概要
AI(人工知能)による画像、文章、音声、動画生成に反対する思想運動。
AI技術が人間の創造性や個性を奪うと主張し、AIによって生成された作品を排除しようとする運動。 r /> またAI使用作品が人権侵害や著作権侵害などの問題を引き起こすと警告し、AI技術の倫理的・法的な規制を求める運動。 r /> 及び、上記の目的のため、主にAI利用者とAI利用企業、実際にAI使用したかの有無にかかわらずAIを使用しているとみなした人を攻撃する人達の呼称。
※現在のAIに批判的であることを自認する立場の人からは『反AI』は対象者に対する批判、侮蔑の意味を含んだ呼称だという理由でAI慎重派、生成AI反対派、無断学習反対派、規制派などの呼称が提唱されている。
生成AIの是非については世界中で巻き起こっている議論であるが、日本の漫画、同人、アニメ等では
・フェアユース(一定の条件を満たしていれば、著作権者から許可を得なくても著作物を再利用できること)の考えがない
・二次創作に寛容
・それでいて絵柄やアイデアについてオリジナルを尊重することが求める(詳しくは絵柄パクを参照)
などの著作物をめぐる独特の風習(日本の著作権法の規定とは必ずしも一致しない)が根付いているため、従来の「業界の常識」の中で育ってきたクリエイターと、そのような不文律を知らない業界外の人々(海外ユーザーを含む)との軋轢が目立っている(外部サイトも参照)。
「生成AI規制派」が蔑称として「反AI」と呼ばれたり 「反AI」が「生成AI規制派」を自称している現状もあるが
倫理的な観点から、規律や法解釈でクリエイターの権利保護や利益還元を目指しAIの適切な利用と著作権保護のバランスを模索するために政府に法規制を促したりAI企業に交渉を行うなど健全な活動を行う「生成AI規制派」と呼ばれる集団と
個人や企業をはじめとするAI利用者などを攻撃対象にし誹謗中傷やキャンセルカルチャーなどの迷惑行為を行うおおよそ法規制とは無関係(またはただ規制を叩き棒にしているだけ)の活動を行っている「反AI」と呼ばれる集団とは分ける必要性があるため
この記事は「生成AI規制派」ではなく「反AI」の主張や問題行為について取り扱う。
反AIの語源
「反AI」という単語は生成AI登場前から存在していた。
また反AIも2023年1~2月頃まで、自らを「反AI」と呼称していたのが確認される。しかし、反AIの誹謗中傷、ネットリンチ、人格攻撃で「反AI」という単語の印象が悪化、
2023年3月頃を境に反AIは自らをAI規制派などと呼称するようになった。
総括すると、「反AI」という呼称はレッテル貼りや蔑称としての利用を目的としてAIユーザー等によって生み出された単語ではなく、反AI勢力が自ら用いていた呼称のイメージ悪化に伴い、蔑称であるというレッテルを自ら貼り主張するようになった単語であるというのが実情である。
「反AI」という単語の扱いの変遷
確認できた最古の反AI呼称は、
人工知能学会誌の連載「AIにおける論争」〔第1回〕黒崎 政男
人工知能学会誌(1986~2013, Print ISSN:0912-8085)1987年12月号
に AI反対者の名称として「反=AI論者」という言葉が出てくる。
「反AI」はAIを題材にしたVivyやAI崩壊など、SF作品において「AIに反対する架空の組織や思想」を指す言葉として用いられてきた。
また、2022年頃には画像生成AI、Midjourneyなどが登場し、SF作品と現実を絡めて「反AI」の登場を予測するツイートが増加した。
「仕事がなくなって、反AI勢力が誕生するSFが絵描き界隈で起こりそう」2023年1月3日
2022年7月31日 ゲームクリエイター852話氏のAIイラスト投稿が炎上
画像生成AIユーザーへの日本発の誹謗中傷事件
この時点では852話氏を誹謗中傷した人達を反AIと呼んだ記録は残っていない。
2022年8月29日 AI画像生成サービスmimicβ版が公開
mimicβ版に批判的な言動をした者を反AIと呼んでいるのが観測される。
AIに否定的な言動をする人達を反AIと呼んでいるのはこれが初。
「イラスト提供したクリエイターまで叩くとか反AI正義マンやばすぎて草 過激な市民活動団体とかと何も変わらんやんけ やっぱ人間が一番こわいし醜い、はっきりわかんだね」
反AI since:2022-8-1 until:2022-9-1
