こんにちは、ぽにこです。
情報公開請求について勉強したことや実体験を共有して、制度を育てよう🌱会、審査請求シリーズ第四弾です。
今回は、情報公開請求をした文書について、
- 開示されるはずだった文書の一部しか開示されていない
- 誤った内容の文書が開示された
ケースについてです。
開示請求後に届いた決定通知書には、開示される文書の名称が記載されますが、そこにも誤った内容が記載されています。
いやいや、ちょっと待って、他にもあるでしょ!
てか、これ、請求した文書と違うんだけど!
ってケースです。
いや〜、いろんなケースがあるよね〜
ありすぎ〜。
請求した文書が決定通知にない?
開示請求をすると、およそ2週間後*1に「開示決定(部分開示・不開示等)通知書」が郵送で届きます。
決定通知書には、「開示請求に係る公文書の名称」や「公文書の件名」などの記載欄があります。
開示や部分開示が決定された文書は、この「開示請求に係る公文書の名称」欄に、決定された文書名が記載されます。
この時点で、何という名称の文書が開示(部分開示)されるのかは判明します。
この時に、明らかに違うと認識できるような場合もあれば、到着した文書の内容を見てみないとなんとも言えないものもあります。
私は開示された資料を見ていて気づくパターンです。
来るはず(と思っている)資料がなく、決定通知書を見返してみると、記載すらありません。決定通知書には公開する文書名を記載するので、そりゃそうです。
良い子のみなさんは、ちゃんと確認しましょう!
どの口が言う〜
だからと言って、そこで気がつかなかったとしても問題はなく、こちらの落ち度にはなりませんので、特に気にしてません←
念のため電話で問い合わせてみると
あれ?と思ったら、一応問い合わせをしてます。
もしかしたら、こちらに思い至らなかった落ち度があるかもしれませんからね。
もちろん、請求した内容も再確認済みです。
「●●について請求したんですが、その資料の一部しか開示されていないようなんですが、どういうことかなぁと思って電話しましたぁ。」
「●年度の資料を請求したつもりなんですが、違う年度の資料が開示されているんですよねぇ。何か手続き間違えてしまいましたかね〜?」
だけどだいたい、「その文書はそもそも作成されておりません」とか「改めて請求し直してください」とか返ってきます・・。
なので、こちらに特別落ち度はなさそうだな〜と思ったら、
「そうですか〜。では審査請求出しますので、そちらで手続きお願いしま〜す。」
ってことにします。
そうしたらですね、ないと言ってた資料や、再度請求してくれって言ってた資料が出てくるんですよ。
なんでやねーん
なんでやねーん
今のところ、私の経験したこういったケースでは、差し替えの依頼をされて、それに応じれば決定通知書そのものから差し替え、追加交付が行われます。
急転スピード公開!
申請し直しでも審査請求でも早くても1ヶ月はかかるのにね〜。
これは正規の手続きではなく、イレギュラーな扱いです。まぁなんとでもなるんでしょう。
だから、どこの自治体も同じだとは言えませんし、条例は自治体ごとに定めるため、その取り扱いについてもその自治体で定めたことを元に運用することが筋です。
でも、今回のような「あるはずの文書の一部しか開示されていない」とか、「そもそも開示する文書を間違っている」ケースは、もちろん審査請求することが妥当な案件なので、ちゃっちゃと審査請求出しちゃいましょう。
この時は私も早く情報が欲しかったのと、別な思惑もあって了承したため、結果、審査請求は出さずに終わっています。
わ、駆け引き?
正当なコミュニケーション
不作為も審査請求の対象
ということで、提出することはなかった審査請求にはなりますが、ここに置いて成仏させようと思います。
出す気満々だったやん・・
今回のケースは、本来、開示等の決定がなされるべき文書に対して
- 一部のみ開示決定=他の文書について決定処分がなされていない
- 別の文書に開示決定=本来の文書に決定処分がなされていない
という点から「不作為」が近いかなぁと思い、「不作為」の前提で審査請求書を作成しています。
不作為っちゅーか、ただのミス?怠慢?
でも敢えて一部だけ公開した可能性もあるよね
審査請求をするにあたっては、それが不作為であるかどうかを請求人が確定する必要もないのですが、文書作成上の都合です。
第三条 法令に基づき行政庁に対して処分についての申請をした者は、当該申請から相当の期間が経過したにもかかわらず、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないことをいう。以下同じ。)がある場合には、次条の定めるところにより、当該不作為についての審査請求をすることができる。
と、行政庁の不作為とは、「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」とし、不作為についても審査請求を認めています。
条文中にある、「処分についての申請」とは、行政手続法で、
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(略)
三 申請 法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を付与する処分(以下「許認可等」という。)を求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされているものをいう。
とし、開示請求はこの申請に含まれるとされています。
(審査会への諮問)
第十九条 開示決定等又は開示請求に係る不作為について審査請求があったときは、当該審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、情報公開・個人情報保護審査会(審査請求に対する裁決をすべき行政機関の長が会計検査院の長である場合にあっては、別に法律で定める審査会)に諮問しなければならない。
と、不作為について審査請求があった場合、他の開示決定等と同じく、審査会への諮問または条件により審査庁での裁決をすることとしています。
要は情報公開請求も、不作為について審査請求が認められてるってことだね。
請求人が「これは不作為である!」と明確に示せなくてもいいしね。
だって素人だもの〜
市民最強!!
