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krnt

作品内容

西暦20XX年。魔法と科学が急激に発達した世界。最初は魔法が発展していったが、魔法が使えない者に対して、リュミエール博士が科学技術を利用して、魔法を使えるようにした結果、一気に魔法と科学が発展していった。
だが、みんなが使えるようになった結果、かつて魔法を使えなくて差別されていた人達による犯罪が起き、各地でテロが起き社会問題になっていった。そんな中、かつて科学の発展に貢献したテネーブル博士が差別されていた人達をまとめ上げアンチ・ウィッチ&ウィザード、通称AWWが結成され、さらにテロが深刻化していった。政府はこの問題に対し、優秀なウィッチとウィザードをかき集め、政府認定のオフィシャルウィッチ・ウィザード、通称OWを結成した。
この物語は、日本で活躍するOW所属している二人の活躍と悲劇の物語である。

「くそ、きりがないぞ!」

スーツに赤い大きなハットとコートを着用し、炎を纏ったレイピアを振るってる少年は、パワードスーツを着たAWWの構成員を蹴散らしながら言った。

「任せて!それ!」

同じくスーツに水色の小さなハットを被った少女が、持っていた銃を変形させ、ビームを撃ち、あっという間にAWWの構成員が吹っ飛んでいった。

「零児先輩、大丈夫だった?」
「ふぅー、助かったよ六花」

二人は身なりを整えながらそういった。すると、

「いやー、相変わらずの活躍ですね、二人とも!」

報道陣が急に集まってきた。

「特に、海野かいの六花りっかさんはさすがですね、リュミエール博士の孫娘にして現役中学生モデル!」
「モデルは関係ありませんが・・・」

報道陣は六花を囲んでいるが零児と呼ばれた少年の方には全然集まらなかった。

「ちぇ、前は炎光の貴公子って勝手に名付けてチヤホヤしやがったのに、六花が出てきたら、リュミエール博士の孫娘ってだけで、一気にあっちに群がって・・・」

零児はその場を離れながら、OWの基地に戻ろうとした。すると、その道中で

「おぉ、貴方は炎光の貴公子、青野あおの零児れいじさんでございますか?」

眼鏡をかけた老人が色紙を持って駆け寄ってきた。

「あぁ、そうだが」
「いやはや、実は孫娘が貴方のファンでして、それでサインを貰いたくて」
「それぐらいなら・・・」

零児は老人から色紙を貰い、サインをして返した。

「いやー、ありがとうございます。孫娘も喜ぶと思います。」
「それじゃあ、これで・・・」
「いや、待ってください。何かお悩みをお抱えしてるご様子で。この近くにわしの知り合いが、カレー専門店を開いていて、そこで話をしませんか?いつも平和を守っていらっしゃるので、わしのおごりで構いませんので・・・」
「それじゃあ、お言葉に甘えて・・・」

零児は老人についていき近くのカレー専門店に入り、近くのテーブルに座った。

「結構いい雰囲気のお店ですね」
「マスターがインド好きでしてな、それで本場の味を求めて向こうで修行したんでな。あぁ、マスターいつものを二つで。わしはいつもの通りの辛さでいいが、零児さんはどうしますか?」
「それじゃあ、普通でお願いします。」

老人はそういってマスターにオーダーすると、真面目な顔をしてこっちを向いた。

「さて、カレーが来る前に。どんなお悩みをお抱えを?」
「実は、六花についてなんだが、あいつが人気者過ぎて困ってるんだよ・・・一年前までは、俺一人で何とかしてきた。それでマスコミは炎光の貴公子って勝手に名付けて応援してたのに、最近はずっと六花のみに注目して、俺なんて全く見てないんだよ・・・。前まではずっと俺を応援してくれたのに。平和を守る為に、こんなこと気にしちゃいけないって思ってるんだが、ずっと気になって・・・」
「そうでしたか・・・確かに最近のマスコミは海野六花のみ注目していて、孫娘も炎光の貴公子どこーって」
「そうなんだよ、それでOWの上層部からも、六花ばっかり活躍していて、お前は何やってるんだって・・・今まで頑張ってきた苦労は何だったんだよって・・・」
「お待たせしました。いつものカレーセット二個です。」

そうやって愚痴っていると、お店のマスターがカレーを運んできた。
三つのカレーとナンが大皿に乗っていた。

「さて、一旦愚痴るのもここまでじゃ、おいしいカレーがまずくなるからのー。手前のが、バターチキンカレー、こちらが、ポークマサラカレー、奥にあるのが、豆とほうれん草のカレーじゃ、どれも絶品だからのー」
「あぁ、いただきます・・・」

俺と老人は運ばれてきたカレーセットを食い始めた。

「うまい!こんなに旨いカレーは始めてだ!」
「そうじゃろ!ここのマスターはさっきも言ったが本場インドで修行してのー。そして日本に帰って、日本人の舌に合うように調整した絶品カレーなんじゃ。わしも日本に来てずっと、ここのカレーを食って頑張ってきたんじゃ」
「爺さん、日本出身じゃないのか?」
「孫娘は日本生まれじゃが、わしはヨーロッパからこっちに来ての、様々な研究をしていたんじゃ。じゃが、日本のお偉いさんは厳しくての、わしの発明を全部否定したのじゃ・・・おっと暗い話は後じゃ、今はこの絶品カレーに集中しようではないか」
「あぁ、そうだな」

