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コラム「北斗七星」
「カスハラ電話にAIで対抗」という見出しの記事が目に留まった。顧客の暴言や理不尽な要求(カスタマーハラスメント)の電話からコールセンターのオペレーターを守るツールの開発が進んでいるという◆どう対抗するのか。その手段が意外だった。人工知能(AI)を活用し、顧客の怒鳴り声を「怖くない声」に変換するというのだ。AIに電話対応をさせるわけではない◆考えてみると、AIによる対応自体が不満の原因にもなりかねない。コールセンターで重要なのは、オペレーターが過度なストレスを受けずに顧客のニーズを的確につかむこと。だから、声色を変えるのは単純に見えて案外いい方法かもしれない。その発想に感心した◆発想といえば、行動経済学の「ナッジ」も面白い。情報の伝え方を工夫することで、人々に強制することなく自発的な行動変容を促す手法だ◆マスク着用などが求められたコロナ禍でも活用され、高い効果を上げた。罰則による規制では反発も生まれ、十分に浸透しなかっただろう◆社会問題を新しい発想で解決しようとする試みが次々と生まれている。気候変動や核廃絶など地球規模の難題克服への道もあるはずだ。人類の知恵で対抗したい。(杢)