2022年12月13日頃から始まったオンラインアートコミュニティArtstationを発端としたAIイラストに反対する活動「NOAI運動」が、2023年1月25日にイラストレーターのよー清水氏(@you629)によってツイッター(現X)上で
と投稿し、NOAI運動=反AI として紹介し、AI反対派推進派間に「反AI」という単語が一気に広まった。
この頃、ツイッター(現X)上でAI反対運動をしていた反AIも自分自身を反AIだと認識している。
「海外のほうが反AIって方が多いので」2022年10月28日
「でも反AIが増えてて本当に嬉しい😭😭😭😭おおおおおんんんん😭😭(泣)」2022年12月18日
「こちらの方は他の方の作品もAIによる改変をした盗作をしていましたね… AIを悪用する連中はこうして反AI派を攻撃してくるのでサブアカウントからの報告になり申し訳ありません…」2023年1月27日
これは、2022年頃は「反AI」はAI反対運動としての意味合いが強く
AI反対運動としての反AIと、AI使用者に対して攻撃的な言動を取る人達に対する呼称(反AI過激派、反AI派等)は呼び分けられていたからである。
しかし、Mimic炎上事件、クリスタのSD仮実装潰し、赤松健議員への誹謗中傷、
反AIによる事件が起こるたびに「反AI」という言葉そのもののイメージが徐々に悪化し、「反AI」という言葉がAI反対運動ではなく「AIに対して攻撃的な言動を取る迷惑な人達」の意味合いを持って使われる事が多くなった。
「「フェミニスト」を名乗ってヘイトをバラ撒く人のせいでフェミニストって名乗れないのと同じ問題が発生しつつあるよね、反AI」2023年3月31日
そのため2023年3月頃より、反AI達は「私たちは反AIではなくAI規制派、AI慎重派である」「反AIはレッテルである」と主張するようになった。
理由は「全てのAIに反対している訳ではなく、AIイラストや無断学習される生成AIにのみ反対している」「ディープフェイクなどAI犯罪行為に反発している」というものである。
「反AIと雑な括りはやめた方が良いですよ」2023年3月31日
反AIの主張
著作権法の理解不足に起因する主張
著作権法の知識が不足しており、いついかなる状況でも著作者が著作物の無断利用を禁じる権利があるという誤解に基づき「無断で学習されたAIモデルとAI生成物は著作権違反」であり、違法なAIを使用する「AI使用者は犯罪者」だという主張。
(日本著作権法には「制限規定」というものがあり、当該著作物を享受する目的でなければ
機械学習など情報解析のために、著作者に無断で複製行為を行う事が可能である)
「絵柄が保護されないのはおかしい」「生成AI問題に対応した著作権法がない、立法をすべきだ」「生成AIに対する法整備が遅れている」「著作権法30条の4を改正すべきだ」という法律そのものに不備があり、現状合法なAIを使用しているAIユーザーを指し「AIユーザーは脱法行為をしている」とする主張。
(日本著作権法はAI普及のため、著作権法の一部を改正する法律(平成30年法律第30号)が生成AIの普及に先駆けて制定されており、少なくとも生成AIに対する法整備が実施されていないか、又は遅れているという事実はない)
海外の著作権法と日本の著作権法を混合し「著作権法に違反している」という主張。
(海外では日本の様にAIに対応した著作権法整備が進んでおらず、
特にアメリカでは機械学習時のデータセット制作時に複製行為を行う事は
フェアユース規定に相当するか否かで裁判が進められている)
これらの著作権法の無知・無理解に基づいた主張は、文化庁の籾井著作権課課長に「知識基盤のレベル合わせができていない」と評された。
著作権法の不理解による主張は政府批判と結びつきやすく、AI使用者が犯罪者であるという主張は誹謗中傷問題に発展しやすい。
正しいAIと著作権の関係については、個人製作のwikiで情報収集するのではなく
文化庁のAIと著作権を視聴する事をオススメする。
生成AIの構造に対する知識不足に起因する主張
AIモデルの知識がなく、AIモデル内部に圧縮された学習元が存在するという誤解に基づき「AI生成物はコラージュである」「AI生成物は複製である」「AIモデルは検索機である」という主張をする。