審査請求書には、
- 審査請求人の氏名又は名称及び住所又は居所
- 審査請求に係る処分の内容
- 審査請求に係る処分があったことを知った年月日
- 審査請求の趣旨及び理由
- 処分庁の教示の有無及びその内容
- 審査請求の年月日
を記載します。
本記事では、そのうちの「審査請求の趣旨及び理由」について書いています。
その他の項目については、審査請求シリーズ〜審査請求書の書き方 - ぽにろぐに記載しています。
請求の趣旨
まず、請求の趣旨なんですが、通常、開示・非開示について簡潔に主張を記載するところですが、不作為についての審査請求になるため、
- 令和●年●月●日に開示請求の申請をしたもののうち一部について、期限内に決定に関する処分がなされていません。
- 上記未処分の件につき、早急な対処を求めます。
と記載しました。
今回の明らかに謝りと指摘できるケースだと、そのまま事実を書いてもいいかもしれません。
- 令和●年●月●日に開示請求の申請をしたものにつき、異なる年度で開示決定をしていることは処分庁の誤りであり、請求に対して正確に処分がなされていません。
- 上記未処分の件につき、正当な年度での開示決定を求めます。
請求理由
請求理由には、まず、不作為であるとする前提、つまり実施機関の作為義務(しなければならないこと)を記載します。
条例ではこう定められてるよね?でもやってないよね?って展開するイメージ。
●●市情報公開条例第●条により、非公開情報を除き、実施機関に当該公開請求に係る公文書を公開する義務を規定しています。
同条例第●条で実施機関に、公開請求に対する決定をし、公開請求者に対し、その旨及び公開の実施に関し規則で定める事項を書面で通知すること、第●条で、その通知は公開請求があった日の翌日から起算して14日以内にしなければならないとしています。
また、第●条第●項により、公文書の全部若しくは一部を公開しないとき又は公開請求を拒否するときは、公開請求者に対し、当該各項に規定する書面によりその理由を示さなければならないと定めています。
そして、実施機関が怠った作為義務について記載します。
しかし、処分庁は、当請求の一部に対し、公開決定、一部公開決定処分をしたものの、請求人が公開請求申請をしたもののうち、「●●●令和●年度会議録・資料」の第●回●●報告資料を除いた他の資料について、期限内に何ら処分も請求人に対する通知もしていません。
しかし、請求人が公開請求申請をしたものは「●●●令和4年度決算および明細」であるのに対し、「●●●令和3年度決算および明細」を開示決定するという誤った処分を行い、令和4年度の同文書については、期限内に何ら処分も請求人に対する通知もしていません。
それから、主張(あれば経緯も)を記載します。
請求の内容や手続きは正当であって、処分を行わない理由がない、または違法(不当)である旨指摘をします。
これに対し、請求人は何か事情がある可能性を考え、令和●年●月●日に電話にて処分庁に問い合わせをしています。一週間経ち返答がないため、同年●月●日に再度確認の電話をしたところ、会議録は作られていないとの返答がありました。
【令和●年度●●●会議録・資料について】
条例で公文書とは、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、実施機関が保有しているものをいう。」とされており、オンライン開催により資料が紙に印刷されることがなくても、職員が職務上、作成、取得した文書であれば、その様式は問いません*2。
●●●について、令和●年度は4回開催予定とし、そのうち、●月●日に開催された第●回●●●の報告文書のみが決定・写しの交付がされています。
●●●は、●●●を目的としており、●●に関する調査研究、交渉、資料作成、情報交換が主な活動です。令和●年度以降、オンラインによる開催になっていますが、令和●年度まで、資料等の印刷に40万円を支出している実績があり、第●回●●●報告の内容を拝読しても、●●の性質を考えても、到着している第●回●●●報告書以外の資料、会議録・資料が全くないとは考え難いものです。
●●●は、●●●をもって出張依頼書としていることから、●●は職務であり、そこで作成または取得される文書は、学校内および市内各校で共有される文書であることから、情報公開請求の開示対象文書であることは明らかです。
最高裁(平成17年6月14日)で、公開請求に係る公文書に請求者が公開を求めていなかった情報が記録されている部分があることなどを理由として当該部分を公開しないことの許否について違法とされていることや、行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいてした行政文書の開示請求に対し、一部の行政文書について開示決定をしただけで、その余の部分について開示決定等をしないことが違法であるとして、外務大臣に対してされた不作為の違法確認請求が認容された裁判例(東京地判平成19年12月26日)等があります。
請求人が●●市情報公開条例にに基づいて行なった開示請求に対し、一部の文書のみを開示決定し、残部文書について、なんら処分も通知もないということは情報公開条例に反するものであり、条例の手続き上、処分を行わない理由もありません。
