「12弦ギター」風の音色、「革新的なピック」で実現…試し弾きに驚いた楽器店員「売れますよ」
一般的なギター(6弦)を12弦ギターのような重厚な音色で弾ける独自のピックを、徳島市の設備工事会社長岩田浩輔さん(64)が開発した。ギターを独学で始めた大学生の頃に思いつき、半世紀近く温めてきたアイデアを商品化した。「12弦ギターは高価で手が出なくても、このピック一つで驚くほど似た音色を楽しめる」と勧める。 【写真】12弦ギターのような音色を出せる二重ピック
岩田さんは高校3年の時、友人らがギターを奏でるのが格好良く見え、自分もアコースティックギターを購入。教則本を買って練習に励んだ。音楽雑誌で見た目も豪華な12弦ギターを知り、あこがれた。弾いてみたかったが、当時はまだ種類が少なく、6弦ギターの2~3倍の高値だった。
翌年、ピックの工夫で似た音が出せないかと考えた。ピック2枚を両面テープで貼り合わせると、重層的な音色になることを知った。大学卒業後、家業の大和設備工業(徳島市)に入社し、1996年には社長業を継いだ。ギターはずっと弾き続け、人前で演奏することはなかったが、自宅で楽しんできた。
2022年7月、仕事の合間に東京の楽器店で新しいギターを買い求めた。試し弾きに使おうとポケットに入れていたのが、自作の2枚貼りピック。12弦風の音色に驚いた店員が集まり、「このピック何ですか。売れますよ」との声が上がったという。
「ピック販売を新分野の事業に」と思い、会社で初めて音楽関連の商品を手がけた。音色にこだわり、ピックの素材に塩化ビニールや何種類ものナイロンを次々試した。特殊なナイロンで厚さの異なるピックを2枚作り、それぞれ裏側に溝を彫って先をずらして重ね、超音波で接着。柔らかく反発する材質のおかげで12弦のような音を出せた。
金型やプラスチック成形の会社に特注して製品化した。商品名は「Kous(コース)W―6 レイヤードピック」(縦32ミリ、横30ミリ、厚さ4ミリ)で、税込み1枚550円。昨年6月に実用新案を取得し、同12月には商標登録を受けた。