Stable Diffusionをはじめとする画像生成AIのトレーニング用に使われている「LAION-5B」というデータセットに、児童性的虐待画像(CSAM)が含まれていた問題と合わせて「AIモデル内に児童性的虐待画像が入っている」「児童性的虐待画像で学習されたAIイラストは児童性的虐待画像である」「ゆえにAI使用者は性犯罪者である」という主張。
(モデル内部に画像は無いので、この主張は的外れである。
またSDは機械学習時に不適切な画像を除去してから学習している事を公表している)
AI生成物が版権キャラクターや特定作家と似た画風を出力するのは、無断転載された画像で機械学習されているため「機械学習に使用したデータセットを開示せよ」「問題画像が含まれているならオプトアウト(データセットから除去)せよ」という主張。
ローカルモデルが世界中に普及している現状を無視し、AIモデルの取り扱いを免許制にすべきだという主張。
このような主張が存在する理由
- 自身の著作物を無断で機械に収集される事への不快感
- AIによる迷惑行為の被害者になった
- 無断で自身の著作物をi2iされる、自身の絵柄や声や容姿を許可なくAIで模倣された
- 新技術が犯罪に使われるなど、社会情勢悪化への懸念
- ただし反AIとされる集団の中には犯罪や他者への攻撃を行わない普通のAIユーザーを攻撃する者も多い。
反AI活動の発端
昨今の反AI活動はAIユーザーへの誹謗中傷から始まった。
2022年7月31日、ゲームクリエイター852話氏がツイッター上で
Midjourneyβで生成したAIイラストと共に
「AIで自動生成した画像 一切加筆と加工をしていない直データ やばい 本当にやばい 廃墟イラスト完全に勝てない 廃業です 神絵が1分で生成される 参った #midjourney」
と投稿し話題となった。これに絵師を中心に「絵師が廃業するわけがない」と激しい反発が起き、この件以降852話氏がAI生成物を投稿するたびに反発が起き、2022年9月頃に852話氏の自宅を特定した反AIが押し掛け奇声を発しながらドアを叩く警察沙汰になり、852話氏は引っ越しを余儀なくされた、
また仕事用メールやDM、まとめサイト、匿名掲示板等に殺害予告を含む大量の誹謗中傷が投稿されていた。
この頃、他に誹謗中傷を受けたのは、2022年8月10日Midjourneyで生成したAIイラストで『サイバーパンク桃太郎』を発表した作家兼漫画家のRootport氏や、
2022年8月31日イラストレーターのさいとうなおき氏が「AI全般について、そういう技術が現れてしまった以上は時間を戻すことは出来ない。なので、それありきとして表現を考えていかなきゃなって思う。」という投稿など、
画像生成AIに初めて触れたクリエイターがAIの能力に驚愕し、クリエイターの未来について「絵師中間層(プロ絵師とアマチュア絵師の中間)は消滅する」「クリエイターはAIに代替えされる」など
悲観的な見解を寄せた事に反発する形で誹謗中傷や人格批判が行われた。
2022年の画像生成AI初期は、「AI使用者が絵師を馬鹿にしている」「AIが絵画の制作を完全に代替することはあり得ない」というのが反AIの論調だった。
確かに2022年初頭ごろの画像生成AIは未熟であり、クリエイターがAIによって置き換えられるという見方は難しいとされていた。
行き過ぎた反AI活動の問題
- クリエイターに対する魔女狩り行為
AI生成に難色を示す人々が、モラルやマナーや規約を守らないAI生成画像利用者の排斥に過熱した結果、本来の意図から逸脱し、魔女狩りのような行為に発展しているケースも見られる。
多くの画像投稿サイトではAI生成イラストが一気に増え始めた際、従来では考えられないほどの大量連投が起こり、サーバー負荷の問題でAI生成画像の一律禁止の対応を取ったが、PixivではAIイラストを禁止せず、代わりに「AI生成」のカテゴリを追加するにとどまった。
また、AIにありがちな絵柄や絵の破綻を根拠に、クリエイターに対してAIを使った嫌疑を掛け攻撃する者もいる。
確かに「ぱっと見でAIっぽいと分かる絵柄や絵の破綻」こそあるものの、それが該当しているからといって必ずその絵がAI生成物であるとは限らない。
前述の通り、AIは膨大なデータを学習して平均値を出力する性質上、AIに似せられたオリジナルが最も多い絵柄パターンでもある。
特に、流行りの絵柄に合わせようと努力してきた人はこの状態に陥る可能性も高く、「元からAIの絵柄に似ている人(AIに似せられた側の人)」は少なくない。
