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NHK稲葉会長ら役員報酬50%を1カ月自主返納、理事は辞任 ラジオ国際放送の中国籍スタッフ問題発言

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 NHKの稲葉延雄会長らが10日、同局ラジオ国際放送の中国語ニュースで中国籍の外部スタッフが沖縄県・尖閣諸島を「中国の領土」などと発言した問題について会見した。

 8月19日に放送された中国語ニュースで、中国籍の外部スタッフが沖縄県の尖閣諸島について「中国の領土」などと、原稿にない「不適切な発言」を行った。同局は外部スタッフと業務委託契約を結んでいる関連団体を通じて本人に厳重に抗議するとともに、関連団体は本人との契約を解除する方針であると伝えた。

 この日、公表された報告書では「重大な事態を引き起こしたこと、また、事前に備えれば対応し得る状況であったこと、発生後の放送対応、広報対応で十全な対応が行えなかったこと」として、稲葉会長、井上樹彦副会長、山名啓雄専務理事、中嶋太一理事がそれぞれ役員報酬50%・1カ月を自主返納するとしたほか、傍田賢治理事が9月10日付で辞任。また、株式会社NHKグローバルメディアサービスの神田真介代表取締役と馬場広大専務取締役が30%・1か月を自主返納する。また、NHKの天川恵美子・国際放送局長を減給としたほか、同局の職員4人を懲戒処分とした。

 NHKの理事の辞任は07年に起きた職員によるインサイダー取引事件以来16年ぶりとなる。

 「今回の問題は、公共放送NHKの存在意義を揺るがす極めて深刻な事態」とし、「対応策を徹底することで、国際放送に関するガバナンスを強化し、信頼回復に努めていく。同時に、NHK全体において、放送の自主自律の堅持とリスク意識の向上を図り、視聴者・国民から負託された公共放送の使命を果たしていく。今回の事案を受けて、NHKの国際放送が委縮することなく、国際番組基準が定める『内外のニュースを迅速かつ客観的に報道するとともに、わが国の重要な政策および国際問題にたいする公的見解ならびにわが国の世論の動向を正しく伝える』という使命や役割を果たすため、引き続き、充実強化を図っていく」と記載した。

 同局は8月30日に公式サイトを通じ、改めて経緯を説明。改めて外部スタッフの発言について「日本政府の公式見解とは異なる発言」とし、「今回の事案は、NHK国際番組基準に抵触する等、NHKが、放送法で定められた担うべき責務を適切に果たせなかったという極めて深刻な事態であり、重く受け止めています。深くお詫び申し上げます」と謝罪した。

 スタッフは21日付で契約を解除し、今後は損害賠償請求を行うとともに、刑事告訴の検討を含め厳正に対処するとした。また、「26日には副会長をトップとする検討体制を設置しました」と報告し「今後、可能な限りの原因究明を行い、関係する役職員の責任を厳しく問います」とした。

 中国籍の外部スタッフについては、「NHKの関連団体と業務委託契約を結び、主な業務はニュース原稿の中国語への翻訳と、その原稿をラジオニュースで中国語で読み上げることでした。2002年(平成14年)からNHKの業務を行っていました」と説明。現在は「代理人を通じて対応するなどと話し、現段階で、動機や意図については十分判明していないと考えています」と指摘。さらに「この外部スタッフとみられる人物が香港の中国系メディアに過去に出演していたことを確認しましたが、今回の事案発覚までに、把握できていませんでした。外部スタッフはニュースの取材制作の専用端末にアクセスする権限はなく、NHKの取材情報など非公開情報が流出したことはないと考えています」と見解を明らかにした。

 今回の件を受け、「ラジオ国際放送の中国語ニュースについては、20日から事前に収録して放送しています。さらに、スワヒリ語や朝鮮語など7言語も事前収録に切り替え、29日までに英語をのぞく全ての言語を事前収録とします」と、従来の生放送から事前収録に切り替えたことを報告。さらに、「中国語を含め可能な言語から、必要に応じて、早期にAI音声の導入を検討します」と再発防止策を発表していた。

 8月26日には井上副会長をトップとする検討体制を設置。「今後、可能な限りの原因究明を行い、関係する役職員の責任を厳しく問います」とし、「今回の事案は、NHK全体として安全保障の観点への意識が欠けていたことも原因であると考えています。短期的な対応だけでなく、管理体制の強化等、中期的な再発防止策を策定し、国際放送に関するガバナンスの強化を行い、信頼回復に努めて参ります」と記した。

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