これに対し、請求人は何か事情がある可能性を考え、令和●年●月●日に電話にて処分庁に問い合わせをしています。同年●月●日に決算書および明細について準備が整ったが、再度請求し直すよう依頼がありました。
【決算報告および明細について】
●●●は教職員が職務上参加する会議であり、そこで取得した文書は学校内および市内各校で組織的に共有される文書であるとすることが相当で、情報公開請求の開示対象の文書です。
令和3年度は●月●日に、令和4年度は●月●日に●●が開催されており、令和4年度の決算報告がされる令和5年度●●は、当請求時にはすでに開催されてから相当の日数が経過していると推察され、作成されていないとは考え難いものです。
また、請求人が●●市情報公開条例にに基づいて行なった開示請求に対し、請求内容と異なる年度の文書を開示決定し送付したことは、処分庁の誤りであるとしか言いようがなく、本来請求した年度の文書についてなんら処分も通知も行わないことは、条例に反する行為です。
その上、請求人に再度請求し直すよう依頼することは、請求人にとっては何ら利益がないばかりか、本来不要である時間経過を要し、条例による情報公開の意義、行政手続きを毀損するものであって、行政活動の正当性を損ないかねず、ひいては住民に不利益をもたらす行為であり容認できません。
経緯は書いても書かなくてもいいと思うけど、そこに不当さがあれば記載して主張するといいと思う。
あくまで冷静に、できるだけシンプルに。
以下、締め。
本件請求について、処分および通知もないということは、条例に定められた手続きが適正になされておらず、条例に違反しているというほかありません。
これは、市民の知る権利や行政の説明責任を軽視し、条例の意義・目的をも損なうものであって看過しがたいこと、また、今後の行政活動に期待を込めて本請求をするものです。
いつもの締め「立証責任は行政にあるよ」は今回は使わなかった。くだらなすぎて。
参考判例等/答申
似たような事例について、参考や引用に利用できそうな判例や答申を置いておきます。
正直、ウチの事例がショボすぎてアホらしくなってくるわ〜
【付言/答申pdf内P.12】
請求内容に見合う文書が複数ある場合には、そのいずれかを開示すればよいとする考え方に基づいて対応したことがうかがわれるが、かかる対応は、法第1条に定められている行政文書開示制度の趣旨に整合しないほか、法第3条が開示請求の対象を「行政機関の保有する行政文書」と規定し、特段の限定を加えていないことに照らしても、不適切といわざるを得ない。開示請求において求められている情報が複数の文書に記載され、かつ、その記載内容が重複していたとしても、開示請求内容に合致する行政文書は全て特定し、開示決定等をすべきである。
今後、処分庁においては、開示請求に対する文書の特定にあたり、法の趣旨にのっとった適切な対応をすることが望まれる。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan/最高裁平成17年6月14日県営渡船情報非公開処分取消請求事件
公開請求の対象を「公文書」と定めている旧岐阜県情報公開条例(平成6年岐阜県条例第22号。平成12年岐阜県条例第56号による全部改正前のもの)の下において公開請求に係る公文書に請求者が公開を求めていなかった情報が記録されている部分があることなどを理由として当該部分を公開しないことの許否。
本件条例2条2項、3項及び5条の規定によれば、本件条例が、本件条例に基づく公開の請求の対象を「情報」ではなく「公文書」としていることは明らかである。したがって、本件条例に基づき公文書の公開を請求する者が、例えば、「大垣土木事務所の県営渡船越立業務に関する情報が記録されている公文書」というように、記録されている情報の面から公開を請求する公文書を特定した場合であっても、当該公文書のうち、その情報が記録されている部分のみが公開の請求の対象となるものではなく、当該公文書全体がその対象となるものというべきである。本件条例の下において、実施機関が、公開の請求に係る公文書に請求の対象外となる情報が記録されている部分があるとし、公開すると、そのすべてが公開の請求に係る事項に関するものであると混同されるおそれがあるとの理由で、上記部分を公開しないことは許されないというべきである。
裁判例結果詳細 | 裁判所 - Courts in Japan/平成19年12月26日東京地判/公文書不開示決定処分取消等請求事件
行政機関の保有する情報の公開に関する法律に基づいてした行政文書の開示請求に対し,一部の行政文書について開示決定をしただけで,その余の部分について開示決定等をしないことが違法であるとして,外務大臣に対してされた不作為の違法確認請求が認容された事例。
平成29年11月30日鵜鷺コミュニティセンター及び鵜鷺コミュニティセンター運営委員会の情報公開に関する処分について、請求の受理及び開示決定等の行政手続きを履践していないとして、直ちに公開決定を行うべきとした事例。
おわりに
もうほーんと、テキトーですよねぇ・・。
今回は、ある思惑の他に、以前、学校とPTAの個人情報保護条例(当時)についてお世話になってご尽力くださった方が間に入っていたっていうのもあって、審査請求書を出さずに差し替えに応じたパターンでした。
だけど、不作為は立派な審査請求の対象ですから、じゃんじゃんやっていきましょう。
ではでは。
ぽにこ