混戦模様「ポスト岸田」の行方は?

混戦模様「ポスト岸田」の行方は?
「岸田さんが出ない!」

自民党内に衝撃が走った。

岸田総理が総裁選挙への立候補を断念したことで、構図は一気に流動化。

「ポスト岸田」にはベテランから若手までさまざまな名前が挙がり、総裁選は混戦模様となっている。
(取材班)

突然の表明 舞台裏は

「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」
8月14日午前11時半。

岸田は、自民党総裁選に出ない考えを明らかにした。

「政治家としての意地」ということばを繰り返し、ときおり悔しさもにじませた。
実は、この前日の13日から14日の朝にかけて、岸田は側近で党の幹事長代理を務める木原誠二らとひそかに総理大臣公邸で対応を協議していた。
「週が明ける20日には、総裁選の日程が決まる。広島、長崎の原爆の日の式典が終わり、外交日程にも区切りがつくこのタイミングしかない」
この場で、岸田は総裁選に立候補しない意向を伝え、記者会見に向けた準備を指示した。

思いとどまるよう説得する側近もいたが、岸田の意思は固かった。

総裁選に立候補しないという最終的な方針が決まった。

岸田の心中

「政治とカネの問題でトップがいつか責任を取らなければならない。引きずり下ろされるような状況には追い込まれたくない」
岸田は以前から周囲にそう漏らしていたという。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けた党への逆風はことしに入ってからもやむことはなかった。

4月に行われた衆議院の3つの補欠選挙ではいずれも敗北。

党内からは「次の衆議院選挙は岸田総理では戦えない」との声も出ていた。
ある政府関係者は内閣支持率も低迷する中、岸田は通常国会閉会後の6月ごろから、
8月半ばに「立候補しない」と表明することを検討していたと明かした。
一方、岸田はこの2か月ほどの間、全国各地で視察や車座対話を重ね、秋に策定を目指す経済対策に地方の中小企業への支援策を盛り込む方針などを打ち出してきた。

また、憲法改正をめぐって、自衛隊の明記に向けた論点整理を行うよう党内に指示を行った。

党内ではこうした動きを「総裁選に向けた準備だろう」と見る向きもあった。

最後まで立候補を模索していたのだろうか。

その疑問に対し、岸田に近い政府関係者は、こう解説する。
「実際は、身を引くにあたってみずからが進めてきた政策課題が誤った方向に進まないよう道筋を付けようとしたのではないか」
岸田はふだんからあまり感情を表に出さず、思いを内に秘めるタイプの政治家だ。

今回の決断も熟慮を重ね、最後まで本音を言わず結論を出したのだろう。

立候補しないことを表明した岸田。
翌15日、閣議に出席した閣僚にこう呼びかけた。
「総裁選挙ではわれこそはと積極的に手を挙げて真剣勝負の議論を戦わせてほしい。総裁選に名乗りを上げることを考えている方もいると思う。気兼ねなく、職務に支障のない範囲で堂々と論戦を行ってほしい」

現職閣僚から続々

岸田の呼びかけに呼応するかのように、閣僚からは総裁選への発言が相次いだ。
動きが急だったのは外務大臣の上川陽子(71)だ。

これまで記者会見で対応を聞かれても「一意専心、仕事をし続ける」と繰り返してきた上川。

8月15日の閣議のあと外務省に入る際、記者団の取材に応じ、立候補への意欲をにじませたのだ。
「何をすべきか熟慮をしたうえで決断をし、行動に移していく覚悟だ」
翌々日の17日には総理大臣公邸を訪れて岸田に意欲を伝え、複数の議員に電話で支援の要請を始めた。

旧岸田派の上川は、派閥はもう解消されているとして、幹部を務めたベテラン議員らを頼ることはしないという。

推薦人の確保が課題になるが、議員連盟での活動で親交のあった議員を中心に支援の働きかけを続けている。
デジタル大臣の河野太郎(61)は、外務大臣や防衛大臣を務めてきたことに触れ、意欲を重ねて示した。
「いつかこの経験を生かせる日が来ればと思っている」
8月26日にも立候補を表明する方向で調整している。