俺と老人は時折愚痴りながらもカレーセットを食べきった。

「美味しかった、ありがとう爺さん、本当におごりでいいのか?」
「大丈夫じゃ、それに、炎光の貴公子と一緒に食うといつも美味しいカレーがもっとうまくなるとは・・・さてと、カレーも落ち着いたことだし、お悩みを解決しようかの・・・」
「そういえば、爺さんさっき、発明と言ってたが、あんたも有名な博士なのか?」
「そうでもない、ヨーロッパでリュミエール博士のところで働いていた名も無き一人じゃ。日本にも魔法科学を発展させようと昔派遣された一人じゃ」
「そうか・・・それで俺はどうすればいいんだ・・・」
「まぁ、まずは六花にも負けない活躍をして、人気を取り戻す事じゃが、まず、リュミエール博士の孫娘ってところが一番の問題じゃの。それだけでマスコミは反応するからの。両親は事故で他界しているが、中学生モデルとして活躍しており、稼いだお金は全部リュミエール博士の研究資金に使い、そして自身も大人になったらリュミエール博士と一緒に研究するとして、好印象しかないからのー・・・」
「それに対して、俺はあいつと比べて一歳年上ってだけの無名の孤児で、凡人よりかは出来る程度で、努力でここまで頑張ってきたが、本物の天才様には勝てないって思ったよ、六花のおかげで・・・」
「そんなことはない、孫娘はいきなり出てきた六花より、ずっと前から守って来て、ここまで努力を続けた炎光の貴公子の方が偉いと」
「ありがとう・・・でも、マジでどうすればいいんだ・・・」
「まぁ、孫娘も何とかしてくれと泣き叫んでたから、わしも何とかしてあげたいからの。そこでじゃ、わしの研究成果を使うのはどうじゃ?」
「研究成果ってどんなのだ?」
「すぐに見せたいのは山々なんじゃが、こちらも準備が必要での、また後日このカレー屋で見せてあげよう」
「わかったよ、爺さん、ありがとう。ところで爺さんの名前は?」
「おっと、重要なことを忘れてたの。わしの名前はプルートじゃ。ではまたの」
「あぁ、カレー本当にありがとうございました。この応援を糧にまた頑張ろうと思います!」
「うむ、わしも準備しておくから、頑張ってくれのー!」

俺はカレー屋を後にし、プルートと別れた。

「さてと、わしも彼の為に準備しないとな・・・マスターまた来るよ」
「えぇ、博士。またのご来店お待ちしております。」

零児が後を去って、しばらくしてプルートも店を後にした。

「実際に会ってみると、昔のわしと同じ悩みをしておるの・・・やはりあいつこそ真の悪者じゃ!わしこそみんなを救う真の発明家なのじゃ!」

そういうと、プルートは杖を取り出すとゆっくりとどこかへ行った。

俺はあの後も努力をし続けて、何とか六花よりも活躍しようと頑張ったが、全部水の泡となった。
最近は、焦り過ぎてAWWの構成員を一人で片づけようとして、単身突撃しようとしたが、敵のパワードスーツが強化されてるせいでレイピアが弾かれついには折れて、倒れてしまった。
そんな情けないところを六花が助けてくれた。内心自分が情けなくて、六花が倒れている俺に手を刺し伸ばそうとして、俺は拒否しようとしたが、マスコミが近づいてきたのを見て、手を握ってしまった。
そしてそんな報道が流されて、OWの日本支部で俺一人司令室に呼ばれた。

「全く、ここまで情けない奴だったとはな・・・一年前と比べて弱くなったんじゃないか?」
「そんなことありません!」
「本当かね?二、三か月で好成績を取ってる六花君の方は着実と伸びている。対して、君の方は最近の戦果はどうかね?ほとんど六花君のサポートではないか!」
「それは・・・」
「一年前と比べて他にも優秀な奴が育ってきているし、凡人の中では人際良いと思いスカウトしたが、期待外れだったな・・・これ以上戦果が無ければ後方支援のスタッフに移行だな」
「わかりました・・・」

司令と話終わった俺はそのまま基地を後にした。

「本当に、このままどうすればいいんだ・・・」
「おぉ、零児さん、やっと見つかったわい。テレビを見て心配したんじゃ!」
「プルートさん、こんな俺でも助けてくれるんですか?」
「もちろんじゃ。約束の物も持ってきたんじゃ。まずは暗い気持ちをスッキリするために、美味しいカレーを食おうじゃないか!」
「はい!」

俺はプルートさんに前に連れて行って貰ったカレー屋に連れて行ってもらい、そこで前に食ったカレーセットをプルートさんと一緒に食った。

「またおごりで大丈夫なんですか?」
「金だったら余っておるからのー。それよりもこいつを見てくれ!おぬしの為に開発した新武器じゃ!」

プルートはアタッシュケースの中から剣を取り出した。

「わし特製の剣じゃ。しかも相手に合わせて有効な武器に変形するのじゃ。大事に扱ってくれのー」
「本当にいいんですか?」
「武器が折れて新品が欲しかったところじゃろ?おぬしが活躍してくれれば孫娘もわしも喜ぶ、それでいいのじゃ!」
「ありがとうございます。大切に使わせて貰います!」

俺は席を立って、カレー屋を後にした。

「さて、わしが知ってる世間だったらこの先の展開はあれだからのー・・・本格的にあれの準備をせねば・・・マスターまた来るのー・・・」
「えぇ、博士、またのご来店お待ちしております。」

マスターとプルートは不気味な笑みを浮かべ、プルートは杖を取り出しすと席を立ち、カレー屋を後にした。

プルート博士から受け取った剣は素晴らしかった。相手に合わせて変形すると言ったが、基本は俺に馴染みがあるレイピアに、分厚い装甲相手なら分厚いセイバーに、リーチが必要な相手だったら槍と、様々に変化した。最初は慣れるのに時間がかかったが、他のOWにも模擬戦をやったりした。
その時に、強くなったなー零児って言われ、久々にいい気分だった。そしてAWWとの戦いでも、パワードスーツがさらに強化されていたが、炎を纏わせた剣を変形させ、縦横無尽に戦い、勝利した。
六花にも、すごーいって言われて、ようやく人気を取り戻せると確信した。
そして、報道陣が来て、インタビューを受けようとしたが、結局報道陣が群がったのは、六花の方だった・・・

