最後にもう一つ。日本人の乳がんによる死亡率は、現在もなお、欧米より、はるかに低い水準にとどまっています。ところが、欧米の大部分の国で死亡率が下がり始めているのに対し、日本は逆にじりじり上がっています。
図9-8は、乳がんによる死亡率を年齢で調整して、国ごとの変化を見たものです。欧米各国は1990年ごろに死亡率の上昇が止まっていますね。これは、この時期に乳がん検診が普及したからとされています。残念ながら、日本は乳がん検診の受診率が欧米の3分の1しかありません。しかも、乳がんが30代から増加することが十分に知られておらず、若い世代の受診率が低いのが問題です。
日本乳癌学会の調査によると、乳がん患者さんのうち、自分でしこりに気づいて病院をおとずれた人が70%近くにのぼりました。乳がんは体の表面に近いところにできるので、比較的発見しやすいがんです。しかし、自分で気づくころには、それなりに進行している場合がほとんどです。暮らす環境が変わり、乳がんが増えている現代社会において、日本人女性が乳がんから身を守る第一歩は、2年に1度、できれば毎年、乳がん検診を受けることです。
さらに連載記事<「胃がん」や「大腸がん」を追い抜き、いま「日本人」のあいだで発生率が急上昇している「がんの種類」>では、日本人とがんの関係について、詳しく解説しています。
本記事の抜粋元『欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」 科学的事実が教える正しいがん・生活習慣病予防』(講談社ブルーバックス)では、見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための方法をさらに詳しく徹底解説しています。