麻生派に所属する河野は、8月9日、麻生と会食し、意欲を伝えていた。

この席ではみずからが掲げる政策についても説明したという。

河野は、前回・3年前の総裁選挙にも立候補し、決選投票で岸田に敗れた。

この時、麻生派は岸田と河野、2人を支持する対応をとった。

今回、河野は派閥の支援に期待を寄せるが、派閥内には河野以外を推す意見もあり、麻生の判断に注目が集まる。
経済産業大臣の齋藤健(65)も会見で意欲を見せた。
「『総裁選に出るべきだ、あなたしかいない』という連絡が数多く寄せられた。そういった声を真剣に聞かないといけないのかなと思う」
こう述べ、立候補の要請が複数あることを明かした。

齋藤に立候補を求めているという議員は次のように語った。
「本人はまだ決めていないが、出る場合、党幹部も含めて一緒に応援できる仲間はいる」
法務大臣や経済産業大臣を歴任するなど政策に明るい齋藤への期待も高まっているが、無派閥で活動してきたこともあり、推薦人をどう確保するかが課題になる。
前回の総裁選に立候補した経済安全保障担当大臣の高市早苗(63)も、意欲をにじませた。

「終戦の日」に東京・九段の靖国神社に参拝したあと、思いを語った。
「仲間たちと力を合わせて日本列島を強く豊かにし、次の世代に引き渡す使命を私たちは負っている」
取材に応じた際、高市の後ろには支援する議員の一部も並んだ。

「高市には仲間がいる」と示すためのメンバーのアイデアだったという。

前回は、政治信条が近かった安倍元総理から全面的な支援を受けた。

その後も総裁選を見据えて勉強会を重ね、政策の準備も進めてきた。

立候補に向けて保守層を中心に推薦人を確保する働きかけを続けるものとみられている。
旧岸田派では、官房長官の林芳正(63)に期待する声が出ている。

官房長官に就任する前も外務大臣、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任してきた林。

党内からは次のような意見も聞かれる。
「若手に総理大臣が務まるかどうかは分からないが、林さんならすぐに任せることができる」
一方で、岸田総理が立候補を断念しただけに、党内の一部にはこうした声もある。
「旧岸田派は一回休みではないか。林さんはその次を目指せば良い」
林自身は「私自身の件を含め、総裁選挙についてのコメントは控えたい」と述べるにとどめているが、岸田にはすでに意欲を伝えており、みずからに近い議員と具体的な対応を協議している。

執行部からも立候補うかがう

党執行部の1人、幹事長を務める茂木敏充(68)も立候補に意欲をにじませている。

岸田が表明した8月14日の夜、東京・赤坂のステーキ店で麻生と会食。

総裁選への対応をめぐって意見を交わした。

茂木が率いた旧茂木派は政治団体としては解消を決めたものの、政策集団としての活動は継続しており40人あまりが所属している。

グループに所属する議員はこう話した。
「『また派閥で動いている』とみられたくはないが、まずはグループでしっかり支持を固めたい」
ともに岸田政権を支えてきた麻生との連携も模索しているとされるが、党内では、麻生は河野を推すのではないかという声も出ている。

外務大臣や経済産業大臣などの要職を歴任し、政策通としても知られる茂木。

立候補表明の時期を慎重に見極めようとしているとみられている。

“5度目の正直”なるか?