別パターンとして、AI生成画像普及初期に見られたような、ラーメンを手で食べたり箸が5本あったり、背景の構造物が物理的にあり得ない構造をしていたり等の作画ミスの部類を根拠として、AI生成だと決めつけられてしまうケースもある。
流石に箸5本とかはあり得ないとしても、指の数が1本違ったり、パースが狂って背景の建物の大きさの整合性が取れていなかったりする程度ならば、昔から手描きイラストでもままあった事例なのだが、この手の作画ミスが1つでもあると「AI生成だ!」と即座に糾弾する人間が残念ながら存在する。
なお、Pixiv事務局は2022年10月22日AI生成作品の取り扱いに関するサービスの方針についてを発表。
この方針により、従来のイラストとAIイラストは住み分けられることになった。
また、Pixiv事務局は「この先、創作過程におけるAI技術の利用がより普及していくと捉えており、AIが関与した成果物の完全な排斥は考えておりません」「AI技術は(中略)クリエイターを大いに助ける技術となり得ると考えております」と述べた。
しかしこれを受けて、AIイラストを排除する方針を取らずAIイラストとの共存を謳ったpixivに対し強い不満を示した反AIは、pixivを批判し始めたのだった。
- 排斥に用いる方法が暴言やコメント・タグなどに対する荒らし行為など、単純に不適切な方法である。
これは論ずるまでもなく、手段が間違っていれば例え真実を訴えていても問題である。
酷い場合、タイムラプスや作画経緯の配信アーカイブなどの証拠が存在していても尚、強硬にAIだと決めつけるのをやめず、単純な暴言だけで叩き続ける人間も存在する。
特に企業から依頼を受けて描かれ、公の場に出たイラストにこの手の疑惑が降りかかった場合、真実がどうであるかではなく企業に対するダメージを避ける為に企業がイラストを取り下げてしまい、それを持って「AIだった証拠だ!」として、イラストレーターへの叩きが加速する問題もある。
反AIの起こした事件
- ゲームクリエイター852話氏への誹謗中傷
上記の自宅凸事件に加え、仕事用メールやDM、まとめサイト、匿名掲示板等に殺害予告を含む大量の誹謗中傷が投稿されていた。
・AI魔女狩り
852話氏が手描きだと投稿したイラストが、novelAIで似た画像が出力される、細部がおかしいなどを理由に
「AIイラストを手描きだと偽っている」として炎上
852話氏は該当イラストのPSDや、別絵のタイムラプスを投稿するも反AIは納得せず
レイヤー構成がおかしい、塗りがおかしいとして誹謗中傷を継続した。
この手描きイラストをAIイラストだと決めつけて叩き、製作者が否定しても叩くのをやめない様子が、魔女裁判と酷似しているとして
のちにAIイラスト魔女狩り、略して「AI魔女狩り」と呼ばれるようになった。
・少年ボイスRVCが炎上
852話氏は、2023年4月19日「RVC甥の声(リアルショタ)許可済」
2023年4月23日「RVC 甥と甥の弟(リアル小学生)のボイスデータ「ごんぎつね」をがんばって新録してもらいました。両親・本人ら快諾済」というRVC動画をXに投稿し
5月26日ぶっきらぼう少年ボイス RVCデータ「友夜-yuuya-」をboothにて販売した。
このRVCは852話氏の声と知人男性の声を編集したもので、852話氏には甥は存在しておらず、甥という設定のコンセプトで作られたものだったが、「甥」という言葉だけが独り歩きしていった。
またboothにて『ぶっきらぼう少年ボイス RVCデータ「友夜-yuuya-」』の紹介文に「リアル少年の声を収録しています」と書かれていたため、このリアル少年とは852話氏の実在する小学生男子の甥で、甥の声を機械学習に使ったものだと憶測が飛び交った。
そして反AIの間で伝言ゲームを繰り返すうちに
・実在する小学生男子の甥の声を、本人や家族騙して収録した
・学習データを許可を得ず勝手に高額販売している
・児童ポルノ的用途を推奨してる
・852話氏はペドフィリアである
・子供を切り刻んでAIに詰めて商品として市場に売りに出している
と、どんどん内容が変質していった。
852話氏は2023年5月頃から弁護士を通して、誹謗中傷を行った反AIに対し
複数のIP開示請求と訴訟を行い、現在(2024年5月時点)も開示請求と訴訟は続いている。
一部の訴訟では示談が成立し、示談金が支払われた。
