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Conversation

脊椎損傷の重度障害の方が、1年間の米国研修に挑戦する。支援にあたっている友人からの連絡を頂き、関係者の皆さまと厚労省の政務官室でお話を伺いました。 渡米されるのは脊椎損傷者の八木郷太さん。15歳の時、柔道の練習中に首の骨を折り、四肢損傷のため現在も24時間の重度訪問介護サービスを利用されています。今年、ダスキン愛の輪基金による障がい者の海外研修プログラムに応募し選ばれ、クラウドファンディングでの支援も集め、なんとこれから1年間のアメリカでの研修に旅立つことになりました。 しかし、脊椎損傷者の長期海外研修の事例はおそらく国内でも初めてに近い事例。応募の際に一番不安だったのが、海外に行っても24時間の介護サービスが継続できるかだったそうです。実際、一度は行政側から前例がないため「支給決定できない」といわれ壁にぶつかったとのこと。しかし本人の粘り強い努力と団体のサポートの結果、地元の水戸市役所の障害福祉課と制度を所管する厚生労働省から介護継続につき前向きな回答を得ることができ、この度晴れてヘルパーの小宮さんと一緒に渡米できる運びとなりました。八木さんからは厚労省の理解と支援に、深いお礼の言葉を頂きました。 「前例がない」という理由だけで、断られることが多いのが行政の世界。しかし、若い八木さんの挑戦を柔軟な法令解釈でサポートする判断をした水戸市役所の姿勢は本当に天晴れだと感じます。そして、介護サービスが継続できる保証がない中で、車椅子でコツコツ英語の勉強を重ね、研修に応募した八木さんの揺るぎない挑戦心に深い感銘を受けました。厚労省としても、今回の八木さんの前向きなチャレンジを少しでも側面支援することができたことは光栄です。 アメリカに行って何をしたいか、八木さんに尋ねました。 「色々なアメリカの障害者団体がどういう活動をしているかをこの目で見て勉強したい。あと、日本から来た研修生が国の制度を使ってヘルパーを連れてきてるというのは、アメリカの障がい者にとっても衝撃だと思う。日本すげえだろ、とその点もアピールしたい。」と笑顔で決意を話してくれました。 八木さんの挑戦を特別なケースで終わらせてはいけません。今回の事例だけでなく、多くの障がい者の方々が、新しい分野、新しい活動に挑戦しようとするときに重度訪問介護サービスの規制が足枷とならないよう、制度を常に見直していく必要があります。八木さんのような事例に対する厚労省としての考えを整理し、近く正式に事務連絡として発出することをお約束しました。 八木さんの渡米が、多くの国内の脊椎損傷者だけでなく、海外における同様の障がいを抱えた方々、さらには、不可能に思える何かに挑戦しようかどうか迷っている全ての方にとり、背中を押すロールモデルとなることを願っています。
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