5回目の立候補に向けボルテージが上がっているのが、元幹事長の石破茂(67)だ。

岸田の表明からおよそ3時間後、訪問先の台湾で記者会見し、こう踏み込んだ。
「推薦人20人がそろえばぜひとも立候補したい」
当選12回にして4回総裁選に立候補した経験があり、高い知名度を誇る。

ただ、かつて総理大臣を目指して石破派を結成したものの、総裁選で敗れたあとに所属議員の脱退が相次ぐなどして事実上、派閥を解散した経緯もあり党内基盤は弱い。

このため20人の推薦人の確保が最初の壁となるが、8月19日、メドが立ったことを明らかにした。

立候補すれば党員投票で支持を集めると見込まれているが、「仲間づくり」が課題と言われ続けてきた石破が国会議員票をどこまで積み上げられるかが焦点の1つだ。

意欲を表明

官房長官や厚生労働大臣、党の総務会長などを歴任したベテランも動き始めた。加藤勝信(68)だ。

8月16日、都内で記者団にこう述べ、名乗りを挙げた。
「総裁選に向けて具体的に動いていきたい」
今後、推薦人の確保に向けて働きかけを始めるという加藤。

自身は旧茂木派に所属してきたが、派閥解消の動きを踏まえ、茂木とともに立候補しても問題はないとしている。

財務省出身で手堅さに定評のある加藤。

党内には「総理・総裁には安定感が必要だ」とする議員もおり、こうした議員に働きかけ、立候補に向けた環境を整えたい考えだ。

「世代交代」に期待も

党の信頼回復に向けては「刷新感」が必要だとして、世代交代を求める声が挙がっている。
先陣を切って立候補を表明したのが前経済安全保障担当大臣の小林鷹之(49)だ。

財務省出身で経済安全保障や知的財産戦略などの政策に明るく、永田町では「コバタカ」や「コバホーク」の愛称でも知られている。

中堅・若手が周囲に集い、公約づくりなどを進めている。

小林自身は講演などで「政治家である以上高みを目指して努力をする」として、総理大臣を目指す意思を示してきた。
会見ではみずからの名前の「鷹」という文字に触れ、党の刷新を強くアピールした。
「鷹は時折古い羽を新しい羽にかえる習性を持っている。自民党も時代に合わなくなった慣例という古い羽を勇気を持って脱ぎ捨てて新しい羽を生やす必要がある」
知名度が課題だと本人も認めており、会見ではYouTubeなどを通じた発信も強化する考えを示した。
元環境大臣の小泉進次郎(43)の動向にも注目が集まっている。
元総理大臣の小泉純一郎の次男で抜群の知名度があり、38歳と戦後3番目の若さで入閣。

その手腕を高く評価しているとされる前総理大臣の菅義偉が支援するのではないかという見方もある。

小泉自身は総裁選の対応を明らかにせず、目立たない形で衆参の議員と面会しているほか、みずからに近い議員と対応を協議していた。

そして20日、立候補の意欲を周辺に伝えた。
将来の総理・総裁候補と目されてきた小泉も勝負に出る見通しとなった。

“女性初の総理”目指す

前回立候補した野田聖子(63)の名前も挙がる。

野田は7月24日、東京都内のホテルで、前回の総裁選で支援を受けた議員を中心に会合を開いた。

早くから女性初の総理を目指すと公言してきた野田。

現在も近い議員と連絡を取り合い、立候補に向け推薦人の確保を働きかけている。

「派閥なき総裁選挙」どう展開?

9月12日告示、27日投開票の日程で行われる今回の総裁選。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で大半の派閥が解散を決めた中で行われ「派閥なき総裁選挙」とも言われる。

これまでは派閥単位で動くことも多かっただけに、今回は前例のない展開になることが予想される。

立候補を目指す議員は20人の推薦人をどう確保し、国会議員の支持を拡大するのか。

投票する側は、何を基準に1票を投じるのか。
いずれにせよ、議員と党員の判断がこれまで以上に問われる総裁選となることは間違いない。

自民党は誰を次のリーダーに選ぶのか。

※文中敬称略。
(ニュースウオッチ9などで放送)
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混戦模様「ポスト岸田」の行方は?