また、示談が成立せず訴訟が提起された1件では、被告が裁判所に出頭しないまま審理が終了したため、擬制自白として852話氏の勝訴が確定し
2024年4月10日に判決が言い渡された。
この判決は生成AIに纏わる裁判第一号である。
- Mimicβ版潰し
8月29日、ラディウス・ファイブ社の「15〜30枚程度のイラストから画風を学習(追加学習)し、似たタッチのイラストを生成」するAI画像生成サービスmimicのβ版がリリースされた。
しかし「悪意のあるユーザーが勝手に自分の作品をmimicに機械学習させ、AI生成物を自分の作品として発表してしまうのではないか」などの危惧から、数多くの批判が寄せられた。
mimicβ版のガイドライン上では「他人のイラストを勝手にアップロードし機械学習」する
いわゆる「無断学習」と呼ばれる行為は明確に禁止されていたが
ラディウス・ファイブ社、ならびにmimicのPRやヒアリングに協力したクリエイター、たんたんめん氏に対する誹謗中傷に発展し
mimicβ版は僅か1日でサービスを停止する事になった。
その後mimicはガイドラインを改定し、利用登録を審査制にする、生成したイラストはツイッターアカウントと紐づいて公開される、利用規約違反を報告できるフォームを設置するなどの不正利用対策を施した上で、11月に復活した。
この炎上事件について「mimicの追加学習は汎用的な技術であり、すぐに海外で類似のサービスが登場するだろう。そうなる前に日本がAIイラスト分野を主導しなければならない、mimicを潰して喜んでいる場合ではない」という指摘があった。その指摘通り、10月にはNovelAIがリリースされ、12月には絵柄を簡単に追加学習できるLoRAが開発された。
イラストAI「mimic」のヒアリングに協力したことで批判を受けているイラストレーター、たんたんめんさんが経緯と私見を投稿
また、2022年9月8日と16日にVtuberディープブリザード氏がmimic開発者と対談した動画と11月7日にmimicを活用した動画は、反AIからの強い非難を受けて
mimic炎上事件以降、AI反対活動及びAI反対者に対して
反AIという呼称が急速に使われ始める。
Twitter上でイラスト投稿者が「AI学習禁止、無断学習禁止」の文言をプロフィールに掲載しはじめる。
2022/8/29「AI学習禁止」がtwitterでトレンド入り
その後、ラディウス・ファイブ社は2024年6月25日、イラスト制作補助ツールcopAInterをリリース。
線画と下塗りを入力すると自動で着彩してくれる「AI着彩」、ラフスケッチを線画に変える「AIペン入れ」が搭載されている。
「AIペン入れ」は、手描きのラフを綺麗な線画に仕上げる機能で、Controlnetなど既存の技術「線画抽出」を改良したもの。
しかし、一部の反AI派からは「一部でもAIに頼る人は真の絵描きではない」「線画が盗まれる」「他人のイラストから線画を抽出する悪用の可能性がある」などの批判が出た。
ラディウス・ファイブ社は以前のmimicの時とは異なり、これらのクレームを完全に無視している。
- クリスタの画像生成AIパレット試験実装潰し
11月29日、セルシスがクリスタにStablediffusionを使用した「画像生成AIパレット」の試験的実装する予定だと発表。
同月にAdobeが自社製品に画像生成AI機能(のちのFirefly)を搭載する発表があったため、画像生成AI搭載のペイントソフトは今後主流になると見込まれ、セルシスは試験的実装を急いでいたと見られている。
この発表は反AIから激しい批判を浴び、セルシスは翌月12月2日に仮実装を撤回した。
「CLIP STUDIO PAINTへ画像生成AI機能を搭載しないことといたしました」
Mimicに続いてクリスタの生成AI機能仮実装を潰した事で、日本のAI開発は遅れる事になり反AIへの不満が一気に高まり始める。
- 赤松&山田議員への誹謗中傷
参議院議員の赤松健氏は一早く生成AI問題のために動いていた。
Midjourneyリリース以降、特にNovelAI正式サービス後に無断学習や無断i2i被害や絵柄の模倣など、赤松議員の元にAIイラストに関する苦情が寄せられていた。
そのため2022年度末頃、赤松議員は弁護士や文化庁やクリエイターなど各種有識者からヒアリングを行っていることをXで報告している。
2022年9月15日のフランス視察でAI作画等について現地クリエイターと意見交換