「本日は、零児さんの援護でしたが、調子はどうでしたか六花さん?」
「私も頑張ったけど、零児先輩も頑張ってたんですが・・・」
「まぁまぁ、それよりも皆様の為に一言を・・・」

俺は呆然としながら、その場を見るしか出来なかった。そして六花の後にさっきより減ったが、報道陣が来てくれた。

「いやはや、新武器凄かったですね零児さん。とりあえず数枚、新武器構えてポーズをお願いします!」
「あぁ・・・」

俺は報道陣に言われるままポーズを取り、撮影を行った。

「とりあえずこんなもんでいいでしょ、あ、零児さん、とりあえず最後に皆様の為に一言お願いします」
「新武器を手にした俺の活躍これからも応援してくれよな!」
「はい、ありがとうございました。」

まるで事務的な動きをして仕事を終えた報道陣は帰っていった・・・。

後日TVや雑誌等メディアを確認したが、結局六花がメインや一面を飾っていて、俺の方は雑報扱いや一部報道しないまで、と地味に映っていただけだった・・・。
その後、俺はすがるような気持ちでカレー屋さんに向かった。

「マスター!プルートさんは来てますか?」
「零児さんですか、プルートさんから言伝があります。この近くにあるわしの親戚が経営してるボートハウスでおぬしを待っていると」

マスターはボートハウスまでの道順を書いた地図を渡しながら言った。

「ありがとう、マスター、またカレー食いに来ます!」
「えぇ、お待ちしております」
俺はすぐにカレー屋を後にして、貰った地図を頼りに、ボートハウスに走って向かった。
十分後、俺は目的のボートハウスに着いた。

「はぁはぁ、ここか・・・」
「おぉ、零児さん、よく来てくれた。さぁさぁ、こちらへどうぞ」

ボートハウスの外に置いてあった椅子で待っていてくれたプルートさんは杖を取り出すと、ボートハウスの裏に向かっていき、俺もついていった。

「さてと、開けゴマ!」

プルートさんはそう言い放つと、地下に向かう階段が現れた。

「これは?」
「親戚がわしの為に提供してくれた地下じゃ。この先にわしのラボがある。そこでおぬしに伝えたいことがある。ついてきてくれるか?」
「あぁ、もちろんだ!」

俺はプルートさんと一緒に地下に降りていき、そしてプルートさんのラボに着いた。

「さてここがわしのラボじゃ・・・とりあえず適当に座ってくれ」
「あぁ・・・」
「さてと、どこから話そうかの・・・それにしても、マスコミはひどい物じゃ、あんな風におぬしを粗末に扱うとは・・・あの時と一緒じゃのう・・・」
「プルートさんも何かあったんですか?」
「一つだけおぬしに謝ろうと思う、わしの名前はプルートではない、AWWの総帥テネーブルじゃ!」
「なんだって!なんで敵である俺を助けたんだ!」
「最初はリュミエールの孫娘である六花の対策としておぬしを引き抜こうと思ったのじゃ。そのためにいろいろと準備しておったが、おぬしを調べれば調べるほど、おぬしを助けたくなったのじゃ」
「どうして・・・」
「わしと似ているからじゃ。そのためにわしがなぜAWWを立ち上げたのかを話そうではないか」

かつてヨーロッパでわしはリュミエールや他の学者と一緒に、魔法が使えない人達のために何とか出来ないか、模索していた。リュミエールは素質や血筋に関係なく簡単に出来る魔法を、わしは科学を利用して、魔法を使える人と同じレベルの魔法を扱えるようにすると提案した。それ以外にも様々な意見があったが、最終的にはリュミエールの案とわしの案が残ったのじゃ。結局二つの案のどちらか選べずにいたが、当時の政府が両方の案を採用してくれて、二つの案両方で研究が進むことになった。
着々と二つの案は進んでいったが、とある事故が起きたのじゃ。それはリュミエールの子供、つまり、海野家が交通事故を起こして、孫娘である六花だけが残ったのじゃ。その六花も酷い怪我だったが、唯一負傷が激しくなかった双子の姉である一香いちかの心臓を移植することで何とか生き残ったのじゃ。リュミエールはその事件によって、研究が止まってしまったのじゃ。わしは何とかリュミエールが立ち直れるように、海野家の肉体を使って、亡くなった家族を模した三体の生体ロボットを作り上げたのじゃ。
家族が復活し、喜んでくれた彼女は研究を再開したのじゃ。ところが、政府はそのことを知り、死者への冒涜だといい、わしの研究破棄並びに追放をしたのじゃ。当時のわしは、同じ研究者として、彼女が立ち直ってくれたからいいかと思い、立ち去り、そしてリュミエールから、家族の生体ロボット達を託され、孫がいる日本に移住して、そしてこのラボで、破棄された研究とロボット達を保管して、
ゆっくり暮らそうと思ったのじゃ。ところが、リュミエールが研究発表したのは、破棄されたはずのわしの研究案だったのじゃ。どういうことかと調べたが、リュミエールの研究はもう当時から限界だったらしく、わしを追放した後、政府は勝手にわしの案を復活して、リュミエールに研究を任せたのじゃ!
その後、リュミエールが完成させたものを、政府は制御して、結局魔法を使えない者達に必要最低限の魔法しか与えなかったのじゃ。結局自分たちの有利性を維持しおったのじゃ!
わしは全て裏切った政府とリュミエールの打倒を掲げ、わしが救うべきだった人達と一緒にAWWを結成したのじゃ!

