不規則発言、後手に回ったNHK デスク「突然のことで対応できず」
「いわば『放送の乗っ取り』とも言える事態」――。NHKのラジオ国際放送などで中国人の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島を「中国の領土」などと発言した問題。10日に公表された調査結果からは、リスクを把握しながら対処せず、事後の対応も後手に回った実態が浮かび上がった。
会見冒頭、稲葉延雄会長は幹部とともに深々と頭を下げた。「背景には、NHKの危機意識の乏しさがあった」。放送業務のリスクについて「感度を高くもって対応できなかった」と反省を述べた。
報告書の調査は、外部スタッフだった男性(48)本人には接触できず、現場にいたNHK職員のデスクや外部ディレクターなどへの聞き取りによるものだ。
NHKは男性に「兆候」があったことを認めた。NHKと男性は2002年に業務委託契約を結んだ。以来、日本語のニュース原稿を中国語に翻訳し読み上げる業務に関わってきた。契約時には、中国政府の方針と異なる内容の翻訳や読み上げをする場合があることや日本政府の公的見解を正しく伝えるとした国際番組基準があることを伝えていた。近年、中国当局の反応への不安や懸念、処遇への不満をNHK職員に伝えていたという。16年には「中国は一党独裁で政局の予測が不可能」だとして「年齢などプライバシーを公表することは控えてほしい」と当時のデスクに要望。尖閣諸島の報道については昨年、翻訳業務を拒否できるのかを質問していた。
8月19日当日も、放送の約1時間半前、男性は靖国神社に落書きされたニュースを翻訳する中で、事実関係について議論になり、激しく反発。ただ、NHK職員のデスクが原稿の一部を削除すると、落ち着きを取り戻した。
だが午後1時1分の放送開始…