東電なぜ原電に前払い(5)
原発事故を起こした東京電力は被害者へ賠償を行うため、国が国債を発行し、必要な資金を立て替えてもらっている。東電はその資金の国への返済(特別負担金)がゼロでも、原発が全基停止し発電ゼロの日本原子力発電に毎年、多額の「資金的協力」を行っている。果たして、それで国民の理解が得られるのだろうか。
2011年の東電福島第1原発事故を受け、政府は大手電力会社などと原子力損害賠償・廃炉等支援機構を設立した。被害者への賠償のため、国が国債を発行し、原賠機構が交付金として東電に必要な資金を提供している。
東電が原賠機構から受け取った交付金は、東電を含む大手電力会社が一般負担金、さらに東電が特別負担金として、毎年、原賠機構を通じて国に返済することになっている。
特別負担金はゼロでも
東電は22年度、原賠機構から5074億円の交付金を受けた。これは決算上、東電の特別利益となる。これに対して、東電が賠償などに支払った5295億円は特別損失となり、経常損益と合わせ東電は1236億円の最終赤字となった。
東電が22年度に原賠機構を通じて国に返済した一般負担金は675億円、特別負担金はゼロだった。特別負担金は17年度から21年度まで400億円から700億円で推移していたが、22年度は最終赤字の影響でゼロとなった。
しかし、東電は最終赤字に転落し、特別負担金がゼロとなった22年度も、原電に550億円の基本料金を支払っている。これとは別に東電は原電の東海第2原発の安全対策費として、22年度は約540億円を支払っている。これは「将来の電力料金の前払い」という名目だ。前払い金の合計は21~23年度で約1400億円となる。
つまり東電は国が国債で立て替えた賠償金の返済(特別負担金)よりも、原電への支払いを優先させていることになる。
東電「意見する立場にない」
どうしてなのか。発電ゼロの原電へ資金的協力を行うよりも、特別負担金(国への借金返済)を優先すべきではないのか。
東電に尋ねると、「特別負担金の額は原子力損害賠償・廃炉等支援機構法で、当社の収支の状況に照らし、事業の円滑な運営の確保に支障が生じない限度において、できるだけ…
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