法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

『この素晴らしい世界に爆焔を!』雑多な感想

この素晴らしい世界に祝福を!』の作者自身によるスピンオフを2023年にTVアニメ化。これが初監督となる安部祐二郎はシリーズ初参加だったが、TVアニメ本編3期の監督にも抜擢された。

 内容としては本編の主人公パーティーメンバーのひとり、爆裂魔法少女めぐみんの成長と旅立ちから仲間との出会いまでを描くスピンアウト前日譚。
 TVアニメは1期も2期もラフな絵柄で楽しい作画だったが、こちらは監督以外はほとんど同じスタッフなのに全体的にラフというよりへちょい。作品の雰囲気にはあっているし、良い作画も定期的にあるが、明らかに水準がさがっている。
 また本編はメインキャラクター4人がボケあいながらツッコミを分担して、ふりまわされるゲストキャラクターとあわせて濃密なギャグ空間をつくりだしていた。一方こちらは単純にボケ人数が25%にまで減ってしまい、ふりまわされるキャラクターもほぼ相方のゆんゆんひとりに固定され、つまりギャグは半分以下に薄くなって方向性も一種類になり、パワーダウンした感は否めない。
 本編では誰もがクズ行為をはたらくからこそ相互に強くツッコミが入るのに、善良なツッコミ役の相方が気弱なのでクズ行為へのエクスキューズが弱まっているところもある。特に相方がクラスメイトからたかられていた問題の解決は甘すぎる。
 かわりに主人公と相方の少女同士の愛着は濃くなり、劇中で言及されるように百合度は増している。さらに後半に入って典型的なセックスモンスター的なバイセクシャルキャラクターも登場し、ファンタジー舞台の百合ギャグアニメとしては密度が高くなった。メインキャラクターで最も真面目で純粋な相方が先に百合キャラクターとして存在しているので、セックスモンスターとセクシャルマイノリティがイコールになっていないことが地味に良い……いや、なっていないというのは過言で、良いとはいえないか……
 とはいえ、後半からは本編のさまざまな珍事件の原因に主人公の行動があったと明かされたり、出会う以前の本編の主人公チームが群集にとけこんでニアミスをくりかしたりと、後づけ前日譚の面白味を感じさせる描写も多くなっていく。それもふくめて公式外伝でありながら本編を補完するタイプの非公式二次創作のような印象ではあったが、最終的にはそう悪くない作品になったとは思えた。