今回は、日本の酒造メーカーとして名を馳せているキリンビール傘下のキリンディスティラリー のウイスキーを振り返っていきます。

合弁から始まった歴史

キリンディスティラリーは、1972年にキリンビールと、カナダのシーグラム社、イギリスのシーバスブラザーズ社との合弁として「キリンシーグラム」の名で設立されました。

翌年に富士御殿場蒸溜所が完成し稼働を開始しましたが、原酒が熟成されるまでの間、シーグラム社とシーバスブラザーズ社が持つ原酒を輸入してブレンドして販売し始めました。

その後御殿場のモルト、グレーンが熟成されてそれらが加わったブレンドへと変化していきましたが、100%同蒸溜所の原酒で構成されたボトルはしばらく一般には販売されませんでした。

シーグラム社とシーバスブラザーズ社は、フランスのペルノ・リカール社に買収され、キリンシーグラムの合弁相手となりましたが、2002年にキリンビールがペルノ・リカール社所有の株を買い取って合弁を解消、社名もキリンディスティラリーと改められました。

では2024年9月時点のラインナップを振り返っていきます。

オーシャンラッキーゴールド

現在はキリンビールの傘下にある酒造メーカー、メルシャンが三楽オーシャン時代に発売した低価格ウイスキーです。
ウイスキー部門をキリンディスティラリーに統合してからは同社が製造、販売を行っています。
現在では2700mLと4000mLのペットボトルのみで販売されています。

キリンウイスキー 陸

最も低価格に入るのが「陸」です。

御殿場のモルト、グレーンを主体に海外の原酒をブレンドしたものになります。
アルコール度数が50度と高く、加水をしても香りや味があまり薄れず、一方でアルコールの刺激や辛みがストレートでも余り感じられないなど、濃厚でまろやかに仕上がっています。

ロバートブラウン

キリンシーグラム時代に最初に発売されたウイスキーで、発売から50年続くロングセラーになります。

当初は海外から輸入した原酒のみを使っていましたが、当時はスピリッツやアルコールを混ぜたウイスキーが大半を占める中で、モルトとグレーンだけで構成されたロバートブラウンは、原酒のみを謳い文句に宣伝攻勢を仕掛けていました。

現在は御殿場のモルト、グレーンを主体にしたブレンドに切り替わっていて、香りとしてバーボンのようなエステリーさを感じるブレンドになっています。

キリンウイスキー 富士山麓

キリンディスティラリーと社名を変更してから最初に登場したブランドです。
当初は「樽熟 50°」「樽熟原酒 50°」と、低価格でありながら濃厚なウイスキーを売りにしていましたが、現在は中価格帯として「シグニチャーブレンド」をリリースしています。

様々な原酒の香りや味わいがベストな状態になる熟成状態、マチュレーションピークにあたる時期の原酒を厳選し、ブレンドを行っています。

ストレートではアルコール感が強めであるものの、ロックや加水によってまろやかさが出て飲みやすさが出てきます。

キリンジャパニーズウイスキー 富士

最後に紹介するのが、「富士」になります。
キリンのウイスキーとしては、このブランドのラインナップのみが、ジャパニーズウイスキーの基準に準拠したものになります。
つまりは御殿場の原酒だけで構成されています。

ラインナップとしては、シングルブレンデッド、シングルグレーン、シングルモルトになります。
その名の通り、シングルブレンデッドはモルトとグレーン、シングルグレーンはグレーンのみ、シングルモルトはモルトのみの構成です。





<h2>まとめ キリンは比較的早くからウイスキーの製造、販売を行っていたものの、2000年代後半のハイボールブームなどにはなかなか乗らず、消極的な印象がありました。

本格的な動きがあったのは2010年代後半からで、2020年代には待望の御殿場モルト、グレーンのみの「富士」が出てきて、本気を出してきたように思えます。

竹鶴政孝のエッセンスが残るサントリーとニッカとは異なり、独自路線を進むキリンのウイスキーは、もっと注目されてもいいでしょう。