語り部にAI活用 空襲体験談を放映、質問に応答も 浜松復興記念館に常設展示 記憶継承に新たな形
浜松市中央区の浜松復興記念館に12日、人工知能(AI)を活用して浜松大空襲を伝える「対話型・語り部講話視聴システム」が展示された。同区のソフトウエア開発「シルバコンパス」が制作し、常設は国内初。市遺族会や戦災遺族会の協力で実現した。語り部の高齢化が進む中、新たな戦争体験の継承の形として期待されている。 【動画】語り部にAI活用 空襲体験談を放映、質問に回答も ディスプレーに体験者の姿を映し出し、当時の記憶を語る。話すのは7歳で空襲に遭った野田多満子さん(86)=同区=。頭上を飛び交う戦闘機への恐怖心、避難した小屋の中に響き渡る誰かの念仏ー。生々しい記憶を語っている。視聴者が約90項目の中から質問を投げかけると、収録した映像からAIが合致する内容を選んで回答する。 戦争の記憶を後世に残そうと2022年に完成させ、同年6月に市戦災死者慰霊祭で披露した。今後も全国各地で体験者の談話を収録し、将来的には映像をデータベース化して平和教育の教材としての活用も見据える。安田晴彦社長は「語り部の話を直接聞ける機会は貴重。(システムで)多くの人に聞いてもらいたい」と期待を寄せる。 野田さんは、これまで戦争の経験を人前で話すことはなかったが、語り部の現状を知り、依頼を受けたという。「後世に伝え残そうという活動の役に立てればとの思いで協力した。戦争は決してひとごとではなく、一度起きてしまえば全て奪われてしまうことを知ってほしい」と話した。
静岡新聞社