2022年頃の反AIは「漫画村を潰した実績のある赤松議員が生成AIを規制し違法化してくれる」という論調で期待していた。
しかし、赤松議員は、2023年1月8日「驚異の進化を遂げる画像生成AI ~赤松健の現時点での提言~」動画を投稿した。
日本が今後AIとどう向き合うべきか?と、前職漫画家の経験を活かしクリエイターとしての立場から提言するものであり、生成AIを普及しつつも規律や法解釈でクリエイターの権利保護をしようという内容であった。
つまりAIを完全に禁止にしたり違法にする内容ではなかったため、赤松議員に期待していた反AIは落胆し、2月6日ASCII.jpのASCII.jp「画像生成AI、珍しく日本が勝つチャンス」発言で怒り、3月23日Stability AI社のCOO・伊藤錬氏と会合し笑顔のツーショット写真を投稿した事に対して大激怒。
赤松議員は複数のAI企業と交渉し、AI企業とクリエイターの間で適切な報酬システムを構築しようと試みていましたが、反AIはこの提案を受け入れず赤松議員はクリエイターの期待を裏切ったという論調で、反AIは激しい誹謗中傷を行うようになった。
2023年6月10日、赤松議員は国際著作権シンポジウムでAIの法規制やガイドラインの策定が難しい現状を述べ、AIの適切な利用と著作権保護のバランスを模索していることを強調した。
この講演で画像生成AIの規制派という意味合いで「反AI」という表現を使い、お絵描き初心者~中級者の反AIから苦情が殺到していると述べた。
公の場で議員が反AIという言葉を使ったのは、これが初である。
赤松議員は講演でクリエイターへの利益還元のため公式絵柄LoRAや絵師版のJASRACのような組織を作ろうという提言をしている。
反AIは自分たちを反AIと表現された事、陳情を苦情扱いされた事、初心者~中級者扱いされたこと、公式絵柄LoRAや絵師版JASRACを作ろうとしている事に対して激怒し、赤松議員へ誹謗中傷を行った。
赤松議員を見限った反AIは、次に同じく漫画村を潰した実績を持つ山田太郎議員に過度な期待を寄せるようになった。
しかし、山田太郎議員も赤松議員と同意見であった。
山田太郎議員は2022年8月頃よりAI問題に取り組んでいた。
『#山田太郎のさんちゃんねる』【第504回】でAI問題について触れており、2023年3月29日には国会で質疑を行い30条の4の但し書きの解釈について大臣に質問し、「著作権法の解釈は司法判断に任せるのではなく立法府で議論してルールを作るべき」という主張を行っている。
そして山田太郎議員は2023年6月28日に「山田太郎のさんちゃんねる【第542回】議員になって、早一年!赤松健議員、1年間を振り返り!」で、赤松議員をゲストに招きAI問題について触れた。
AI問題に対して単純に反対するのではなく、AI促進と著作権侵害問題を分けて考える必要性があり、特に反AIのような感情的な議論は避けるべきであると指摘した。
そのため反AIは「山田議員はクリエイターの期待を裏切った」という論調で誹謗中傷を行うようになった。
なぜ両議員は反AIに同調せず、反AIを切り捨て現実的なAI規制案を模索したのか?
漫画村問題の際、山田議員と赤松議員は表現の自由を守るため、通信ブロッキングに反対した。
当時、出版業界や政府内部から要求があったが、両議員は検閲の恐れがあるとして反対姿勢を貫いた。
とくに赤松議員は無断転載の被害当事者でもあったが、ブロッキングには一貫して慎重な姿勢を見せた
。つまり、両議員の対応は「表現の自由を守る」という原則を守ったものでありAI問題に関しても、短慮なAI規制や法改正をして表現の自由を損なう事を危険視したからである。
- あらいずみるい氏AI魔女狩り事件
スレイヤーズシリーズの挿絵で著名なイラストレーター、あらいずみるい氏がコミックマーケット#C102にて頒布予定のルイルイ企画「るいるい亭にゅ10」と、うちわとクリアファイルを公開
したところ、
同人誌表紙絵とクリアファイルがAIイラストだとして
反AIが「ベテランがAI堕ちした」「盗用AIに手を出した」「AI明記せずに売るとは詐欺行為だ」と誹謗中傷と個人攻撃を行い、AI魔女狩りを行った。
この騒動で、あらいずみるい氏は反AIの誹謗中傷のターゲットの一人となった。
反AIがこの絵がAIイラストだと判断した根拠は、あらいずみるい氏が2022年12月8日にmeituでのi2i変換画像を投稿していた事、2023年5月12日にAIイラストを活用したイラストを投稿していた事、AI 生成メディア認識モデルHiveにてAIイラストだと検知された事である。
