが可能だとしている。

 この座席は航空ファンのあいだで、「ウィリアム・シャトナー・シート」とも呼ばれる。英サン紙によると、米TVシリーズ『トワイライト・ゾーン』で俳優のウィリアム・シャトナー演じる人物が、翼の上にグレムリンを目撃したことにちなんだ愛称なのだという。

機窓からの景色にさほど興味がない場合でも、比較的揺れが少ないとされる翼付近を選んだり、翼よりも前方に座ってエンジンの騒音を回避したりと、席決めのひとつの目安として活用できるだろう。

手をお尻に敷くわけは?

ちなみに冒頭で触れた「客室乗務員はなぜ離陸時に手をお尻の下に敷くのか」の問いについては、リムさんの別の動画で明かされている。

航空会社の規定にもよるが、セブ・パシフィック航空を含む多くの航空会社では離着陸中、客室乗務員は特定の姿勢を取る。特に目立つのが両手だ。てのひらが上を向いた状態で太ももの下に敷き、脚とシート座面のあいだに挟み込む。

これは万一の際に身を守る「ブレーシング・ポジション(衝撃防止姿勢)」なのだという。シートベルトを正しく締め、シートに深く座り、手をこのような位置に挟み込んで、腕の力を抜く。両脚は足の裏全体をしっかりと床につける。

こうすることで、身体全体をしっかりと固定できる。万一強い衝撃を受けた際も、勢いで両手が宙を舞い怪我をするリスクが最低限に抑えられるというわけだ。

リムさんは動画を「皆さん、安全な空の旅を!」で締めくくっている。安全で快適な旅の裏に、隠れた工夫があるようだ。

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【動画】CAが解説。▲印は安全確保に重要なほか、撮影のベストポイント。

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【動画】離着陸時に取る衝撃防止姿勢とは?

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和光が織りなす令和の文化空間。時計塔の下で始まる、新たな「銀ぶら」の愉しみ方

  • 写真:齋藤誠一 
  • 文:倉持佑次
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銀座のランドマーク、和光本店。現在の建物は渡辺仁建築工務所の設計により1932年(昭和7年)6月に竣工。クラシカルな建築美が洗練された街並みに囲まれ、昭和初期の優雅さと令和の躍動感が共存する独特の景観を生み出している。

「銀ぶら」という言葉を聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。明治の文明開化以来、銀座は日本の近代化を象徴する街として、粋と洒落の文化を育んできた。そして今、その伝統を受け継ぎながら、令和の時代にふさわしい新たな銀ぶらの舞台が誕生した。90年以上にわたり銀座4丁目の交差点に君臨してきた和光の地階が、「AMAZING WAKO」をテーマに、伝統と革新が交差する文化発信地として蘇ったのだ。ファッションやアートなど、各分野の第一線で活躍するクリエイターたちによる作品が並ぶその空間は、新しい発見に満ちている。さあ、新たな銀ぶらの世界へ、ともに足を踏み入れてみようではないか。

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回転什器と回廊。時を映す和光の空間デザイン

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本店地階の全景。空間の中心に鎮座する「舞台」と呼ばれる展示空間を、「回廊」がぐるりと取り囲む構成。

2024年7月にリニューアルを果たした和光の地階に足を踏み入れると、まるで異次元に迷い込んだかのような感覚に包まれる。中央に据えられた、時計の針を模した回転什器——これぞまさに「時の舞台」だ。杉本博司と榊田倫之が主宰する新素材研究所が紡ぎ出した空間デザインは、日本の伝統美と現代性を見事に融合させている。霧島杉の香りが漂い、京都の町家石が温もりを感じさせ、琉球トラバーチンが柔らかな輝きを放つ。これらの厳選された日本の素材が空間の随所に巧みに配され、静謐な美しさと先進性が共存する独特の雰囲気を醸し出しているのだ。「舞台」を囲む「回廊」を歩けば、まるで時の流れそのものを体感しているかのような不思議な感覚を覚えるだろう。

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時計の長針と短針を模した陳列台。展示は二週間ごとに更新され、訪れるたびに新たな文化体験を味わえる。
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展示空間には京都の町家で使用されていた「敷石」が敷き詰められ、その周囲には45度角度で敷き込まれた陶板四半敷が配される。柱に取り付けた建具には高知県の馬路村地区から産出される魚梁瀬杉を、四方柱には沖縄産の琉球トラバーチンを使用。

