少量でも免疫長持ち、「自己増殖型」コロナワクチン 治験結果を公表

瀬川茂子
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 投与後に体内で成分が増える「自己増殖型(レプリコン)」と呼ばれる新しいタイプの新型コロナウイルスワクチンの治験結果を、バイオ企業のVLPセラピューティクス・ジャパンなどのグループが米専門誌に16日発表した。従来型のmRNAワクチンより、少量の成分で効果が長続きする特徴があるという。独自技術による国産ワクチンの開発につながるかもしれない。

 自己増殖型は、ファイザーやモデルナが開発したmRNAワクチンに工夫を加えた「次世代型」だ。

 従来のmRNAワクチンは、新型コロナウイルスが感染する際に使う「スパイクたんぱく質」の遺伝情報を投与し、体内で起きる免疫反応によってこのたんぱく質に対応する「抗体」を作らせて、本物のウイルスの侵入に備えられるようにする。

 自己増殖型では、mRNAをコピーして増やす「増殖装置」の設計図も成分に組み込むことで、増殖したmRNAによってたんぱく質を作り、免疫反応を持続的に起こす。

 昨年から国内で始まった治験では、過去にファイザーのmRNAワクチンを2回接種した92人を対象に、自己増殖型を追加接種してもらい、安全性や抗体のできかたを調べた。

 その結果、10分の1~100分の1の量のmRNAで、従来のワクチンと同程度の抗体を作ることを確認した。従来型に比べて、抗体の減り方が抑えられていた。半年後も抗体が維持されることで、免疫が長く続くことを示した。

 スパイクたんぱく質のうち、必要な抗体を効率よく作らせる部分のみを使い、できたたんぱく質は細胞にくっつくようにするなどさまざまな工夫をした。その結果、中国で最初に報告された新型コロナウイルスだけでなく、変異ウイルスのデルタ株、オミクロン株に対する効果も確認したという。副反応は従来のmRNAワクチンと同じ程度だった。

 このワクチンは使用するmRNAが少量ですむため、新たなパンデミックが起きた場合、国産ワクチンを短期間に大量供給できる可能性があるという。同社はさらに改良したタイプの臨床試験も進めており、2024年に自己増殖型ワクチンの実用化をめざしている。

 VLPセラピューティクス・ジャパンの赤畑渉社長は「いろいろと工夫して、日本発の新しい技術を開発できた。レプリコン基盤技術を、今後の追加接種に使えるものにしていきたい」と話している。

 論文は、米専門誌(https://doi.org/10.1016/j.xcrm.2023.101134別ウインドウで開きます)に発表した。(瀬川茂子)

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この記事を書いた人
瀬川茂子
科学みらい部|大阪駐在
専門・関心分野
生命科学、災害、科学全般