「これがわしが、AWWを結成した理由じゃ・・・おぬしも結局政府とリュミエールの被害者なのじゃ・・・」
「そうだったのですか・・・」
「さてと、おぬしには二つの道を教えよう。一つはわしの首を斬って、OWの日本支部に届け仮初の英雄となるか、もう一つは、わしとともに政府とリュミエールを倒し、真の英雄となるか・・・」
「あなたを斬っても本当に喜ぶのはOWの上層部だけですね・・・わかりました、今日より俺はテネーブル博士の剣となりましょう!」
「おぉ、頼もしいことじゃ!では早速だがこいつを見せよう!」

テネーブル博士はスイッチを押すと奥から黒色のパワードスーツと大剣が現れた。

「おぬしのために調整した新型のパワードスーツと大剣じゃ。AWW製のパワードスーツは、魔力がないものでも、簡単に魔法が撃てるようにしておるが、元々魔法を使えるおぬしのために、既存の魔力を増幅させ、普段撃てないような強力な魔法をすぐに撃てるように開発したものじゃ。大剣の方は渡した剣のデータを参考に作った業物じゃ。ただし、敵に合わせた変形機構は付けておらん。それにこのヘルメットを被れば、おぬしだってバレない。しばらくはおぬしにはOWのスパイもやってほしいからのー!」
「わかりましたテネーブル博士、早速戻ってOWの機密情報を抜き取ってきます!」
「これからは頼むぞ零児!」

俺は早速何事もなかったかのようにOWの日本支部に帰り、訓練をしながら、情報収集して、テネーブル博士に送った。そして、その情報を基に六花を孤立させる作戦を練った。
そして俺はOWの一人として六花と一緒に出撃して、敵の反応はバラバラだし、最近は俺の調子もいいから、二手に分かれて一気に殲滅しようと六花にいい、六花は承諾してくれた。
そして、俺は人影が少ない裏路地で例の黒色のパワードスーツを受け取り装着し、構成員と一緒に、一気に六花を包囲した!

「敵の反応?もしかして、零児先輩おびき寄せられて・・・私達各個撃破されちゃう!?」

俺は六花のところにたどり着くと、今頃包囲されたことを知り、そして、俺の位置情報がわかる端末を、AWWの戦えないスタッフが裏路地で囲んだ振りをしてるのを知らずに、AWWの日本支部にいる全勢力で六花に戦いを挑んだ!

「あの、黒色のパワードスーツ見たことないけど、もしかして幹部級・・・強すぎる!」

六花は俺に対して何も抵抗できずにいた。テネーブル博士がまだヘルメットに内蔵してあるボイスチェンジャーは調整中だから喋らないようにと注意されていたので、喋れずにいたが、あの六花相手に押しているという実感が湧き、ニヤリと笑った。
そしてついに、俺の大剣が六花の脇腹を貫いた!

「くっ!」

六花はその場で地面に倒れ、俺は勝利を確信して、彼女の心臓に大剣を貫こうとしたが、その時、彼女から溢れる光の魔力が解き放たれた!

「お婆ちゃんに怒られちゃうなー、これ滅多に使わないでくれって言ってたから」

六花を囲んでた光の魔力が消え去ると、彼女は緑がかった青色のアーマースーツを装着していた。

「あんたたちを参考に作ったお婆ちゃん特製パワードスーツ、私に合わせて軽装にしてくれたけど、知り合いに怒られるのと心臓に負担がかかるから使わないでくれって言ってたからね・・・チャージ完了いっけー!」

地面に倒れていた六花は一気にアーマースーツのため込んだ魔力を使い、銃を変形させ、巨大なビームを撃ち放ち、俺たちを吹き飛ばした。俺たちは何とかバリアを張って、他のメンツはパワードスーツを壊されたりしたが、俺のパワードスーツだけは何とか耐えたがその衝撃で上空へと吹き飛ばされていった。

「ふぅー、危なかった・・・。零児先輩は大丈夫かしら?」

俺は何とか上空で吹っ飛ばされながらもパワードスーツのバーニアで調整しつつ、吹き飛ばされた他のメンツを回収しながら、地面に降りた。

「マジかよ・・・しかも俺たちのパワードスーツ参考に作ったって言ってたよな、これはガチで対策する必要があるぞ・・・」

他のメンツを回収し終えた俺は裏路地に移動してパワードスーツを待機してたAWWのスタッフに預け、OWの服装に着替えながら預けていた端末を受け取り、急いで六花に合流していった。

「六花!大丈夫だったか?今までと違ってパワーで押し切る奴じゃなくて、スピードで翻弄する奴だったせいでこっちはかなり手こずった!ってなんだそのアーマースーツは・・・まるでOWのパワードスーツじゃあ・・・」
「私の方も黒色で大剣もったやばいやつが来てたけど、何とか平気よ。あぁこのアーマースーツはね、お婆ちゃんが本当に危ない時に使うように言われてた奴で、知り合いに怒られるから、出さないでねって言われてたやつで・・・後心臓にも負担がかかるらしくて、もうお婆ちゃんも心配性なんだから・・・」
「そうか・・・」

そうやって話しているといつもの通り六花に報道陣が集まっていき、俺は黙ってその場をすぐに離れた。
そしていつものカレー屋に立ち寄り、近くのガレージから地下に降りて行った。
カレー屋もAWWの協力者で場所提供と資金、食料の提供をしていて、地下はAWWのスタッフが集まる秘密基地となっていた。

