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夏の雨さん
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他人事ではありません - 「「老後破産」というショッキングな言葉はNHKの板垣淑子プロデューサーの造語だという。」(続きはお楽しみ)
 「老後破産」というショッキングな言葉はNHKの板垣淑子プロデューサーの造語だという。
 高齢化社会のこの国でひとり暮らしの高齢者が600万人に迫り、そのうち年収が生活保護水準を下回る人はおよそ半数という。年金だけもギリギリの生活で病気や介護が必要ともなれば、たちまち「老後破産」だという。
 本書の中で紹介されている事例、食べるものを切り詰め、病気になっても医者にもかかれない人たちの姿はけっして近未来小説の登場人物ではない。
 現実におこっている現象なのだ。

 「老後破産」では「ひとり暮らし」が重要なキーになっている。
 夫婦で生活をしていれば、年金は二人分はいってくるが、それが一人ともなれば生活水準はたちまちさがってしまう。
 本書に書かれているが、現在の年金制度が作られた時代は、ひとり暮らしの高齢者は珍しかったという。家族と同居していたから少ない年金であっても生活は可能だった。何故なら最低限の生活は他の家族の収入で賄えたからだ。
 けれど、核家族化が進んで、「ひとり暮らし」の高齢者を支える家族がいなくなった。いないということではないだろうが、別の生計を営む限りはいないといってもいい。
 地方部では深刻だろう。若い世代が職を求めて都会に出てしまえば、残されるのは高齢者ばかりだ。
 その一方で、働けない家族を抱えてしまうという問題も深刻化しているという。
 親の年金だけを頼りに仕事につけない人、低収入の人たちがいる。
 「老後破産」といえども、パターンはさまざまだ。

 それでも健康であれば、なんとか生きていける。病気になれば、事態は一変する。
 医療費、介護費、ましてや買い物にもいけなくなってしまう。
 そして、「つながりの貧困」にも陥っていく。
 「つながりの貧困」とは、人との交わりがなくなっていくことで、本書ではカラスを話相手にする老人が紹介されている。
 「貧困」は人格的にも貧しくなっていく危機を抱えている。

 本書では「老後破産」の解決までのアプローチはなされていない。まずは現状認識というところだ。
 けれど、結婚をしない世代が増えてきて、彼らが老後になれば確実に「ひとり暮らし」の高齢者となっていく。
 「老後破産」の深刻さはこれからが本番だといえる。
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書評掲載URL : http://hontasu.blog49.fc2.com/
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夏の雨 さん本が好き!1級(書評数:2379 件)

ニックネーム「夏の雨」は、宮本輝さんの「朝の歓び」という作品の中の一節、「あなたが春の風のように微笑むならば、私は夏の雨となって訪れましょう」から、拝借しました。
「本のブログ ほん☆たす」という名前で、本についてのブログを運営しています。
ブログでは書評のほかに、その本を読んだ時の「こぼれ話」や本の話題など掲載しています。

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この書評へのコメント

  1. 祐太郎
    祐太郎2015-10-02 06:49

    元高齢者部門公務員として。夫婦(子供なし)で自営業やっているパターンが実は一番危ないです。どちらかが病に倒れ、店をたたむ。医療費・介護費がかさむものの国民年金のみ。あっというまに・・・、最後は夫が家で孤独死という例があり、いたたまれなくなりました。

  2. No Image
    夏の雨2015-10-02 08:42

    佑太朗さん
    コメントありがとうございます。
    実際ご自身で経験された重みはやはり違いますね。
    いい国であってほしいものです。
    これからも応援よろしくお願いします。

  3. No Image

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