第9話 妻 その2
ラウラの祖母、ルーナが亡くなって葬儀が終わって3日の間、薬屋は閉まっていた。
ティノはその間ラウラの姿を見ることがなかった。
今日も薬屋は閉まったままで、ラウラを見た近所の人はいなかった。
ティノはその事が何故か無性に気になり、ラウラに会いに行った。
“コンッ!”“コンッ!”
「ラウラ! 居るかい?」
ティノはノックをして呼びかける。
しかし、何の返事も無い。
ティノは仕方なく帰ろうとしたが、嫌な予感がしてまた何故か足が止まった。
「ラウラ! 居るんだろ? 開けるぞ!?」
“ドガッ!”
ティノは閉まっていた扉を壊して開けた。
「ラウラ!!」
開けた扉の先にはラウラが倒れていた。
「ラウラ! しっかりしろ!」
ティノはラウラの容態を確認する。
どうやらラウラは衰弱しているが命に別状無いようだ。
ラウラはルーナが亡くなった悲しみから、何も食べていないようだった。
ティノはラウラにミルクで溶かしたパンを食べさせ、ベッドに寝かせた。
ティノはルーナと話した事を思い出していた。
『もしもの時には、ラウラの事を頼むよ』
あの時ルーナがどんな気持ちで言ったのかは分からないが、亡くなった今思うと、この時の為だと思った。
そしてティノは、
「ラウラ! 俺が君の家族になるよ。だから安心してお休み」
そう言って寝ているラウラの頭を撫でて壊した扉を直しに行った。
ティノが一緒に暮らしだし、ラウラの体調は少しずつ良くなっていった。
そして、ラウラの体調が完全に回復したのを待ってティノとラウラは結婚式を挙げた。
身内がいない為、たった2人だけの結婚式だったが、ラウラはとても幸せそうな笑顔だった。
ティノは心のどこかで少し思う部分があった。
自分は不老、ラウラにその事をいつか話さなくてはいけない。
そして、いつか自分とは違い年老いていくラウラを、看取ることも覚悟しなければならない。
「ティノ! 私とても幸せです」
教会の窓から照らす光に包まれて笑顔のラウラを見た瞬間、ティノは全ての悩みが吹き飛んだ。
「ラウラ! 幸せにするよ。いつも笑顔で俺のそばにいてくれ」
「ハイ!」
不老の事など大した事ではない。
今目の前で輝く笑顔を大切にしたい。
その思いが溢れ、ティノも幸せの気持ちで1杯になった。
ラウラが、ティノの生まれ育った所を見てみたいと言ったので、ティノとラウラはドキの町を出て、ダイトウ村に向かうことにした。
それから半年後、ダイトウ村へ向かう途中のジソクの町で、ラウラが身ごもったのが分かった為、その町で2人は過ごし、さらに8ヶ月後、カルロは生まれた。