「岸田さんが出ない!」

自民党内に衝撃が走った。

岸田総理が総裁選挙への立候補を断念したことで、構図は一気に流動化。

「ポスト岸田」にはベテランから若手までさまざまな名前が挙がり、総裁選は混戦模様となっている。
(取材班)

突然の表明 舞台裏は

「自民党が変わることを示す最もわかりやすい最初の一歩は私が身を引くことだ」
8月14日午前11時半。

岸田は、自民党総裁選に出ない考えを明らかにした。

「政治家としての意地」ということばを繰り返し、ときおり悔しさもにじませた。
側近の木原幹事長代理
実は、この前日の13日から14日の朝にかけて、岸田は側近で党の幹事長代理を務める木原誠二らとひそかに総理大臣公邸で対応を協議していた。
「週が明ける20日には、総裁選の日程が決まる。広島、長崎の原爆の日の式典が終わり、外交日程にも区切りがつくこのタイミングしかない」
この場で、岸田は総裁選に立候補しない意向を伝え、記者会見に向けた準備を指示した。

思いとどまるよう説得する側近もいたが、岸田の意思は固かった。

総裁選に立候補しないという最終的な方針が決まった。

岸田の心中

「政治とカネの問題でトップがいつか責任を取らなければならない。引きずり下ろされるような状況には追い込まれたくない」
岸田は以前から周囲にそう漏らしていたという。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題を受けた党への逆風はことしに入ってからもやむことはなかった。

4月に行われた衆議院の3つの補欠選挙ではいずれも敗北。

党内からは「次の衆議院選挙は岸田総理では戦えない」との声も出ていた。
ある政府関係者は内閣支持率も低迷する中、岸田は通常国会閉会後の6月ごろから、
8月半ばに「立候補しない」と表明することを検討していたと明かした。
6月当時の岸田総理
一方、岸田はこの2か月ほどの間、全国各地で視察や車座対話を重ね、秋に策定を目指す経済対策に地方の中小企業への支援策を盛り込む方針などを打ち出してきた。

また、憲法改正をめぐって、自衛隊の明記に向けた論点整理を行うよう党内に指示を行った。

党内ではこうした動きを「総裁選に向けた準備だろう」と見る向きもあった。

最後まで立候補を模索していたのだろうか。

その疑問に対し、岸田に近い政府関係者は、こう解説する。
「実際は、身を引くにあたってみずからが進めてきた政策課題が誤った方向に進まないよう道筋を付けようとしたのではないか」
岸田はふだんからあまり感情を表に出さず、思いを内に秘めるタイプの政治家だ。

今回の決断も熟慮を重ね、最後まで本音を言わず結論を出したのだろう。

立候補しないことを表明した岸田。
翌15日、閣議に出席した閣僚にこう呼びかけた。
「総裁選挙ではわれこそはと積極的に手を挙げて真剣勝負の議論を戦わせてほしい。総裁選に名乗りを上げることを考えている方もいると思う。気兼ねなく、職務に支障のない範囲で堂々と論戦を行ってほしい」

現職閣僚から続々

現職閣僚から続々
岸田の呼びかけに呼応するかのように、閣僚からは総裁選への発言が相次いだ。
上川外相 8月15日
動きが急だったのは外務大臣の上川陽子(71)だ。

これまで記者会見で対応を聞かれても「一意専心、仕事をし続ける」と繰り返してきた上川。

8月15日の閣議のあと外務省に入る際、記者団の取材に応じ、立候補への意欲をにじませたのだ。
「何をすべきか熟慮をしたうえで決断をし、行動に移していく覚悟だ」
翌々日の17日には総理大臣公邸を訪れて岸田に意欲を伝え、複数の議員に電話で支援の要請を始めた。

旧岸田派の上川は、派閥はもう解消されているとして、幹部を務めたベテラン議員らを頼ることはしないという。

推薦人の確保が課題になるが、議員連盟での活動で親交のあった議員を中心に支援の働きかけを続けている。
河野デジタル相 8月15日
デジタル大臣の河野太郎(61)は、外務大臣や防衛大臣を務めてきたことに触れ、意欲を重ねて示した。
「いつかこの経験を生かせる日が来ればと思っている」
8月26日にも立候補を表明する方向で調整している。

