最近兄ちゃんが構ってくれない。
僕と一緒にお風呂に入ってくれなくなったり、一緒に寝てもくれなくなった。
もしかしたら嫌われたのかもしれない。
自分がなにかしてしまったのか考えれば考えるほど、心当たりがあった。
15歳というちょうど思春期を迎える時期の僕には反抗期が訪れ、兄に悪い態度をとってばかりだったのだ。
ついさっきだって、一緒に買い物に行くか兄に聞かれた時に無視してしまった。
本当は一緒に行きたかったし、そばを離れたくなかったのに。
大好きな兄に嫌われたかもしれないと思ったら急激に寂しくなった。
スマホのカメラロールを開き、スクロールして見ていくと兄の写真が出てくる。
サラサラの黒髪で、整った顔立ちの兄。それと反対に僕は少し天パの栗色の髪、兄とお揃いの髪型にしたかったのにサラサラじゃないから到底同じには見えない。
僕はずっとコンプレックスだったけど、兄はそんな僕の髪の毛を好きだと言ってくれた。だから今は僕も好き。
そんなことを考えていたら兄に会いたくなった。
今日こそは反抗的な態度を取ってしまうことを兄に謝ろう。
そう心に決め、僕はとりあえずつけて垂れ流していたテレビをぼーっと眺めていた。
しばらくするとガチャっとドアが開く音がする。大袈裟なくらいビクッと反応してしまう。
「ただいまー」
玄関から兄の声がすると、だんだんリビングまで足音が大きくなってくる。
「雨いたのか、ただいま」
兄は買い物袋を床に置き、手を洗いに行ってしまった。
そしてすぐ戻ってきた兄は夕飯の支度を始める。
呑気に鼻歌を歌ってる兄に、いつ謝ろうかと考えていると、不意に話しかけられた。
「雨、今日の学校どうだった?」
「別に、、」
またやってしまった。兄の顔を見ると少し寂しそうな表情をしていて、罪悪感で心が痛くなる。
スっとソファーから立ち上がると、階段を駆け上がり部屋にこもった。
しばらくすると、ご飯だぞーと兄の声が聞こえてくる。
階段を下りリビングへ向かう。
ご飯の支度をしてくれた兄に少しでもありがとうと伝えるため、自分の分と兄の分のコップにお茶を注いでテーブルの上に置いた。
「ありがとな」
そう言って笑いながら僕の頭を撫でてくれる。
僕は照れくさくて撫でてくれる兄の手から逃げ、目の前にある夕飯に手をつける。
「雨、いただきますは?」
そう言われて言ってないことに気づく。
顔を歪めながら小さい声でいただきますを言うと兄も満足そうにいただきますといって夕飯を食べ始めた。
謝るなら夕飯を食べてる今がチャンスだと思い、タイミングを見計らう。
なかなか言えずにもどかしい気分になっていると、兄からどうした?と声がかけられる。
いつ言おうか考えてるうちに、いつの間にか兄の顔をずっと見ていたようだ。
謝るなら今がチャンス、、だけどやっぱり無理。
「何も無い。」
兄は、そうか?と不思議そうな顔をしてご飯を食べ進める。
結局2人ともご飯を食べ終えてしまい、もうゆっくり話せるのはお風呂しかないことに気づくいた。
今日は一緒にお風呂に入って、謝る。
そう決めて、洗い物をしている兄を横目に1度リビングから部屋に戻った。
部屋に戻るとベットに潜り、小さい声でごめんなさいの練習をする。
いつも悪い態度とってごめんなさい、、いや、いつも嫌な思いさせてごめんなさいかな、、どう謝ろうか考えていたら、いつの間にか30分も経っていた。
そろそろ兄をお風呂に誘おう。そう思って部屋からリビングに戻る
リビングのドアの前で1度深呼吸をする。
お風呂に誘って謝る。たったそれだけだ。
意を決してリビングのドアを開けると、ソファーには濡れた髪の毛を拭きながらスマホをいじる兄がいた
兄は、既にお風呂から上がってきていたのだ。
頭の中がグチャグチャになる。
「なんで僕とお風呂に入ってくれないの!!」
我慢できずに口走ってしまう。
涙が崩壊したダムのように溢れてきて、びっくりするほど大きい声が出てしまった。
兄はびっくりした顔でこちらを見ていたが、僕はお構い無しに言葉を続ける。
「前は一緒にお風呂に入ってくれてたのに!一緒に寝てくれてたのに!」
服の袖で涙を拭うが、全然涙は止まらずにヒック、ヒックとしゃくり上げる。
悲しくて、寂しくて、震えが止まらない。
突然目の前の光が遮断されたかと思うと、ギュッと何かが巻きついた。
急なことに落ち着こうと深呼吸をすると大好きな兄の匂いがする。
気づいたら兄に抱きしめられていた。
「雨、ごめんね」
なんで、、
謝らなきゃいけないのは僕の方なのに兄が謝ってくる。
