なぜ「乗り物オタク」は公式発表にあっさり騙されるのか? 戦闘機・鉄道・自動車み~んな同じ、軍事ライターが冷静に分析する

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マニアの誤解はどこから来るのか。F-2戦闘機が米F-16のコピーである事実を見誤る理由を探る。心地よさや公式発表への盲信が生む誤認識、マニア文化の危険性を明らかにする。

公式にだまされる

アイドルのイメージ(画像:写真AC)
アイドルのイメージ(画像:写真AC)

 第二の理由は、「公式発表を信じて疑わないこと」である。そのため、公式発表が正しくない場合には正確に間違えることになる。

 マニアにとって「正解」とは権威筋からの発表を指す。何よりも公式発表であり、次には趣味誌等の記事である。

 しかし、権威筋は必ずしも正しいとは限らない。

 政府や業界からしてそうである。ウソはあまりつかないが、いつも本当のことをいっているわけでもない。防衛ムラや電力ムラは、そうやってだまそうとする傾向がある。

 趣味誌には

「広告や取材先の影響」

もある。TOTOの広告があればINAXの製品は持ち上げない。日本たばこ産業(JT)の取材協力があればタバコの害に触れてはならない。

 ただ、マニアはそれに気づかない。権威を信用しきっている上、内容を批判的に読み解けないからである。

 だから正確にだまされるのである。

 実際のところ、F-2への言及はポジショントークにあふれている。

 当時の防衛庁は国内開発を強調せざるを得ない。F-16コピーを認めると「それならF-16を買え」となる。だから「新素材を採用し日本の要求に合わせてゼロベースから設計した」と強調したのである。

 防衛産業も独自性を強調しなければならない立場である。F-2採用は防衛産業保護のためでしかない。しかもF-16の「車輪の再発明」である。それに3500億円を投じた。製造単価もF-16の2倍以上となった。その事実は認めるわけにはいかない。

 趣味誌も本当のことはいわない。広告主、取材元に泥を塗る上、愛読者の願望にもそぐわない。だから、いかにF-16とは違うか、F-16よりも強いかを力説する。記者も真摯(しんし)に読者に事実を伝えることは、

「大人げないことであり」
「大事なお客さんを切る行為である」

そう心得るものも珍しくない。

 これはH-3ロケットも同じである。その実態は宇宙開発詐欺でしかない。ファルコン9にはじまる再利用型の登場で経済性は打ち上げ前に消滅している。しかし、政府は成長産業の重点事業といい、産業サイドは世界に伍(ご)するロケットといい、科学技術の記事では世界に誇る技術とヨイショしている。そしてマニアは正確にだまされるのである。

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