崩壊する「ナラティブ」
あまり耳慣れない言葉だが、「ナラティブ」というビジネス用語がある。簡単にいうと、「うちのビジネスはこういう優位性があって、他社はそれを真似できない」というストーリー仕立ての説明をナラティブという。投資家が投資の意思決定を行う上でもナラティブは重要で、それ次第で同じ業績でも時価総額は何倍も変わってくる。
その反面、ナラティブの崩壊が発生すると、高い企業価値の前提に狂いが生じる。市場参加者が「実はあまり儲からない」、「儲かるとしても再現性がない」ことに気づくと、株価は大きく下がるのだ。
ではVTuber業界の「ナラティブ」とは何か。
まずはエニーカラーやカバーが上場したての頃に遡ろう。当時、VTuber事務所は「普通の芸能事務所と比べて優れている」根拠として、
(1)「VTuber事務所は、キャラクターの”ガワ”、つまりイラストの権利を押さえているため、Youtuberや芸能事務所と違って、独立されたり引き抜きされたりするリスクが乏しい」
(2)「キャラクターは老化しないため、一般的なアイドルよりも長く活動できる」
といったナラティブが語られていた。
実際のところ、両社が上場してしばらくはそのナラティブが活きていた。しかし、近年になって、エニーカラーの運営するにじさんじや、カバーが運営するホロライブから引き抜きや独立、活動終了の動きが活発になった点に目を向けなければならない。