「マスター、他のメンツは?」
「みんなテネーブル博士のラボでパワードスーツの修理をしているが、かなりまずいですね。現状すぐに使えるパワードスーツは零士さんのだけで、日本支部で戦えるメンツは最早零児さんあなた一人って状況ですね」
「そうか・・・六花の野郎まさかあんな切り札どころか、パチモンを用意してたなんて・・・」
「えぇ、テネーブル博士もそれを知り、しばらく自分のラボで暴れていましたが、親戚や孫娘のおかげで今は落ち着いたそうです・・・。」
「そうか・・・。俺はテネーブル博士のところに行って、今回の件についての対策を考えてくる」
「零児さん、お気をつけてください。OWや政府の眼がいつここに来るかわかりませんので」
「それはわかってる。落ち着いたらまたカレーを食いに来るよ」
そういうと、俺は怪しまれぬように秘密基地から立ち去り、急いでテネーブル博士のラボに向かった。
ボートハウスに着くと、テネーブル博士の親戚がラボへの階段を開けて、俺は急いで降りて行った。

「零児か、話はわかってる。リュミエール、まさか二度までもわしを裏切りおって・・・最早あいつは政府には媚びを売り、手段を選ばない女狐じゃ・・・」
「だが、六花のアーマー、あれはかなりの出力があるぞ。どうすればいい・・・」
「まだ準備中じゃが、あれを超える手段が一つだけある。」
「本当ですか!だったら俺は何すれば・・・」
「今は言えぬが、覚悟と訓練、それにおぬしの手引きで、わしの弟子やAWWのスタッフをOWの日本支部に配属と、これから先の為に準備をしておきたい。今回の作戦で、下手するとおぬしがスパイだってバレる可能性もあるし、それにわしが今思いついた方法、下手するとこれ以上零児のスパイ活動が出来なくなる可能性が高いからじゃ」
「わかりました!」
「例の準備の為にわしはしばらくこのラボに引きこもる。臨時の責任者として、カレー屋のマスターに頼んでくれ。だが、あ奴は戦闘面に関してはからっきしダメじゃから、おぬしに任せる」
「俺ですか・・・自信はないけど、OWで活かしたことを用いて何とか構成員を鍛え上げて見せます!」

俺はそういうと、ラボから離れた。

「さて、あの女狐に対抗するには六花対策の為に見つけたあれを使うしかあるまい・・・あの女狐が手段を選ばない外道をするんじゃったら、こっちも外道になるしかないの・・・」

テネーブル博士は奥の部屋へと消えていった。

俺はラボから出ると、ボートハウスにいるテネーブル博士の親戚に今の件を伝え、しばらくOWの日本支部で自分を鍛え上げていった。OWの見習いや六花も相手をしながら、六花の弱点を探ろうとした。やはり彼女は天才だった。
弱点を見つけようとしたが、全く見つけられなかった。
訓練だけじゃ見つからないと思い、メディアのインタビューとかで苦手な事を探ろうとしたが、それでもダメだった。むしろどのメディアでも一面を飾る六花と、毎回雑報扱いされる俺と比較されて、ますます六花のことを妬み、自分の事を嫌いになっていった。
それでもテネーブル博士から任された使命の為、何人かOWの日本支部に配属させ、秘密基地に怪しまれないように、毎日通い続け構成員達を鍛え上げていった。
テネーブル博士の弟子やOWのスタッフが修理したパワードスーツを使って、構成員のパワードスーツをこれ以上壊されないようにするため、六花に最低限の攻撃をして彼女の分析をし、俺の攻撃でやられた振りをすることで、何とか彼女に対する対策が練れてきた頃、ようやくテネーブル博士から呼び出しを受けた。

「ようやく準備できたのですか博士」
「あぁ、理論上六花を倒し、それに彼女やあの女狐の名を汚す最高の作戦じゃ」
「どんな作戦ですか?」
「あぁ、前にも言ったがおぬしの覚悟が必要なんじゃ・・・こいつを見るがいい・・・」

テネーブル博士はスイッチを押すと奥から六花と似た少女が入ったカプセルが出てきた。

「これは一体・・・」
「前に話した、あの女狐から託された、奴の家族を模した生体ロボットじゃ。六花の姉一香をベースに、六花の両親から破損が少ない内臓や魔術回路を組み込み、それをさらにわしが持ってる魔法科学の技術で強化を施した、人間とロボットのハイブリット、それがこのサイバーボディじゃ」
「これが六花を倒す手段なのですか?一体どうして・・・」
「六花の強さを分析したところ、どうやら一香の心臓が鍵じゃった。どうやら彼女のDNAと魔術回路を解析した結果強化が得意での、それで六花の生きたいという熱望と一香の強化が重なった結果あの天才が誕生したというわけじゃ」
「それが彼女の強さの秘密か。それで動くんですかこれは?」
「純粋なロボットとして六花と戦わせても確かに彼女の動揺は誘えるじゃろう。じゃが、あの女狐を貶める為にはそれだけじゃあ足りんわ!そこで入れ物としてサイバーボディとして改造したわけじゃ。そしてこのサイバーボディに入るのは零児おぬししかおらぬ!」
「え、どうしてですか?」
「彼女のDNAと魔術回路が本領発揮するのがAWWのスタッフ一同のデータベースで検索したところ、おぬしの炎が一番相性が良いと結果が出てしまったのじゃ」
「ちなみにいつ発覚したのでしょうかテネーブル博士・・・」
「うむ、わしが女狐の打倒の為に生体ロボット達を使うと決めたとき、前々から調べてた一香の力について適正を調べたところおぬししかヒットしなかったのじゃ」
「だから、あの時覚悟をって言ったんですね・・・」
「このサイバーボディを使えば、六花を、そしてあの女狐を貶めつつ、奴らを倒すことが出来るはずじゃ!だから零児、頼む、このサイバーボディを使って、女狐達を倒してくれ・・・」