「兄ちゃんなんか、僕のこと嫌いなんでしょ」
ちがう、言いたいのはそういう事じゃない。
たった一言、ごめんなさいって言うだけなのにどうしても言えない。
それが悔しくて涙が止まらなくて、必死に涙を止めようとする。
「俺は雨のこと大好きだよ。だけど、雨が最近俺の事避けるから。どうしていいか分からなくて。寂しかったよな。ごめんな」
兄は僕の頭を撫でながら優しい声で何度もごめんと言う。
僕は兄ちゃんを抱き締め返して、小さい子供のように泣きじゃくった。
兄はいつも僕を甘えさせてくれ、大切にしてくれる。
僕は兄ちゃんが大好きで大好きで仕方なくて、だからいつも不安になってしまう。
しばらくそのままでいたが、兄が僕を抱っこしてソファーに移動した。
身長が180を超えた兄は、160前後の僕をいつもひょいっと軽く持ち上げる。
そして、僕をソファーに下ろして隣に座った。
それが何故か寂しくて、僕は兄と対面する形で膝の上に座る。少し恥ずかしいけど、すごく落ち着いて涙が徐々に止まってきた。
兄は何も言わずにぼくの背中をトントンと優しく叩く。
深呼吸をして意を決し、頑張って声を出した。
「兄ちゃん、嫌なこといっぱい言って、ごめんなさい。兄ちゃんのこと大好きだから、嫌いにならないで」
震えた声で、途切れ途切れになりながらもその言葉を兄に伝える。やっと言えたと思ったらまた涙が溢れた。
僕のたどたどしくて聞づらい言葉を兄は最後までちゃんと聞いてくれ、頭を撫でてくれる。
「嫌いになんてならないよ。雨は今までもこれからも、俺のたった一人の大切な家族なんだから」
僕はずっと兄に嫌われないか、捨てられないかが不安で仕方なかった。
だけど、その言葉と、愛しいものを見るような、優しいような寂しいような目で僕を見る兄の表情で今までの不安が嘘のように溶けた。
また涙が溢れはじめた僕を見て、兄は泣き虫だなって笑う。
「お前が離れたいって言っても一生離してやんねぇよ。」
兄は冗談っぽくそう言って僕の髪の毛を優しく触った。
「俺湯船に浸かりたい気分になってきたなー、
雨、一緒にお風呂に入ろっか」
頭を撫でながら兄は僕を抱きしめてくれる。
もう不安になることは無くなったら、少し体が熱くなってきた気がし、少し腕を捲る。
ぼーっとしてると兄に話しかけられ、おでこに手を当てられた。
「なんか雨にしては熱いな。お熱出たかな」
そう言って僕をソファーの上に降ろし、すぐその場を離れ体温計を取りに行く。
急なことに混乱し、自分のおでこを触ってみると少しだけ熱い気がしなくもない。
「お熱測ろっかな」
そう言われ戻ってきた兄の手元を見ると、体温計にはビニールのカバーと潤滑液が付けられていた。
僕は体温が少し低く分かりづらいので、おしりから測ることがある。
「そのままごろーんしよっか」
そう言われ半強制的に体を倒され、ズボンとパンツを剥ぎ取られた。
赤ちゃんがオムツ替えをする体制にさせられ、これから来る気持ち悪さに身構える
「ちょっと気持ち悪いよ、あーって声出して」
医者をしている兄は不安でモゾモゾ動く僕を手際よく抑えながらもおしりを開いてくる。
「や、やっぱり測らない、!」
恥ずかしさとこれかるくる気持ち悪さに、急に恐怖心が湧いてきて身じろいだ。
「大丈夫、すぐ終わらせるからね。お口あーんして少し息吐いてねー」
聞こえてくる兄の優しい声に、恐怖心からか唐突に甘えたくなり涙が出てくる。
「ん、ごめんねー。雨これ苦手だもんね」
体を抑え直され、ゆっくりと体温計が入ってきた。
少しビクッとしたけど、挿入後に兄が太ももの辺りを優しくとんとんしてくれ安心する。
「上手じゃん、泣かない泣かない」
手を繋ぐために足をとんとんしてくれてる手の親指を握ると、ぎゅっと繋いでくれた。
ピピッと電子音がなり、終わったよーとゆっくり体温計が抜かれ、急いでズボンとパンツを直す。
兄に抱きつきに行くと、無造作に履かれたズボンとパンツを笑いながら直してくれ、抱っこしてくれた。
「すこーしお熱あるけど大丈夫だよ、ちょっと様子見ようね」
そう言いながら兄の部屋へ向かい、僕の事をベットに下ろす。
僕のおでこを触り、兄は少し顔を顰めた。
「念の為お風呂はおやすみ。また明日様子みて一緒に入ろ。今日は歯磨きして寝よー。」
また兄のベットで寝れる事が嬉しく、涙が溢れてくる。
歯磨きまで兄がしてくれ、赤ちゃんになった気分だがこれもこれで悪くはない気がする。
そんなこんなで、僕の数ヶ月間の反抗期は終わった。