これに対し、あらいずみるい氏は8月15日に同人誌の表紙とクリアファイルは手描きであると、原画のレイヤー構成を動画で公開。
ほぼ同時期にHiveが手描きイラストをAIイラストだと誤検知する事も発覚した。
あらいずみるい氏を誹謗中傷していた反AIの大部分は謝罪する事なくアカウントを消し、
先鋭化した反AIは「レイヤーパカパカした程度で手描きだとは信じられない」「AI魔女狩りが起きるのは生成AIが存在するせい」「タイムラプスを出さないのはAIイラストの証拠」などと言い、レイヤー分割AI拡張機能(layerdivider)でAIイラストをレイヤー分けし手描きイラストに見せかけたに違いないと、さらにAI魔女狩りを継続した。
あらいずみるい先生に粘着を続ける反AI「レイヤー分けもAIで出来ました!」
なお、あらいずみるい氏のレイヤー構成は、1影2影など乗算レイヤーやスクリーンレイヤーで細かく分けられており、この動画のようにAIイラストをlayerdividerでレイヤー分割した場合、影やハイライトが一括でパーツ分けされてしまうので、あらいずみるい氏の動画のようなレイヤー構成にはならない。
またlayerdividerの製作者、抹茶もなか氏は「このツールはAIイラストの修正を容易にするための拡張機能であり、AIイラストを手描きに見せかける機能ではない」とコメントしている。
あらいずみるい氏はこの騒動について「ちょっとひどいと思った人のは記録ちゃんと残してる」と述べており、法的措置も視野に入れている事を匂わせている。
あらいずみるい氏へのAI魔女狩り事件に関連して、「反AI」「AI魔女狩り」という言葉の認知がAI問題を知らない一般人にも一気に進んだ。
- AI朗読劇潰し
株式会社Lol主催の「~AI朗読劇シリーズ~ 『AIラブコメ』」、生成AIに恋愛ドラマの脚本を作らせて、声優が都内の劇場で朗読するというものだった。
声優陣には、人気アニメ「鬼滅の刃」や「BLEACH」などに出演経験がある19人をそろえ、2024年3月13~20日に講演が予定されていたが、反AIからの批判と脅迫により中止を余儀なくされた。
AIイラストを前面に出した広告が反AIの怒りを買い、「盗作脚本だ」「出演した声優の声を学習させても文句を言うなよ」といった批判が殺到した。
またAI朗読劇に参加していた立花慎之介氏が代表をしている事務所が日俳連に所属していたことなどから、反AI達は日俳連の #NOMORE無断生成AI 運動のタグを使い「日俳連が無断生成AI反対をしているのに無断生成AIを使用した劇をするとは何事か」と批判を浴びせた。
株式会社Lolは3月6日にこの朗読劇は文化庁のガイドライン通りの運営をしており問題は無いと経緯説明をしたが、ラノベ作家サカナ霧が株式会社Lol宛てに「開示しない場合は無事に開催されないことを祈っております」*「あなたの家族が拉致され臓器を抜かれ、他の人間と接続された状態で見付かったらどう思うか」と脅迫文を送る*など反AIの誹謗中傷は治まらず、3月9日に演者の安全を確保できず「関係者の皆様に多大なるご迷惑がかかる可能性」があるという理由で中止を発表した。
この騒動による経済的損失は推定1000万円に上ると言われており、日本俳優連合の #NOMORE無断生成AI 運動で潰された、クリエイターの仕事を奪うなと言いながら声優の仕事を奪った事例として議論を呼んだ。
- AI Vtuber、絵藍ミツアへの中傷
外見はvtuberディープブリーザード氏によるもの。
無断学習をせず一般から学習用画像をつのり、クリエイターから許可を得た画像のみで機械学習するモデルを製作し
アーティストに対する倫理的問題の改善を目指すプロジェクトである。
2022年12月頃より機械学習を行っている。
当初、学習枚数が少なかった初期は生成物のクオリティは低かったが
(Vroid画像からの機械学習は2023年の1月頃から行われていた)
3月に一般から学習用vroidを公募し始める、その時期より生成画像のクオリティが一気に上がり、当初は静観もしくは支持していた反AIも絵藍ミツアを叩くようになる。
そのため反AIは、絵藍ミツアが使用していたOpenCLIPと呼ばれる画像とテキストを関連付けるためのモデルが、SDを使用して学習されている事を問題視し
