聖公会系の聖路加(せいるか)国際病院(東京都中央区)でチャプレンをしていた男性牧師が、2017年に当時難病治療のため患者として通っていた女性に対し、病院施設内で性加害行為を行った事件で、牧師が所属していた日本スピリチュアルケア学会(島薗進理事長)は11日、牧師を除名処分としたことを発表した。
除名となったのは、日本基督教団の無任所教師で、当時横浜市内の単立教会で副牧師を務めていた柴田実氏。事件を巡っては昨年12月、柴田氏の性加害行為を認める判決が出され、その後確定していた。柴田氏を巡っては、日本基督教団も戒規に向けた調査を行っているが、判決確定後に柴田氏が所属していた団体が正式な処分を下すのはこれが初めて。
日本スピリチュアルケア学会は判決確定後の2月、被害女性の代理人弁護士同席の下、オンラインによる面談を実施。島薗理事長を含む学会関係者数人が出席し、女性に謝罪していた。
学会の懲戒は、「書面または口頭による厳重注意」「会員としての活動の一部または全部の停止」「除名」の3種で、除名は最も重い。
学会の懲戒委員会は、既に4月には除名とする方針を決めていたが、除名の場合は総会による決議が必要なことなどから、正式な決定に時間がかかっていた。発表によると、2日に臨時総会が開かれ決議されたことで正式に決まった。
この他、柴田氏は学会が認定する「指導スピリチュアルケア師」の資格を有していたが、資格に関しては既に4月に開催した臨時理事会で取り消しているという。
柴田氏のもう一つの所属団体である日本基督教団は、神奈川教区が判決確定後、柴田氏と女性それぞれに1回ずつ対面で聞き取りを実施。4月には教区の常置委員会が、柴田氏に対する戒規の適用申請を決めた。現在は、神奈川教区からの申請に基づき、教団の教師委員会が調査委員会を立ち上げ調査を行っている。
事件を巡っては、柴田氏の書類送検が報じられた後、「A牧師(柴田氏)を支えて守る会」が組織され、キリスト教系の新聞2紙に声明が掲載された。声明は事件について、「真面目に患者に寄り添ってきたチャプレンが無実の罪を着せられたもの」と主張。また、医療・福祉現場などで患者や利用者が一方的な要求や愛憎などの強い感情をぶつける「援助者への暴力」という文脈の出来事だなどとし、まるで女性を加害者のように扱っていたため、女性にとっては重大な2次被害となっていた。
そのため女性は6月、神奈川教区に対し、「守る会」の活動に関わりがあったとして、同教区に所属する牧師2人についても戒規の適用を求める申し立てを行った。
また、「守る会」には日本スピリチュアルケア学会の関係者も関わっていたとみられ、学会は女性に対して2月の面談時、柴田氏に対する処分とは別に調査を行うことを約束している。