第7話 実家
トウダイ村に着いたティノ達は、昔村長が住んでいた家へ挨拶に向かった。
“コン”“コン”
「初めまして、私は旅の者ですが、村長さんのお宅はこちらでしょうか?」
昔村長が住んでいた家の扉をノックし、おそらく、ティノが住んでいた頃のこの村の人々は、全員世代が入れ替わっていて、自分を知っている者がいるとは思えない為、初対面の挨拶をすることにした。
「はいよ! いらっしゃい、こんな田舎に旅の方とは珍しいのぉ」
「こんにちは、ティノと申します。この村に先祖の墓があると聞き、息子とお参りに来ました」
先祖の墓と言っても、ティノが生まれてすぐ亡くなった母と、12才の時亡くなった父の遺骨が埋められた墓の事である。
「それと、もしよろしければ妻の遺骨を、先祖の墓に埋葬させたいと思いやって来ました」
そう、この村に来たのにはこちらが最大の理由である。
「ほぉ、それはお辛い事で……、ご先祖のお墓の場所はご存じかな?」
「はい。父に詳しく聞いていたので大丈夫です」
確かに墓の場所は父に聞いていたので、あながち嘘では無いと思いつつ、このように話した。
「じゃったら案内は必要ないかの? 村人には伝えて置こう。何日ぐらい居られる予定じゃ?」
「ありがとうございます。2、3日位を予定しています」
「左様か、この村には宿がないゆえ、空き家を使ってもらえるかのぉ?」
「旅慣れてますので、雨風しのげればどこでも構いません」
「では、そちらへ案内しよう」
「お願い致します」
村長に空き家へ案内してもらい、ティノ達はこの村に2、3日滞在する事にした。
しかも、案内された空き家はティノが昔住んでいた家だった。
昔ティノが住んでいた頃に比べると、古くなり傷んだ箇所があるが、手入れされていたのか、なんとか住めそうだ。
「懐かしいな。カルロ、2、3日ここに住むからな」
「うん。分かった」
ティノと息子のカルロは、家の掃除を始めた。
トウダイ村の実家に帰ったティノは、息子のカルロと家を掃除し、昼食を食べた後、墓参りに向かった。
村にある小さな教会に向かい、神父を連れてティノの両親の墓に向かった。
村に住む人達の家の墓から少し離れた場所にある小振りの墓が両親の墓である。
村の人達の寄付により、神父によって手入れされていたのか、それほど荒れていなかった。
妻の遺骨をティノの両親の墓に埋葬し、祈りを捧げた。
「そのお墓の御方は元冒険者で、この村に突如現れたB級魔物を退治して下さり、村の人達は感謝し、この村に住んで下さるようにお願いした御方との話です」
ティノは、この話の事はもちろん知っている。
しかし、父は村の人達に頼まれたのは本当だが、村娘の母に一目惚れし、口説くために村人の頼みを受けたのが真相だ。
「すいません。墓石を魔法で直していいですか?」
周りは手入れされていたのでいいのだが、墓石は少しかけたり、書かれていた文字も薄くなっている。
その為、ティノは直して置こうと思い神父に尋ねた。
「土魔法の使い手でしたか? どうぞ直して差し上げて下さい」
「ありがとうございます」
“パー!”
神父の許可を得たので、ティノは土魔法で墓石を新しく直した。
両親と妻の名前、そして亡くなった日と年齢が掘られた綺麗な墓石になった。
妻の遺骨をティノの両親の墓に埋葬し、祈りを捧げた。
先に神父に帰ってもらい、しばらく息子のカルロと2人で墓の前にいた。
「カルロ、このお墓はお前のご先祖と母さんが眠るお墓だ。これからは毎年お参りに来ような?」
ティノは息子のカルロにも自分の不老のスキルを教えていない。
その方が自分にとっても、カルロにとってもリスクが少ないと思った為である。
「うん。毎年母ちゃんに会いに来る」
「ここは長閑で、空気が美味しいから母さんも安らかに眠れるだろう」
長いお参りを終え、2人は家に帰って行った。