「信用できない」「40年超運転の原発、止めよ」福井県議会で声噴出

永井啓子 佐藤常敬

 関西電力の原発にたまる使用済み核燃料の福井県外搬出のロードマップ(工程表)について、関電と資源エネルギー庁が9日、県議会で見直しの方針を説明した。県への提示から1年足らずで工程表が崩れたことに対し、県議からは「もう信用できない」との声が噴出。工程表を前提に県議会でも運転を容認した、40年超運転となる美浜原発3号機、高浜原発1、2号機の老朽原発3基を「止めよ」と迫った。(永井啓子、佐藤常敬)

 午後3時半。関電副社長の水田仁・原子力事業本部長や資源エネルギー庁の山田仁・資源エネルギー政策統括調整官らを前に、県議からは次々と厳しい言葉が飛んだ。

 「正直怒っている。こんなに簡単に(工程表を)『もう一度出すから信用してくれ』では、信用できない。3基を直ちに止めていただきたい」

 全員協議会で口火を切ったのは自民党福井県議会(自民)の力野豊県議だった。「3基を止める」の要求の背景には、2023年末までに中間貯蔵施設の県外候補地を示せなければ3基を止めるとした関電のかつての約束がある。

 候補地は提示されなかったが、関電から使用済み核燃料搬出の工程表が昨年10月に示された後、知事や県議会が運転継続を容認。それから1年足らずで見直しの説明を受けることに。力野県議は「約束がほごにされた」と批判した。

 民主・みらいの渡辺大輔県議は「工程表に示された中間貯蔵施設への搬出のスケジュールも信用できない。2030年ごろと書いているが、(同施設がある)青森県むつ市の例を見ても、調査から操業まで恐らく10年以上かかる。すでに破綻(はたん)しているのでは」と不信感をあらわにした。

 水田氏は「しっかりと年度末に納得していただけるロードマップを提出するので、ご理解いただきたい」と繰り返した。3基を止める「約束」については、「昨年6月に使用済み核燃料200トンをフランスに搬出する計画ができた。これが中間貯蔵と同等の意義がある。23年度末までに取り組むとした(中間貯蔵施設の)計画地点の確定は達成された」と従来の説明に終始し、溝は埋まらなかった。

「福井の原子力政策大転換」も示唆

 また、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働をめぐり、新潟県が要望していた避難道路を国が整備する方針が決まったことを引き合いに、要望する避難道路の整備が進まない福井県内の状況に苦言を呈する議員も相次いだ。

 嶺南地方の6市町で唯一、南北へ通じる避難道路がない美浜町を含む小浜市三方郡三方上中郡選出の自民、小堀友広県議は「新潟で避難道路ができて、私たちのところには、1本も話がない。国の覚悟を示してほしい」と訴えた。

 越前若狭の会の細川かをり県議は、福井県内に日本で一番多くの使用済み核燃料があるとし、「日本一、避難道路がないといけない。若狭の地域の人がいざという時に逃げられるルートを当然、つくるべきだ」と述べた。

 関電や国を批判し、3基を止めろと迫る意見が相次いだ一方で、大飯、高浜両原発がある大飯郡選出の自民の田中宏典県議は「止めることは簡単だが、電力の安定供給を考えるとそういった約束はするべきでない」と話した。

 最後に質問に立った自民の会長代行、仲倉典克県議は「今回ほど裏切られた気持ちになったのは初めてだ。地に落ちた信頼をどう回復し、形にするのか。今回が最後の通告だ。しっかりとした答えを示さなければ、福井県政の原子力政策は大転換する事態に陥ることを肝に銘じていただきたい」と強調。国にも「主体的な覚悟を示せ。今日の会議は言い訳にしかなっていない。次は確実な回答を持ってくるように肝に銘じて帰ってください。以上」と締めくくった。

 水田、山田両氏は「しっかりと対応していきます」と応えた。

「乾式貯蔵、10年以内」条例案も

 福井県議会9月定例会は9日に開会し、「越前若狭の会」の県議4人が、使用済み核燃料を原発内に一時保管する乾式貯蔵施設をめぐり、「保管から10年以内に県外に搬出しなければならない」とする条例案を提出した。最終日の10月7日の本会議で採決される。

 斉木武志県議は提案理由として「数字で明確な期限を切ることで、関西電力や経済産業省に使用済み燃料対策を強く促していく」と述べた。(永井啓子)

6市民団体が陳情書

 関西電力の原発にたまる使用済み核燃料の搬出工程の見直しをめぐり、福井県内外の六つの市民団体が9日、県議会に陳情書3通を提出した。運転開始から40年超となる美浜原発3号機、高浜原発1、2号機の運転を関電にやめさせることや、県民への説明会を開くことなどを求めている。

 このうち「原子力発電に反対する福井県民会議」の陳情書は、「破綻した工程表を容認した県と県議会にも相応の責任がある」と指摘。関電が「23年末までに確定できなければ40年超運転の3基を止める」と約束した県外の中間貯蔵施設の候補地が示されないまま、搬出の工程表を県に提示して運転を容認させた経緯を踏まえ、3基の運転をやめさせるよう求めた。また、乾式貯蔵施設の設置の「事前了解」をしないことも求めている。

 陳情書を県議会事務局の担当者に手渡した若狭町の石地優さん(71)は「県議会は原発に対する判断を最終的に『知事に一任する』という形が続いている。議会の役目を放棄しているのでは(ないか)」と訴えた。(永井啓子)

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