テネーブル博士は最後に土下座をしてお願いをした。

「ちなみにサイバーボディから元の肉体に戻ることは・・・」
「まだわからんが、下手すると戻れなくなるとわしは思っておる、サイバーボディと同調しすぎて、魂がサイバーボディの方が本体だと誤認する可能性があるのじゃ・・・」
「わかりました、俺の全てをかけて六花を倒しましょう・・・最近六花の弱点を探ろうと、メディアを調べたんですが、彼女が一面で自分が雑報扱いされすぎて、自分が嫌いになってきました。だから、覚悟は出来てます!そして、一香の力を使って、六花を穢し、彼女の人気をド底辺まで突き落としてやりますよ!」
「ありがとう、零児よ・・・わしは最高の部下をもったものじゃ・・・今から手術に入る!」

俺は早速麻酔をうたれ、テネーブル博士に後を任せた。

数日後、OWの日本支部では零児先輩が来なくなった原因を調べていたが、全く見つからず困っていた。
そんな中、六花は司令に呼ばれ、司令室にたどり着いた。

「失礼します、司令にそれにお婆ちゃん!?いつこっちに来てたの・・・」
「六花久しぶりだね、元気にしていたか?」
「リュミエール博士、世間話は後にして貰ってもよろしいでしょうか?」
「融通利かないねー。まぁいいさ、早く本題を言いなさい」
「わかりました。リュミエール博士がこちらに来たのは、日本にAWWの総帥テネーブル博士がいると確信したからです。」
「そうなの?」
「えぇ、テネーブルがいると思ったのはこの間の黒色の巨大なパワードスーツ、あの性能を考えると、奴が日本にいるのは間違いないかと。強い魔法を快適に使えるようにするのはあいつぐらいだからね、後六花、例のアーマー使ったでしょ!あれはお前の心臓の負担が大きいからあまり使うなと」
「リュミエール博士!まぁそういうことだ、零児君の捜索と一緒に現在AWWの日本の活動拠点を探ってる最中だ」
「わかりまし・・・」

私は司令に返事をしようとしたら緊急アラームが鳴った。

「AWWめ・・・しばらく静かにしていたが、また動き出したか。六花君一人でも行けるかね?」
「大丈夫です!零児先輩がいなくても頑張ってきます!」

私は装備を確認して、水色のハットを被ると急いで現場に向かった。

「リュミエール博士、孫娘さんなら大丈夫でしょう。これまでも結果を出してきたのですから」
「けれど嫌な予感がするわ・・・司令さん、車を出してくれないでしょうか。今回ここに来たのは、テネーブルがここにいると確信した事が一点、もう一点は孫娘の事考えてたら最近ずっと嫌な予感がして、テネーブルが追放される時と同じ感じがして・・・」
「ふぅー、わかりました、スタッフに何とか現場に送ってもらうようにしましょう。ただし、貴方自身、これからの世界に必要な存在です。無理しないでください」
「わかりました、それではお願いしますね」

リュミエール博士もスタッフの準備が終わると車で現場に向かった。

「現場に到着っと、相変わらずみんなに迷惑する連中ね!」

私はそういうと銃を持ち、パワードスーツを着たAWWの構成員を吹っ飛ばしていった。すると、大剣をもった黒色のパワードスーツを着たあの時の幹部級の奴が現れた。

「六花、ようやくこの時が来たね・・・この間のリベンジ果たさせて貰うわ!」

幹部級の奴はそういうと、持っていた大剣を持ちながらジャンプして飛び込んできた。
私は冷静に対処して躱そうとしたが、動きを読んでいたらしく、私が移動しようとしたところにパワードスーツのバーニアを使って一気に向かって来た!
私は何とか防御を間に合わせようと風で防御壁を張って何とか逸らせたが、衝撃波が襲い掛かってきた。

「きゃ!嘘どうして?!」
「あんたの事はAWWの総動員をかけて研究させてもらってね、動きはほとんど読めるのよ!だけど、見慣れない魔法を使うんだね。ち、新しい魔法覚えたのか・・・ならデータは参考程度にして、どんどん強烈な一撃で追い込むしかなさそうね!」

幹部級の奴は先ほど叩き込んだ大剣をすぐに持ち直してなぎ払って来たけど、私は瞬時に反応して、そして速攻で決めないといけないって思い、すぐにアーマースーツを装着しながら回避をした。

「ち、そいつは!」
「貴方相手に時間かけた方がきついって思ったからね、そして貴方はあの時の私の必殺技を耐えた!だから、新必殺技で一気に勝負をかけます!」
「ってもう一丁の銃ですって!」

私はもう一つの銃を召喚して、一気にアーマースーツに充電されていたエネルギーを魔力に変換して、二丁の銃に込めて、一気に解き放った。
相手もパワードスーツのバリアを全力で展開していたけど、次第にひび割れそして、パワードスーツが砕け散って爆発した。

「やったー!あいつもこれで倒した!ってえ?」
「ふぅー、危なかったわ。パワードスーツのバリアと耐久性を信じて、貴方のビーム砲を相殺するために炎のバリアを一瞬で展開して、爆発させてやっとだなんて。パワードスーツ壊しちゃったから、後でテネーブル博士に怒られるね。そして、相変わらず、ふざけた馬鹿力ね・・・まぁ、今のあたしも同じこと出来るって思うと笑えるけどね」
「なんで、私と似た顔してるの・・・」

