今回は、ニッカウヰスキーのラインナップに「ジャパニーズウイスキー」が少ないのかについて考察します。

現在のラインナップはわずか

_DSC6961_01ニッカウヰスキーというと、日本におけるウイスキーの父と言われる竹鶴政孝が創業し、本格的なウイスキーを作るメーカーとして知られています。

しかし、同社において、業界団体が決めたジャパニーズウイスキーの基準においては、
  • 竹鶴ピュアモルト
  • 余市
  • 宮城峡
  • カフェグレーン
の4種類しかありません。
カフェグレーンが含まれるのは、穀物のデンプンを糖に替える糖化という過程で大麦麦芽を使っている事が理由です。

ライバルであるサントリーが、定番のウイスキーである角瓶やオールドすらもジャパニーズウイスキー基準であることを考えると、とても寂しいものがあります。

なぜここまで差がついたのでしょうか。

増産体制に遅れた

一番の理由は、ウイスキーブームに乗って増産体制を行わなかったことです。

サントリーは2009年に角ハイボールが大ブレイクしたことで原酒不足に陥り、そこから増産体制を継続的に行っていきました。
加えて海外での山崎の人気が高まったことも、増産体制に拍車を掛けることになりました。

その結果、ジャパニーズウイスキー基準が出来たことをきっかけに、比較的安価な銘柄もそれに準拠したブレンドに切り替えることが出来たと言えます。

一方でニッカは、ハイボールのブームでも根本的な増産に踏み切らず、竹鶴政孝をモデルにした連続テレビ小説「マッサン」によって爆売れになった状況でも増産に踏み切るには至りませんでした。

その結果、オールモルト、ザ・ブレンド・オブ・ニッカ、G&Gなどの銘柄を廃止、年数表記のあるウイスキーも竹鶴ピュアモルトに限られるようになり、ラインナップ自体も寂しいものになってしまいました。

マッサンブームから2,3年経過して、ようやく重い腰を上げて増産体制に入りましたが、かつてのコストパフォーマンスの高さが売りにならなくなり、ノンエイジの余市や宮城峡も700mLで7000円まで値上がり、店頭でも見かけにくくなっていきました。

海外の原酒を使っても大丈夫だという自信

もう一つの理由は、海外の原酒を使っても品質に問題は無いという自信があることです。

親会社のアサヒビールのリリースによると、
  • 創業以来、余市蒸溜所(北海道)及び宮城峡蒸溜所(宮城県)において多様な原酒をつくり分ける確固たる技術を確立してきたとともに、スコットランドにベン・ネヴィス蒸溜所を保有するなど海外から様々な原酒(輸入原酒)を調達してきました。
  • 自社国内製造の原酒、海外から輸入した原酒、あらゆる原酒の持つ個性を見極めて目指す味わいを実現するためのブレンド技術、ブレンダーの技も脈々と受け継がれています。
  • 今後も、国内外問わずあらゆる個性の原酒と真摯に向き合い、幅広く、多彩なおいしさをお客様にお届けしていきます。
と言う文言が明記されています。

つまり、自社で製造した原酒にこだわらず、海外の原酒を使っても、ブレンド技術が発達しているから品質に問題は無い、という自信を持っているのでしょう。

しかし、日本のウイスキーを作ろうと目指していた竹鶴政孝がこの文言を読んだら、どういう感情に揺さぶられることになるでしょうか。

高品質で薄利多売をモットーにしていたニッカウヰスキーは、その本質を見失っているように思えます。

個人的には、スーパーニッカをジャパニーズウイスキーとして出せるような努力をしてほしいと願っています。

ニッカ、そんな信念で大丈夫か?