第2話 出発
25歳の誕生日に不老のスキルを得たらしいティノだったが、5年たった今もそれまでと同じように普通に暮らしていた。
いつものように、早朝から畑の手入れをして食事は畑で取れた野菜中心、夜は早くに就寝する生活を続けていた。
この国では9才から12才までが初等部、13才から16才が高等部となっている。
初等部しか出ていないティノは学力は低いが頭は悪くない。
その為、不老の能力を得たティノは、この能力のメリット、デメリットを自分なりに計算していた。
まずメリットとして、ティノ自身初等部しか出ていない事に引け目を感じている。
元々は本が好きなティノは勉強は嫌いではなかったのだが、父の死により高等部への進学を断念した事がずっと心に残っていた。
不老の能力を得た事で独学とは言え勉強する事が出来、好きな本が読める事がとても嬉しかった。
しかし、デメリットとして、この能力が他人に知られれば、この能力を利用しようとする国や組織に拘束されかねない。
特に奴隷にでもされたら最悪な事になる。
「そろそろここに居続ける訳にはいかないかな……」
あれから5年が経った今、最近気付いたのだが村の同年代の顔にはシワが増えてきている。
元々少し童顔気味のティノだが、そろそろ村の人達に違和感を持たれる可能性がある。
「そろそろここを離れて旅に出るのもいいかもな……」
もう少し都会に出て、今までこつこつ貯めたお金で本を買ったり、世間を見てまわろうと思っていた。
「父さん、俺ここから出て行くよ」
ティノは父の形見の短刀にそう言って必要な荷物を揃え始めた。
2日後、村長に旅に出ることと、家は好きにして構わないと告げてティノは村を出ていった。
ここからティノの長い浮浪の旅が始まった。
ティノは、トウダイ村から西にあるナイホソ町に向かうことにした。
トウダイ村の南にはツカチとヤタの村があり、そしてナイホソの町が西にある。
トウダイ村から近場で、安全な道のりで都会の為、当然の選択である。
「あっ!」
ティノの前にスライムが現れた。
安全とは言え、この地域にも魔物は存在する。
特にスライムはどこにでも生存していて、村にいた時も月に2、3回現れたらしい。
らしいというのは、他の村人がすぐに退治した為、ティノは見ることはなかった。
初等部の学校の授業で習った為、目の前の魔物がスライムだと言うことはティノでも分かる。
「仕方ない、父さん使わせて貰うよ!」
そう言って父の形見の短刀を取り出した。
「ハッ!」
“ズバッ!”
ティノは短刀でスライムを倒した。
“コロンッ”
スライムを倒すとスライムの核が落ちた。
「よしっ、町に着いたら売ろう」
核を拾ってティノはまた町に向かって歩き出した。