銀座に出かける時は、装いもお洒落でなくてはならない。昔から銀ぶらを楽しむ人々は、誰もが粋を競い合った。そんな伝統は今も健在だ。和光では、その粋を極めた品の数々に触れることができる。その一つが、LA発のブランド「ジ エルダー ステイツマン」とのコラボレーション製品だ。カジュアルなデザインを極上のカシミヤで表現するこのブランドは、最上級の着心地と、創業初期からのサステイナブルな取り組みで、世界中に多くのファンをもつ。色とりどりのニットウェアが並ぶ様は、まるで時を編み込んだかのよう。手に取れば驚くほどの軽さ、身に纏えばとろけるような着心地。アーティスティックな遊び心と極上の着心地を兼ね備えたこのニットウェアは、令和の銀ぶらスタイルを完成させる品といえる。

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ジ エルダー ステイツマンのニットウェア。手前¥220,000、奥¥264,000。
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リュニフォームのウオッチケース。各¥218,900

和光が選び抜いた品の中でも、特に時計に関連するアイテムは格別な存在感を放つ。創業以来、時を刻む精緻な機械への愛着は、和光のアイデンティティそのものだ。その愛着は、時計を大切に扱うための道具にまで及ぶ。そんな和光の卓越した審美眼で選ばれたのが、フランスのバッグブランド「リュニフォーム」のウオッチケース。ファブリックとレザーという2つの天然素材を用いた同製品は、上質なレザーの柔らかな質感や、職人技が光る縫製の緻密さで、見る者を魅了する。使い込むほどに増していく味わい深さは、長く愛用できる品の証。大切な時計の保管はもちろんのこと、中の仕切りを取り外せばコンパクトなハンドバッグへと変身するため、銀座の街に繰り出す時もさりげなく持ち歩きたくなる。

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古今の趣が交わる、アートと知の饗宴

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メトロ連絡口側の入口に設けられた「床の間」。床框には東大寺の古材、床柱には栗材の稲穂掛けが使用され、歴史ある素材に新たな息吹が吹き込まれている。

アートもまた、和光の本質に深く根ざしている。1930年代、前身の服部時計店で開催されていた美術展「和光会」が、現在の社名の由来となったといわれているほどだ。この伝統は今も地階で花開いている。中でも注目を集めるのが、杉本博司の作品だ。歴史と存在の一過性をテーマに、時間の本質を探求する杉本の姿勢は、長年にわたり時計文化を育んできた和光の精神性とも通じるものがある。杉本の作品以外にも、このセクションでは定期的に展示が入れ替わり、さまざまなアーティストの作品や工芸品が紹介されるという。こうしたアートの存在により、和光を訪れる人々は、買い物だけでなく、芸術鑑賞という新たな体験も楽しめるようになった。それは、銀座という文化的中心地における和光の新たな姿を象徴している。

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手に取りやすい本や小物は銀ぶらのお土産に。

そして、この芸術と文化への探求は、自然と書籍の世界へと広がりを見せる。同じフロアの一角に、時代を超えた知の遺産が静かに佇んでいるのだ。ここでは、ブックディレクターである幅允孝の選書によって、古今東西の名著が一堂に会している。「時間と本質」をテーマに厳選されたそれらの本には、服部時計店創業者・服部金太郎が1894年に建てた初代時計塔へのさりげないオマージュも込められているそうだ。文学、芸術、哲学、歴史——各分野の選りすぐりの書籍は、訪れる人の知的好奇心をさらにかき立てる。和光ならではの審美眼と幅の専門知識が融合したこの書棚は、アートセクションと呼応しながら、新しい文化体験の場として重要な役割を果たしているのだ。

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かみ添のカード。各¥1,650

銀座での優雅な時間も、そろそろ終わりに近づいてきた。せっかくの銀ぶら、気の利いた土産物で締めくくりたい。そんな時にぴったりなのが、和光オリジナルのレターセットだ。「かみ添」の唐紙を用いたレターセットは、時計塔にあしらわれた唐草模様や建物の石花模様をモチーフにした図案が、雲母摺りの技法で輝きを放つ。伝統的な唐紙のモダンな解釈は、時を超えて日本の美を再認識させてくれるようだ。デジタル時代だからこそ心に響く、このアナログの温もり。ペンを走らせ、インクが紙に染み込む様を眺めれば、手紙を書く喜びが蘇る。和光での思い出とともに、この上質な紙の感触を持ち帰れば、銀ぶらの余韻をいつまでも楽しめるだろう。

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リニューアルを果たした和光の地階は、銀座の新しいランドマークとして、私たちを魅了する。現代アートとの出合い、厳選された書籍との邂逅、そして日本の伝統美への没頭——ここには、まさに「銀ぶら」の新しいかたちがある。次の休日には、ぜひ和光の地階へ足を運んでみてはいかがだろう。きっと新しい感動とともに、心に刻まれる特別な一日が待っているはずだ。

株式会社 和光

TEL:03-3562-2111
https://www.wako.co.jp/c/artsandculture

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