麻生派に所属する河野は、8月9日、麻生と会食し、意欲を伝えていた。

この席ではみずからが掲げる政策についても説明したという。

河野は、前回・3年前の総裁選挙にも立候補し、決選投票で岸田に敗れた。

この時、麻生派は岸田と河野、2人を支持する対応をとった。

今回、河野は派閥の支援に期待を寄せるが、派閥内には河野以外を推す意見もあり、麻生の判断に注目が集まる。
齋藤経済産業相 8月15日
経済産業大臣の齋藤健(65)も会見で意欲を見せた。
「『総裁選に出るべきだ、あなたしかいない』という連絡が数多く寄せられた。そういった声を真剣に聞かないといけないのかなと思う」
こう述べ、立候補の要請が複数あることを明かした。

齋藤に立候補を求めているという議員は次のように語った。
「本人はまだ決めていないが、出る場合、党幹部も含めて一緒に応援できる仲間はいる」
法務大臣や経済産業大臣を歴任するなど政策に明るい齋藤への期待も高まっているが、無派閥で活動してきたこともあり、推薦人をどう確保するかが課題になる。
高市経済安保相 8月15日
前回の総裁選に立候補した経済安全保障担当大臣の高市早苗(63)も、意欲をにじませた。

「終戦の日」に東京・九段の靖国神社に参拝したあと、思いを語った。
「仲間たちと力を合わせて日本列島を強く豊かにし、次の世代に引き渡す使命を私たちは負っている」
取材に応じた際、高市の後ろには支援する議員の一部も並んだ。

「高市には仲間がいる」と示すためのメンバーのアイデアだったという。

前回は、政治信条が近かった安倍元総理から全面的な支援を受けた。

その後も総裁選を見据えて勉強会を重ね、政策の準備も進めてきた。

立候補に向けて保守層を中心に推薦人を確保する働きかけを続けるものとみられている。
林官房長官 8月15日
旧岸田派では、官房長官の林芳正(63)に期待する声が出ている。

官房長官に就任する前も外務大臣、防衛大臣、農林水産大臣、文部科学大臣などを歴任してきた林。

党内からは次のような意見も聞かれる。
「若手に総理大臣が務まるかどうかは分からないが、林さんならすぐに任せることができる」
一方で、岸田総理が立候補を断念しただけに、党内の一部にはこうした声もある。
「旧岸田派は一回休みではないか。林さんはその次を目指せば良い」
林自身は「私自身の件を含め、総裁選挙についてのコメントは控えたい」と述べるにとどめているが、岸田にはすでに意欲を伝えており、みずからに近い議員と具体的な対応を協議している。

執行部からも立候補うかがう

執行部からも立候補うかがう
茂木幹事長 8月14日
党執行部の1人、幹事長を務める茂木敏充(68)も立候補に意欲をにじませている。

岸田が表明した8月14日の夜、東京・赤坂のステーキ店で麻生と会食。

総裁選への対応をめぐって意見を交わした。

茂木が率いた旧茂木派は政治団体としては解消を決めたものの、政策集団としての活動は継続しており40人あまりが所属している。

グループに所属する議員はこう話した。
「『また派閥で動いている』とみられたくはないが、まずはグループでしっかり支持を固めたい」
麻生副総裁
ともに岸田政権を支えてきた麻生との連携も模索しているとされるが、党内では、麻生は河野を推すのではないかという声も出ている。

外務大臣や経済産業大臣などの要職を歴任し、政策通としても知られる茂木。

立候補表明の時期を慎重に見極めようとしているとみられている。

“5度目の正直”なるか?

