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ほぼ漫画業界コラム149【コミックルーム4期目を振り返って】

コミックルーム4期目が終わります。今年を振り返ります。4期目は小学館を辞めてコミックルームに本格的に合流できた年です。よく聞くじゃないですか、大企業のお偉いさんが、独立して会社の看板が使えなくなると何もできなくなるって。4期目の前半はそれを何度も体験する年でした。

僕たちは漫画家と編集者と原作者が集まった漫画制作スタジオです。すでにヒット作も出しており、その原作著作権もホールドしている画期的で新しくて強い会社のはずです。だから、他社の人もそう接してくれるかと思いました。が、違いました。

様々な会社が問い合わせてくれたのですが、小学館にいた時には想像もつかないようなビックリする厳しい条件で仕事を依頼してきます。先方からすれば聞いたこともない小さな編集プロダクションに仕事を依頼しているつもりなので当然なのですが、もちろん全て断りました。こういうことがしたかったわけではないからです。

旧知の人からは否定的に「なんで小学館を辞めたの?」「原作者になりたいんですか?」と会うたびに言われました。違うんです。僕は単に出版社という古く大きなしがらみから抜け出て、経済合理性のもと正しいと思える漫画ビジネスが行いたかったのです。ですが、このままではあっという間に古い商流に巻き込まれてしまうと思いました。

すでに僕たちは出版社を通じて作品を発表していました。双葉社さんはとても丁寧な仕事をしてくれ、僕たちの作品の多くをヒット作に導いてくれました。古巣の小学館も、作家の立場に立ってみたらいい会社です。両出版社にはいくら感謝しても感謝しきれません。ただ、それだけではダメだと思いました。出版社から原稿料を貰い、出版社の流通を通じて作品を出している時点で、赤ちゃんのようなものです。何かを変えるには、何かを主張するには自分の足で立たねばなりません。

それで、初めて僕たちはリスクを取ることにしました。自分たちが作った原作をパートナー作家に作画してもらい、そのまま電子書店に卸す、いわゆる直接取引です。通常、漫画家は出版社から原稿料を貰う対価として、様々な権利を出版社に渡します。逆に言えば原稿料を貰わずに、自分たちで作品を書いて、自分たちで編集し、自分たちで営業して販売すれば出版社に渡す権利は自分たちのところに残ることになります。

当たり前のことなんですが、言うは易く行うは難し。めちゃくちゃ大変です。原稿料を貰わなければ売れなければ全てが赤字です。むしろ外部のパートナー作家には原稿料を払わなければなりません。小さな会社と舐められるわけにはいきません。だから原稿料をケチるわけにはいきません。その作家さんが、それまでに出版社からもらっていた原稿料と同額か、それ以上を必ず提示するようにしました。さらに電子書店様と交渉し、編集体制を整え、営業数字を管理する仕組みを作りました。

幹部以外は素人ばかりのコミックルームがとにかく苦労の連発トラブル祭り。そして全ての弾が外れれば、僕たちはあっという間に倒産するでしょう。が、覚悟を決めました。大変ありがたいことに国内最大級の電子書店コミックシーモア様が全面的に僕たちの挑戦を応援してくれました。僕たちは西に向けて足を向けて寝れません。

『恩を仇で返された令嬢の家族が黙っているわけがない』『夫の消し方』『サレ妻の復讐』『愛と情欲』、温めていた女性向け作品を、初めてコミックシーモア様に直接、卸させていただきました。

昨年8月、そしてコミックシーモアにて発表されました。初日はそれほどでもありませんでしたが、徐々にそれらはシーモア内で認知されランキング上位を賑やかすことになりました。

今期の高売上が確定しました。3期の最高収益を200%以上更新しました。そこから僕たちは攻勢を強めました。まずこのXです。リスクはありますが僕の過去を語ることでコミックルームに歴史を与えました。弊社に応募してくれる作家さんは増え始めました。また、様々な企業からの問い合わせがありました。これまでとは違い、こちらが何者か分かった上での問い合わせが増えましたので、お互い納得がいく条件で様々な案件が決まっていきます。それによって直接取引作品や企業案件が増えました。売上は指数関数的に増えていきます。

ですがピンチの時にチャンスの芽が潜むのと同様に、チャンスの時にもピンチの芽が潜んでいます。それが表面化したのが今年2月の炎上騒ぎ。パートナー作家さんの背景アシスタントをこちらが雇用していたのですが、それがきちんと機能していなかったのです。拡大するビジネスに対して現場の編集者が育っていませんでした。また、一旦うまくいった直接取引も、長期的に維持するのは大変です。事務作業が爆増し現場の疲弊があっという間に進みました。多分それらが重なって、先月の騒ぎがあったのだと思います。むしろ病状が悪化する前に気づけて良かったです。指摘してくれた作家さんには感謝しかありません。

現在、僕たちは新規案件は一旦減らし、組織の足腰を作ることにしました。人材配置を見直し、必要な方を採用し、そうでない方は離れてもらいました。苦渋の決断も何度もありました。

そんな中、今月出した初めて直接取引で出した令嬢アンソロジーもインモラルシリーズも好発進です。あとは、これを続ける体制を作ります。しっかりとその体制を作り上げることができたら、徐々にビジネス規模を広げていきたいと思います。常に焦ってしまうんですけどね、ビジネスアイデアがどんどん浮かんで、すぐにそれを実行したくなる。でも今は我慢、苦手な管理業務に専念します。そのための漫画編集引退宣言です。

鳥山明先生を追悼する、先日の鳥嶋和彦さんのラジオで若い編集者へのメッセージがありました。
【才能を見つけ、独立しろ。絶対に人に委ねるな、人に頼るな】
このメッセージにすごく共感しました。例えば作家と出版社、別に協力し合うのはいいと思うんです。お互いを尊重し、協力し、WIN-WINの関係を目指す。ただし、そのためにはそれぞれが自分の足で立たなければならない。そうすれば誰かが誰かを搾取しているなんて話が生まれるはずがないんです。

僕はそのようなメッセージに感じました。今後僕は、それをひたすら実践しようと思います。久々のコラムでした。


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漫画制作スタジオ株式会社コミックルーム代表取締役社長 マンガ原作者(TSUYOSHI、恩を仇で返された令嬢の家族が黙っている訳がない等) 小学館裏サンデー、マンガワン創刊編集長 漫画業界に対するコラムを書いています。
ほぼ漫画業界コラム149【コミックルーム4期目を振り返って】|Zoo (石橋和章) 漫画原作者&漫画編集者
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