「クリーンな画像生成AIを謳っている癖に、嘘をついていた」として叩いた。
OpenCLIPに画像データは含まれていないため、著作権法上の問題は無かったが
絵藍ミツア側はAIモデルの倫理的問題の改善を目指すという方針のため
8月17日に「OpenCLIP使用のご報告と今後の方針」を公開
Mitsua DiffusionからMitsua Likesに名称を変え、モデル構造そのものを変更
OpenCLIPを使用せずにモデル制作を行うと発表した。
また、絵藍ミツア公式discordのお知らせに「少しでも反AIの空気を緩和させ、ポジティブな画像生成AIについて広められると嬉しいです」と書かれていたことに対し「反AI」という単語を使用した事に対して、反AIが「蔑称を使用している」として激怒。
なお、お知らせが書かれたのは2022年12月であり「反AI」はまだ蔑称ではなかった。
- AI即売会に虚偽通報
2023年6月18日、AI生成物を展示頒布するAI即売会、AIけっとが開催された。
AIけっとで「展示者が偽造紙幣を販売している」として、複数の反AIが嫌がらせ目的で
警察に虚偽通報し、即売会に警察が到着する騒ぎになった。
実際のAIけっとで展示されていたのは、1960年代に赤瀬川原平によって発表された、
千円札裁判の名で有名な『復讐の形態学(殺す前に相手をよく見る)』という作品のオマージュ作品で、
京都精華大学の学生であり現代美術家のらぞ氏による"復讐の形態学 REMIX 2022"という、紙幣をその場でi2iしたものが造幣局のHPと共に表示される
見た人に作品の意味を考えてもらうインスタレーションアート(その場で体験してもらう現代美術)であり、販売はしていなかった。
通報によって駆け付けた警察も問題ないと判断し、らぞ氏は解放された。
- 「クリエイターとAIの未来を考える会」理事、木目百二(鴨下全生)氏の会見と謝罪
2023年4月27日、NHKニュース7で、「クリエイターとAIの未来を考える会」理事の木目百二(鴨下全生)氏による画像生成AIの適正利用・法整備を求める記者会見が行われた。
しかし、同日に木目百二氏がもめん102名義で『ぼっち・ざ・ろっく!』のスカトロ18禁同人誌を制作し、FANBOXにて有料販売していたことが発覚。
『ぼっち・ざ・ろっく!』出版元である芳文社は二次創作をガイドラインで禁止しており、また木目百二氏が著作権者に対価を支払っていないことから
「クリエイターの保護を訴えながら、クリエイターから搾取している」「違法行為を行いながら合法のAIを非難している」と強い批判を浴びた。
木目氏はこうした批判を受けて4月28日にXで「出版元のガイドラインに従わない形で二次創作を行っていた」として謝罪した。
- ナウル共和国政府観光局アカウントへの中傷
2024年9月12日、総人口約一万人の南太平洋の国ナウル共和国がX(Twitter)の機能である生成AIチャットボットを用いたAI画像を投稿する。
元々SNS広報活動に熱心でありイラスト界隈だけでなく広く2024年9月現在で50万フォロワーいたのだが、その中には反AIユーザーも含まれておりあっという間に炎上。
投稿の削除、また「複数人の反生成AI派の方からのDMを含むあまりにも多くの強い言葉、謝罪強要等の命令口調への対応に疲れてしまいました。しばらくXをお休みします。」とSNS担当者を疲弊させ休止に追い込んだ。
過去の炎上と比べて特に注意すべき点として、GrokによるAI生成はX(Twitter)に設けられた機能であり、Xの機能でXの利用規約に沿ったものをXに投稿して非難されるいわれはないのに攻撃されたことである。仮にGrokに問題があるとしてもその申し出はX運営にすべきであろう。
世界最小の共和国・ナウル 政府観光局Xが法的措置検討 「未開の部族」「蛮族」と誹謗中傷被害
外部サイト
日本人クリエイターが持ちがちな"自身の生み出す著作物に対する極めて独占的かつクローズドな考え方"は、自分にとって非常に理解し難いものがある、という話
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絵柄パク…法的に問題がなくとも、「他者と絵柄が似る・他者から絵柄を取り込んで似せる」ことはモラルやマナーの違反であるとする思想であり、「無断での学習」や「絵柄を似せる行為」などを問題だとする反AI思想の祖先と言える概念。