“5度目の正直”なるか?
石破元幹事長 8月19日
5回目の立候補に向けボルテージが上がっているのが、元幹事長の石破茂(67)だ。

岸田の表明からおよそ3時間後、訪問先の台湾で記者会見し、こう踏み込んだ。
「推薦人20人がそろえばぜひとも立候補したい」
当選12回にして4回総裁選に立候補した経験があり、高い知名度を誇る。

ただ、かつて総理大臣を目指して石破派を結成したものの、総裁選で敗れたあとに所属議員の脱退が相次ぐなどして事実上、派閥を解散した経緯もあり党内基盤は弱い。

このため20人の推薦人の確保が最初の壁となるが、8月19日、メドが立ったことを明らかにした。

立候補すれば党員投票で支持を集めると見込まれているが、「仲間づくり」が課題と言われ続けてきた石破が国会議員票をどこまで積み上げられるかが焦点の1つだ。

意欲を表明

意欲を表明
加藤元官房長官 8月16日
官房長官や厚生労働大臣、党の総務会長などを歴任したベテランも動き始めた。加藤勝信(68)だ。

8月16日、都内で記者団にこう述べ、名乗りを挙げた。
「総裁選に向けて具体的に動いていきたい」
今後、推薦人の確保に向けて働きかけを始めるという加藤。

自身は旧茂木派に所属してきたが、派閥解消の動きを踏まえ、茂木とともに立候補しても問題はないとしている。

財務省出身で手堅さに定評のある加藤。

党内には「総理・総裁には安定感が必要だ」とする議員もおり、こうした議員に働きかけ、立候補に向けた環境を整えたい考えだ。

「世代交代」に期待も

党の信頼回復に向けては「刷新感」が必要だとして、世代交代を求める声が挙がっている。
小林前経済安保相 8月19日
先陣を切って立候補を表明したのが前経済安全保障担当大臣の小林鷹之(49)だ。

財務省出身で経済安全保障や知的財産戦略などの政策に明るく、永田町では「コバタカ」や「コバホーク」の愛称でも知られている。

中堅・若手が周囲に集い、公約づくりなどを進めている。

小林自身は講演などで「政治家である以上高みを目指して努力をする」として、総理大臣を目指す意思を示してきた。
会見ではみずからの名前の「鷹」という文字に触れ、党の刷新を強くアピールした。
「鷹は時折古い羽を新しい羽にかえる習性を持っている。自民党も時代に合わなくなった慣例という古い羽を勇気を持って脱ぎ捨てて新しい羽を生やす必要がある」
知名度が課題だと本人も認めており、会見ではYouTubeなどを通じた発信も強化する考えを示した。
小泉元環境相 8月19日
元環境大臣の小泉進次郎(43)の動向にも注目が集まっている。
元総理大臣の小泉純一郎の次男で抜群の知名度があり、38歳と戦後3番目の若さで入閣。

その手腕を高く評価しているとされる前総理大臣の菅義偉が支援するのではないかという見方もある。

小泉自身は総裁選の対応を明らかにせず、目立たない形で衆参の議員と面会しているほか、みずからに近い議員と対応を協議していた。

そして20日、立候補の意欲を周辺に伝えた。
将来の総理・総裁候補と目されてきた小泉も勝負に出る見通しとなった。

“女性初の総理”目指す

“女性初の総理”目指す
野田元総務会長 8月18日
前回立候補した野田聖子(63)の名前も挙がる。

野田は7月24日、東京都内のホテルで、前回の総裁選で支援を受けた議員を中心に会合を開いた。

早くから女性初の総理を目指すと公言してきた野田。

現在も近い議員と連絡を取り合い、立候補に向け推薦人の確保を働きかけている。

「派閥なき総裁選挙」どう展開?

9月12日告示、27日投開票の日程で行われる今回の総裁選。

派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で大半の派閥が解散を決めた中で行われ「派閥なき総裁選挙」とも言われる。

これまでは派閥単位で動くことも多かっただけに、今回は前例のない展開になることが予想される。

立候補を目指す議員は20人の推薦人をどう確保し、国会議員の支持を拡大するのか。

投票する側は、何を基準に1票を投じるのか。
いずれにせよ、議員と党員の判断がこれまで以上に問われる総裁選となることは間違いない。

自民党は誰を次のリーダーに選ぶのか。

※文中敬称略。
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