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  • 2024年9月6日

どうなるPTA 首都圏でも解散の動き「地域への移行」などがカギ?

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PTAをめぐっては、加入するかどうかや、役員決めといった活動にモヤモヤしている人も多いかもしれません。課題となっているのは「保護者の負担感」です。岡山県では都道府県レベルの組織が解散を決めました。そして、首都圏各地でも組織の解散やボランティアへの移行なども始まっています。令和のPTAのあり方を模索する動きを追いました。

首都圏局/記者 佐藤美月

千葉・流山の小学校 PTA解散を検討

千葉県流山市の小山小学校のPTAでは、これまで行ってきた活動を地域に移行するなどして、2024年度で解散することを検討しています。

この学校のPTAでは、朝の登校時に子どもたちを見守る「旗当番」などの活動について、割り当てではなく希望する日程に入るようにして負担感を減らす工夫をしてきましたが、予定の調整役などを担うPTA本部の役員については、担い手不足が課題になっていました。

そこで、今年度(2024)からボランティアの募集や調整など役員が行っていた業務を地域のコーディネーターに依頼する運用を始め、PTAの枠組みがなくても活動が継続できる手応えを得たということです。「地域コーディネーター」はボランティア活動支援のため教育委員会からの委嘱で、各地域に配置されている住民で、活動への参加を希望するボランティアの保護者とスマホでやり取りできる連絡ツールを使って、予定を調整します。

一方、これまではPTAが保護者から徴収していた会費年間100万円程度が学校の備品購入などにあてられていましたが、PTAでは、「これからは必要な費用は、学校側で募金を呼びかけてほしい」としています。

流山市立小山小学校PTA会長 峰松拓毅さん
「PTAが果たす役割は大事だが、PTAという形ではなく、既存の枠組みを活用しようと考えました。どの時代でも、学校の先生と保護者のコミュニケーションは大切なので、これまでの形にこだわらず、それぞれの地域にあった最適解を話し合ってできればいいと思っています」

解散した小学校“デメリット感じず”

では、実際に解散した学校の現状はどうなのでしょうか。東京・立川市の市立柏小学校のPTAでは、保護者にPTAの今後のあり方について、アンケートを取ったところ、ほとんど全員が解散を希望したということで、2022年度いっぱいで解散しました。

これにより、小学校では、これまでPTAに依頼していた学校行事の手伝いなどを、学校みずから保護者に呼びかけて募集することにしました。お願いする仕事の内容を簡略化したほか、募集人数を減らすことで、PTAを介して保護者に活動を割り当てなくても対応できているということです。

また、通学路で危険がないよう旗を振って見守る活動について、現在は希望する保護者が任意で続けているということです。活動に参加する保護者からは、PTAの解散は困らないとする一方で、不安もあると話します。

保護者

役員決めの負担もなく、やりたい人やできる人が都合に合わせて学校に関われるので、困りごとは感じていません。今後、活動に参加する人が減ってしまうと、旗振り活動などでも、人が足りずに安全を保てなくなるのではという不安はあります

立川市立柏小学校 津山武士副校長
「PTAが解散しても、特段のデメリットは感じていません。世の中や保護者の生活が変わっていくのに、合わせていくのが大切で、昔からの形にこだわらず、無理なくできることをできる時間で行うのがいいのではないか」

PTAが“教員の負担軽減につながる”学校も

一方で、教員の業務負担の重さが課題となる中、PTAによる支援活動が教員の負担軽減につながっているという学校もあります。

東京・新宿区の区立西新宿小学校では、教員の業務負担を減らそうと、数年前から休み時間の校庭遊びの見守りを、PTAを通して保護者に依頼しています。取材に訪れた日には、20分間の中休みの時間に、校庭に保護者が立って危険がないか見守っていました。

こうしたPTAの支援によって、教員は休み時間に教材を準備するなど他の業務に専念することができます。また、昨年度(2023)は、図工の教員が病欠し、担任が図工の授業を行わなければならなくなった際に、担任の代わりにPTAの保護者に授業の補助を行ってもらいました。学校活動のためPTAの支援が重要な役割を果たす一方で、保護者が負担を感じているという声もあり、学校では負担の少ない活動のあり形を模索しているといいます。

新宿区立西新宿小学校 長井満敏校長
「保護者が協力的にやっていただく中で、教員は本来の教材研究や授業の準備に力を注げるため、学校全体としてプラスになっています。ただ共働きが増え、協力ができない家庭も増えてきているので、今後は地域の人にも積極的に協力をお願いしていきたい」

都内の協議会の会員数は減少傾向

都内には各学校のPTAが参加する「東京都PTA協議会」という組織がありますが、協議会によりますと、近年、会員数の減少傾向が続いているということです。かつては都内の多くの学校が加入していたといいますが、2022年度には、会員となっている学校は全ての学校のおよそ15パーセントに当たる190校にまで落ち込みました。協議会では、共働き家庭の増加に加え、PTAへの加入が任意であることが広く知られるようになったことなどが原因だと分析しています。

こうした中、少しでも負担を減らそうと、2023年に会員制度を撤廃して会費の徴収もとりやめたほか、対面での勉強会や研修会を廃止しました。さらに、PTAの活動をスムーズにするためオンライン会議などのITツールを無料で提供しています。

東京都PTA協議会 岡部健作会長
「PTAへの加入が、任意であることが認知されてきて、『入らなくてもいいなら入らない』として、会員が減ってしまったのではないか。前例踏襲ではなく、各学校のPTAの役員が少しでも活動しやすくようになるよう新しい組織を作っていきたい

専門家“解散の流れは今後も”

PTAに詳しい文化学園大学の加藤薫教授は、今後のあり方について、以下のように話しています。

文化学園大学 加藤薫教授
「共働きの増加により担い手が減る中で、解散する学校単位のPTAも出てきている。こうした流れは、今後も起きるのではないか。これまでPTAは、集金機能と学校運営の補助をする人手の確保の役割を担ってきたが、必要な用具などは公金で購入するべきだ。人手については、PTAを介さずに、学校から直接ボランティアをできる範囲で集めたり、活動の規模を縮小するなどの対応が必要だ」

みなさんのPTAをやっていて良かったと感じたことやモヤモヤしていること、悩みや疑問なども、ぜひこちらよりお寄せください。

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