男の子やペットも…アニメ「プリキュア」放送20年、世相の変化に合わせて大変身
節目となる作品では、社会性の高いモチーフに挑んできた。15作目の「HUGっと!プリキュア」(平成30~31年)の主人公たちは空から降ってきた赤ん坊の世話をするが、バトルに臨む際は男性キャラクターに世話をバトンタッチする。育児休暇や仕事と育児の両立といった社会的な課題に、関心が高まっていた時期だった。
20作目となる「ひろがるスカイ!プリキュア」(令和5~6年)は、シリーズ初の男の子のプリキュアが誕生した。性別にとらわれないジェンダーレスへの意識が高まる中、「ずっと前から、男の子がいてもおかしくないと考えていました」と鷲尾EP。子供たちにどう受け止められたのかが分かるのは「彼らが成長して、自分の考えを自分の言葉で話せるようになってからです」とも語る。
企画には毎年、スタッフ全員が頭を悩ませてきた。現在放送中の「わんだふるぷりきゅあ!」は、ペットの犬や猫がプリキュアになる。「もうネタが尽きてきた」と鷲尾EPは笑う。
アイデアは将来に向けて温存せず、目の前の作品に全てつぎ込んできた。シリーズが始まったとき、スタッフたちは1年間続けることしか考えていなかったという。今も長く続けようとは考えていない。鷲尾EPは「続けることを意識したら、終わりますから」と話した。(藤井沙織)
■「プリキュアは世相のアーカイブ」
アニメ作品に詳しい近畿大の岡本健教授の話
「東映アニメーションが担当する「プリキュア」の放送枠で大切なのは、スポンサーの玩具大手「バンダイ」が連動して作る、変身アイテムを中心としたグッズの売れ行きだ。1年で作品の設定を変えて新たなグッズを展開すれば、毎年の高い売り上げを期待できる。
「スーパー戦隊シリーズ」などと同じ仕様であり、従来の女児向けアニメよりも商業的に洗練されたと言っていい。原作のないアニメだからこそできる手法でもある。原作漫画などがある場合、作家は人気作を1年で終わらせたくはないだろう。