東大、贈与の相互作用によって様々な社会構造が組織されうることを理論的に解明
【プレスリリース】発表日:2024年09月05日
贈り物の交換による地位の競争と社会構造の変化
――文化人類学への統計物理学的アプローチ――
【発表のポイント】
◆文化人類学で議論されてきた贈与による覇権争いを数理モデルで表現し、贈与の規模や頻度に応じて多様な社会構造が組織されることを計算機シミュレーションで明らかにした。
◆文化人類学の現象に統計物理学のアプローチを導入することで、個人レベルの贈与の相互作用と、社会レベルの構造的類型の間に見られる普遍的な関係を示した。
◆本研究成果は、なぜ特定の地域で特定の社会構造が見られるのかを説明するための一般的な枠組みを提供する。また、数理モデルにより人間社会の普遍的性質を考察する「普遍人類学」という人類学研究の新たな可能性をひらくものである。
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【概要】
東京大学大学院総合文化研究科の金子邦彦東京大学名誉教授と板尾健司 博士課程大学院生(当時)は、贈与の相互作用によって様々な社会構造が組織されうることを理論的に明らかにしました。本研究では、文化人類学で議論されてきた競覇的な贈与(注1)による人々の相互作用を数理モデルで表現し、贈与に対するお返しとして適切な利率と贈与の頻度という二つのパラメータが大きくなるにつれて、社会構造が血縁関係に基づくバンド、同胞意識により連帯する部族、社会階層分化が進んだ首長制社会、安定的な王室を持つ王国の順に遷移することを発見しました。これは、ミクロレベルの贈与の相互作用とマクロレベルの社会構造という、これまで文化人類学や考古学などの分野において別個に議論されてきた現象の間に深い関係があることを示すものです。本研究成果は、人類学の理論研究の新たな分野として、計算機を用いて人間社会の普遍的な構造を論じる普遍人類学の展望を描いています。
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