東京五輪後の大型国際イベントとなる2025年大阪・関西万博の会場建設に向け、兵庫県尼崎市南端の埋め立て場「フェニックス事業用地」に、資材の運搬拠点となる埠頭(ふとう)ができる見込みとなった。一帯の東西約10キロに広がる国の重要港湾「尼崎西宮芦屋港」は企業の撤退や台風被害に苦しめられてきた中で、関係者らは「県の埠頭新設は大きな追い風になる」と期待を膨らませる。
県が整備する埠頭は約300メートル区間に、水深5・5メートルを確保。万博の開催期間中は入場客が車から船に乗り継ぐ拠点となるのを目指し、その後は国際貿易を担う神戸、大阪港を支援できるよう、空のコンテナの集積拠点とする構想も描く。
尼崎西宮芦屋港は神戸、大阪港に挟まれるという好立地で、食品メーカーや大型物流施設、冷蔵施設が進出。尼崎市のフェニックス事業用地では、既に埋め立てが終わった場所にダイハツやトヨタの輸送基地が完成し、芦屋-西宮市の臨海部にはマリーナが集まるなど、エリアごとの特色も出ている。
ただ、港湾としては担うのは国内物流のみ。貨物は砂利や鋼材などのバルク(ばら積み)が100%を占め、取扱量は06年の699万トンをピークに18年は457万トンと伸び悩んでいる。
◇ ◇
一帯はこれまで悲哀も味わってきた。最たるものが、尼崎市が一翼を担った「パネルベイ」の終焉(しゅうえん)だ。
大阪湾一帯にプラズマテレビのパネル工場が相次いで進出し、尼崎市内ではパナソニックが3工場を稼働させたが、収益力が低迷するなどして程なく撤退。さらに18年の台風21号では高潮が発生し、港湾施設が広範囲にわたって浸水被害を受けた。
19年度、県が港湾事業者らにヒアリングすると、次々に深刻な意見が寄せられた。
「岸壁が浅くて大きな船が入れず、はしけで2次輸送をするしかない」「貨物を保管できる施設が少ない」「周辺の交通渋滞をなんとかできないか」
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企業撤退や万博開催など大阪湾を取り巻く状況が急激に変化する中、県は尼崎西宮芦屋港の30年後を見据えた長期構想を策定し、10~15年後を見据えた港湾計画づくりに着手した。近年伸びている冷蔵・冷凍倉庫と物流企業を重視した誘致や、高速道路にアクセスしやすい交通網を整備するなど、港湾・海運事業者らと連携したインフラづくりを目指すという。
ただ、新設する埠頭周辺の「分譲予定地」(42ヘクタール)についても分譲時期は現時点で「未定」。臨海部には使われていない区画や未完成の事業もあり、どこまで課題を解消できるかは未知数だ。
県は「万博頼みにせず、神戸、大阪港と連携を密にして新たな需要を掘り起こしたい」としている。(竹本拓也)
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