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Conversation

話し合いの場が設けられ、COMIC ROOM関係者の方々と情報を共有しました。 まず私は誰かしらの処罰よりも根本的な問題点を洗い出し解消する事を希望し伝え、話し合いに臨みました。 なぜ社の所属アシスタントではなく、漫画家に背景を丸投げする事になったのか。 結果、おそらくこれが問題の主軸となるであろう部分に辿り着く事ができました。 大きくは社内での情報共有、認識のすり合わせができていなかったことです。 その中に「アシスタント」についての認識に個人単位で齟齬が出ていたという感触でした。 一般的には編集者にとってアシスタントとは漫画家の向こう側に見え隠れする存在で、アシスタントの仕事、背景の品質管理は漫画家の役目です。(スタッフが多いところではチーフアシスタントと呼ばれる人がサポートに入ります) なので多くの編集者は「作品中の背景の品質とそれにかかるコスト」については門外漢ということになります。 COMIC ROOM様としてはそこにかかるコストについて、漫画家だけが負担を被らないよう、またアシスタントも相応の報酬が受けられるよう取り組んでいました。 編集者となる方にも漫画制作の現場経験がある人材が多くいらっしゃるとのことです。 ただ、今回に関しては上層部と編集者個人の間では認識の食い違いがあり、重大なミスディレクションが起こった。 それが私のケースでは複数重なったため、一番望ましくない結果を迎えたという形かと思います。 商業レベルで安定した品質の背景を描いてもらうには人件費+技術料が必要です。 指定の通りに描けてさらに締切と機密を守れる人となるグッと選択肢が狭まります。 「うまいこと省略する」のは高度なスキルです。 「ラフをちょっとブラッシュアップしてもらう」のも別な高度なスキルです。 「3D素材を手描きっぽくする」のも「かっこいい集中線を描く」のもそうです。 「カキモジ」と呼ばれる効果音や「モブ」は意外に描ける人が少ないです。 モアレないトーン、きれいなスミ溜まり、質感の描き分けなど、ひとつひとつが基本でありながら独立したスキルです。 それらのスキルを全部持っている人はメチャクチャ希少で、雇うとなるとさらに予算が必要になります。 それでも人を雇って描いてもらうのは「一人で描くより間違いなく早く、漫画家が寝る時間を作れる」からです。 COMIC ROOM様ではそれらのスキルや品質を管理するのに漫画家抜き(負担を減らしキャラとネームだけに集中してもらうため)のディレクションを試みており、おおよそのケースでは管理が行き届いていたというのが上層部の方々の認識でした。 今回の私の件は発端となるアシスタント個人との行き違いがあったのですが、きちんと共有がされず、解消に至りませんでした。 それらが積み重なって「漫画業界の慣例」として漫画家に全ての皺寄せが行ってしまったという所でしょうか。 私個人の考えですが、漫画編集者は全員「担当漫画家の無料奉仕」という切り札を持っていると思っています。 これは漫画家がギブアップするまで無限に使えます。 この切り札は有効に使えば作品の宣伝やクオリティアップなどで十分な効果を発揮します。それゆえ多くの漫画家は基本的には協力します。 ただ、使い過ぎると「編集者にとってはタダだが漫画家のリソースは消費される」という認識が希薄になります。 誰もが自由に使えるので、それを使っているという意識すらない編集者さんも多いのではないでしょうか。 その切り札の存在が「漫画業界の慣例」として漫画家に皺寄せが行きやすい構造を作っていると私は考えています。 以前も書きましたが、編集者は会社員です。会社が給金を出しているので基本的にはタダ働きにはなりません。 対して漫画家は「原稿料」「印税」などが発生しないものは完全な無料奉仕となります。なので決して同じ立場になることはありません。 良い悪いではなく、立場の差はどうあっても存在するものです。 そこをどう認識して令和の時代に即した価値観にアップデートするか、そろそろ出版社、漫画制作会社と漫画家の両方で共に意識改革できないかとずっと考えています。 今回のことについてCOMIC ROOM様は重大なインシデントと認識しており、社の所属アシスタントチームのあり方を見直してくださるとのことです。 本来のCOMIC ROOM様としてはこういった「漫画業界の悪しき慣習から自由になる」との理想に向けて「出版社」ではなく「漫画制作会社」として実践を重ねてきたが、(一部においてとはいえ)「業界の悪しき慣習」そのままの出来事が起こってしまった事を重く受け止めていらっしゃいました。 これをきっかけとして、これからの漫画業界が正当な報酬をもって現場が回るようになることを願っています。 議事録も作ってもらえますし、今後に活かしていただけたらと思います。 今回関わった人々がそれぞれどういった処分となるかはCOMIC ROOM内部のことであり、私は社外の人間なので言及いたしません。 発表があるとしたら代表である石橋様のXもしくは公式サイトからになると思います。 私の原稿料は、所属アシスタントと折半になるところを満額いただけることとなります。 さらにかかったアシスタント代も出すとご提案いただいて、一旦は辞退しましたが、今回の事を綺麗に過去のものとするために受け取る事で合意いたしました。 ドラマチックな結末ではありませんが、この件はこれで解決に向かうと思います。 ご心配をおかけしました。見守っていただきありがとうございました。 2024年2月21日 こうづきおさむ(上月ヲサム)