「子どもが鼻血を洗面器で受けた」「被曝が遺伝する」…福島を苦しめ続ける「原発事故の根拠なき誤解」に反論する

林 智裕 プロフィール

福島の原子力災害後、被曝の遺伝影響に対する言説が公人からさえ飛び交った。しかもそうした誤った言説は、事故直後だけではなく長期にわたって流布された。立憲民主党の逢坂誠二代表代行のブログには、2018年になっても以下のようなことが書かれた。

〈原子力発電はいくつもの根源的な難題を抱えている。
万が一の事故の放射線被害は、一人の個人の体を蝕むだけではなく、遺伝によって世代を超えて人類に悪影響を及ぼし、人類という種の存在にも悪影響を与えるものであること〉

これらの言説が、当事者のメンタルヘルスにいかにダメージを与えてきたか。私自身も福島で原発事故を経験し、壮絶な現実を身近で無数に見てきた。

非常時は、「絶望」こそが人の命を奪う。

「既知の事実や知見を無視した、終わった議論の蒸し返し」そのものに人々を傷つけるリスクがある。「念のために言っているだけ」「警鐘を鳴らしているだけ」などと正当化は出来ない。まして、それらの犠牲になるのは発信者本人ではなく今も福島に暮らし続ける人々だ。原爆被爆者が苦しめられた、「ピカがうつる」に等しい差別の再来を助長してはならない。

 

「食べて応援」を「悪質」と言うが…

最後に(3)について。鴨下氏は著者と講談社に対し「素人が何の責任もなく言い切り」「メディアが載せる」と言い、さらに細野豪志衆議院議員と開沼博東京大学大学院准教授にも「福島を、科学を政治的に歪めてきた人」と強い言葉を向けるが、いったい何を根拠にしているのか。

むしろSNS(X)では、逆に鴨下氏のアカウントこそが非科学的であると批判を受けて「炎上」し、頻繁にコミュニティノートを付けられている。

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