敵が爆発したと思ったら、どうやらパワードスーツだけ砕け散ったらしく、爆発した際に起きた煙から現れたのは、私と似た顔をしたスーツに紫のマント、そして今取り出した紫のハットを被った少女だった。

「これについては・・・おっと、ちょうど説明する手間が省けましたね。女狐が来ましたよ、テネーブル博士」

敵の少女がそういった後指を鳴らしたら、彼女の頭上からスクリーンが映った。
そして、OWの車が来たと思ったら、そこからお婆ちゃんが出てきた。

「テネーブル、貴方まさか!」
「久々じゃな、リュミエールよ。政府に媚びし手段を選ばん女狐よ。そんな貴様にふさわしい罰を用意したわい!」
「なんてことを・・・貴方に預けた私の家族を、一香をこんな形で復活させるなんて!」
「え、嘘・・・お姉ちゃんはあの時の事故で私に心臓を託して・・・」
「二人ともいい反応じゃわい。だがリュミエールよ、わしでも死者の完全復活は出来んわい。わしがしたことは、一香の肉体を六花と同じぐらいの年齢になった姿を想定して、おぬしの息子夫婦の肉体の一部を機械化して加工、後はわしの魔法科学で強化したぐらいじゃわい」
「それで息子夫婦にまで手を出したのはたとえ昔の同僚でも許せないわ!」
「やかましいわ!おぬしこそわしの研究の泥棒してわしを辱めおって!」
「テネーブル、貴方が追放された後、私の案より、貴方の方が素晴らしいと思い、政府に頼んで再開させたのに・・・」
「それで広がったのは格差だけじゃ!おぬしが知らんとは言わせんぞ。おぬしが開発した魔法科学は、わしのコピー品で尚且つ政府によって制御された粗悪品!おぬしは世界を救っておらん!おぬしがやったのは上が下を管理しやすくしたにすぎんわ!だからこそわしはAWWを結成させ、上も下も格差がない世界を作り上げるのじゃ!」
「だからって、人を傷つけて自分の正当性を認めようとするのもおかしいわ!厳しい環境にいたとしても努力した零児先輩みたいな人もいるし貴方が言う、下の人でも活躍出来るのよ!」
「六花、貴方・・・」
「お婆ちゃん、後は私に任せて、基地に早く戻って。お婆ちゃんが必要な人はまだたくさんいるから!」
「ありがとう、六花。私にはもうテネーブルを止める資格なんてないけれど、貴方ならきっとテネーブルを止められるわ。頑張ってね」
「うん!」

お婆ちゃんはスタッフに連れていかれてまた車で移動していった。

「リュミエールは帰ったか。まぁいい、あの女狐に必要な事は言ったからのー。さて六花よ、復活した双子の姉を止めることは出来るかの?」
「やって見せるわ、テネーブル。私は貴方がいう上の人かも知れないわ。けれど、私は零児先輩から人々を助ける勇気と努力をテレビを通じて教えてもらったわ。だからこそ、私は彼のように人々を助ける為にAWWを止めます!」
「それで喜ぶのは下ではないわ、上の愚か者だけじゃ!世間知らずの嬢ちゃんが知ったような口を!やれ一香!世間知らずのあの妹に鉄槌を下すのじゃ!」
「ふぅー、やっと私の出番ね。それにくだらない事も言うのね・・・テネーブル博士の言う通り、本当に世間知らずの妹ね。そこで眠ってなさい!」

一香は持っていた大剣を方天画戟に変形させ、一気に突撃してきた。

「くぅ!」

私は風のバリアを纏ったけど一香の方天画戟はそれを余裕で貫通して来たけど、何とか軌道を逸らすことに成功して回避した。

「相変わらずその風のバリア鬱陶しいわね、これでもダメなら何がいいかしら・・・」
「一香よ、わしが隙を作ってあげようではないか。さて、六花よ、リュミエールの奴には言わなかったが、奴にはあれと接点が少ないし、もうあの時点で、精神が参っておったからの。後は六花貴様を葬ることであの女狐にとどめを刺す為にいいことを教えてやろう」
「なに?」
「貴様が憧れてる先輩の行方についてじゃよ」
「え?先輩はどこ?ってやっぱりあなたたちの仕業だったのね!」
「フフフ、何を言っておる目の前に立っておるじゃないか」
「え?どういうこと」
「一香の肉体を入れ物として、魂は憧れの先輩零児で構成されておるのじゃ!」
「え、そんなの嘘よ、先輩がどうしてお姉ちゃんの体で・・・」
「わしの理想と共感し、ちょっと前からOWを辞めて、AWWの幹部として頑張ってくれたのじゃ。そして今回の為にサイバーボディとして改造した一香の肉体を使うと決心してくれたからの。まぁ、魂とボディの同調率が高すぎて、もう元の肉体に戻れなくなってしまったがの。AWWにやられて死亡したってことにするために近くの山に元の肉体を放置しておったのじゃが、やはり腐った人間が集まったOWの連中じゃわい、杜撰な捜索のおかげでまだ行方不明扱いだからのー!おぬしを騙すため、そしてこれから女の子として生きていく先輩には、元の一香の性格に近い男勝りな性格にしたおかげでいい感じの口調になったわい」
「そんな・・・嘘って言ってください先輩!」
「本当だよ、六花。元の肉体に戻れなくなったから改名して今の私は、青野零子あおのれいこよ。それに好き勝手さっき、私の事言ってくれたわね。私の気持ちも知らないで。私の人気を奪った泥棒猫が!」
そういうと先輩は方天画戟から紫炎を纏った斧に変形させ、思いっきり横になぎ払ってきた。私は動揺してバリアも展開出来ず、まともにくらって地面に倒れ込んでしまった。

