NHK国際放送問題、盛り込まれた「安全保障」 問われているのは?

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宮田裕介 滝沢文那
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 NHKのラジオ国際放送などで、中国人の40代の男性外部スタッフが沖縄県尖閣諸島を「中国の領土」などと原稿にない発言をした問題をめぐり、NHKの稲葉延雄会長は、国会などへの釈明に追われた。NHKは近く、詳細を説明する見通しだ。何が問題にされたのか。

 8月19日夜、NHKは緊急の記者向けの説明会を開き、同日午後1時過ぎの中国語のニュースで、中国人スタッフの男性が原稿にない内容を発言したと発表した。この男性は、2002年からニュース原稿の中国語への翻訳と、読み上げ業務をしていた。19日は、靖国神社で落書きが見つかり、警視庁が器物損壊事件として捜査しているニュースを読んでいる際、原稿にない発言を約20秒したという。

 ただし、この日公表したのは、尖閣諸島を「中国の領土」と発言したことのみで、NHKの担当者は報道陣に「(不適切なのは)ニュースとは無関係の発言が放送されたこと」と念押しした。当初、NHKが問題視していたのは、発言を止められなかった放送の管理体制だった。

 その放送では、問題になった中国籍の40代の男性スタッフと別の中国籍スタッフが2人で順番に原稿を読み上げ、中国語がわかるNHK職員と外部のディレクターが立ち会っていたという。

 あるNHK幹部は「生放送の体制作りが、貧弱だった。あってはならないことが起きてしまった」と話し、元幹部も「(突発的なことがあれば)音を消すなど、対応策があるのに、なぜやらなかったのか」といぶかしんだ。

 メディアの経営戦略経済政策に詳しい青山学院大の内山隆教授は「生放送のシステムが持つ脆弱(ぜいじゃく)性を突かれた事案だ。言論空間の誤・偽情報の問題や、サイバーセキュリティーが世界的なアジェンダになっている最中、NHKもセキュリティーレベルを上げなければいけなかった」と指摘。その上で、あくまでも放送現場のオペレーションレベルを中心に解決すべき問題と強調する。「上層部ばかりで厳格な管理体制を敷くと、場合によっては現場の融通が失われる。正確な放送を届けるシステムの再構築を考えるべきだ」

NHK「安全保障の観点への意識が欠けた」 問題視の理由は?

 一方、国会などでは男性の発言内容を問題視する声も出始めていた。

 22日には自民党の「情報通…

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