「私に憧れてOWになったって、あんたがしたのは、苦しんでいる人を吹っ飛ばして、マスコミやOWの上層部の機嫌取りよ!そのせいで私はいるだけの人になって、そして、本当に救いを求める人の邪魔をしていたのよ!この世間知らずのエリートが!」

そういって先輩は斧から紫炎を纏ったレイピアに戻して私の心臓を貫こうとし、私はもう諦めかけていたその時、謎の障壁が私を守ってくれた。

「な!?」
「六花」
「もしかして本物のお姉ちゃん?」
「馬鹿な、降霊術なんて使っておらんぞ!まさか一香の肉体と心臓が揃ったから起こった共鳴現象か!」
「六花、私の魔力全部貴方に渡すよ。だから私の肉体を使って悪さする連中をやっつけちゃって!」
「うん、わかった!」
「馬鹿な、どんどん私の魔力が吸われていく・・・」
「先輩、私は私の信じる道を貫く、貴方にそう教わったから!」

私は泣きながら二丁の銃を一つにして、吸った魔力を全解放して、解き放った!

「いっけー!」

先輩は吸われていなかった魔力を使って炎のバリアを展開していたが、それすら貫き、テネーブル博士が映し出されていたスクリーンごと、何とか先輩を吹っ飛ばしたように見えたが

「ふぅ、危なかった。サイバーボディを守るためにもう一個パワードスーツ着ていたのよね」

と先輩は私の攻撃のダメージによって機械部分が剥き出しになったお姉ちゃんの体で言った。

「さすがにこれ以上は無理ね・・・撤退するわ。六花、絶対に貴方を今度こそ倒すから・・・」

そういって先輩は指パッチンするとAWWの構成員が現れて、先輩を回収していった・・・
「先輩・・・私、先輩もみんなも救い出して、そしてお婆ちゃんと一緒にこの世界をより良い形にするから!」

そう私は決心して、基地に戻ることにした・・・。
「テネーブル博士、申し訳ございません。」
「わしもあの現象に関しては想定外じゃ・・・だが奴をあそこまで追い詰めた。次こそは勝つぞ!だがコテンパンにやられたのー・・・だから今は休め零子よ・・・」
「わかりました博士・・・」

そういって私は眠りについた・・・。

「女狐に六花よ!お前たちの偽善は無駄だということを今度こそ思い知らしめてくれるわ!それに今回の件、完璧に成功していれば一気にOWを打開出来たものを。まぁいい、予定通りマスコミ共に例の情報を流すとするかの・・・」

今回の一件はマスコミによってどう報道するか分かれた。
一方はテネーブル博士によって暴かれた真実を基に、私達を非難する記事が、もう一方は、真実を知りつつも私達を応援してくれる記事と両極端だった。
それでも私は頑張ることを決意し、次の戦いに備えた・・・。

そしてこの先も二人の戦いは続いていった・・・。
一方は先輩やみんなを救おうと、もう一方は全ての弱者を救うために・・・
二人の戦いはいつもメディアでは一面記事として掲載され、零子の人気は取り戻すことに成功していたのだった・・・。

講評

評価基準について

定義魅力提示総合
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評点一覧

出自や外見、成果を理由にこぞってメディアに取り上げられるヒロインに対し、活躍しながらもその陰に隠れてしまったヒーローがコンプレックスを感じ、敵の手を取って最終的に元いた組織に反旗を翻す、組織筆頭の悪堕ちヒロインになるという、オーソドックスな悪堕ち展開となっている。
「人気」という作品のタイトルに因んで、人気に対するヒロインとヒーローの考え方の違いが浮き彫りになっていき、その人気が失われつつある中で人気にこだわり続けたヒーローの人気が、敵味方で決別することで最終的には取り戻されるという話の流れもコンセプトに沿っていると言える。
悪の組織も単純な悪というわけではなく、かつての共同研究者の片割れが、自ら経験した境遇や現状の格差を嘆いて悪の組織を立ち上げているという設定は理解できるものであり、その技術の内容は倫理にもとるとはいえ、ヒーローを女体化悪堕ちとも呼べる状態にさせ、宿敵である博士の孫娘であるヒロインと敵対させるようにする流れも悪の組織としては興味深い。ヒロインにとってはその姿は姉であり、また同時に中身は尊敬していた先輩が堕ちた姿というのも、悪堕ちとしては皮肉が効いている。

作品全体から見れば「悪堕ち」をテーマとした作品となっているものの、両組織共に裏事情があり、悪堕ちとして表現するべき肝心の「悪」は揺れ動いており魅力的に固めきれていないほか、堕ちる際のヒーローの決断もあっさりしているため、悪堕ち作品という観点では内容が薄く感じられる。
また、キャラクターの台詞が多く存在するが、キャラクターが言いたい台詞を繋ぎ合わせており、結果的に独り言のようにずっと喋っていることが多い。キャラクター同士の会話のキャッチボールが成立しておらず、これによってキャラクターの深掘りが行われず、またキャラクター同士の関係性が薄く感じられてしまう。同じように、地の文を含め、全体的に設定を列挙することで作品を進行しようとする作品構成になっており、淡々と話が進むことで話の盛り上がりにも欠ける。

誤字脱字も多く(※本掲載時点で修正している)、まずは書き上げた後に落ち着いて自分の作品を読み返し、読者に伝わる言葉遣いになっているかという観点で表現を見直してほしい。その上で、本当に自分が表現、強調したいことはなにかを明確に思い描き、それに沿って台詞や地の文を取捨選択して整理し、自然な展開となるように心掛けると、より良い作品になっていくだろう。