コンサートやスポーツ観戦のチケットの高額転売などインターネットでのチケット転売をめぐるトラブルの相談件数はここ数年、大幅に増加しています。
旧ジャニタレント所属STARTO社 転売サイトに情報開示を請求
コンサートやスポーツ観戦などのチケットの高額転売が問題となる中、旧ジャニーズ事務所のタレントが所属する会社などが高額転売者を特定するため大手転売サイトに対し法律に基づいて情報開示を求める手続きをとったことがわかりました。
転売サイトに対し民間企業が高額転売者の情報開示を求めるのは、異例だということです。
横行する高額転売 ファンからは不満の声
都内に住む20代の女性は、仕事終わりの平日の夜や土日の休みを利用して週1回程度は応援するお笑いコンビやロックバンドのライブイベントに出かけているといいます。
8月、お笑いライブのチケットの抽選で落選し残念に思っていたところ、転売サイトで正規の価格の5倍の1枚2万円で出品されているのを見つけました。
女性は出演するお笑いコンビの大ファンで、できることならチケットを手に入れたいという思いはありましたが、あまりにも高額だったため購入を踏みとどまったといいます。
こうした高額転売は、営利を目的としたいわゆる“転売ヤー”が人気のチケットを買い占めて不正に転売しているケースもあるとされています。
ファンの女性
「“転売ヤー”にチケットが届いていたとすれば悲しいし悔しいです。本当に行きたい人にチケットが行き渡らないのはおかしいと思います」
また女性は過去に、SNSで転売されていたチケットを購入しようとした際に代金をだまし取られたこともあったということです。
高額転売が相次いでいる現状について、ファンの気持ちにつけ込む行為はやめてもらいたいと訴えたうえで、こう話しています。
ファンの女性
「高額で売られたものを買ってしまえば、また高額転売が横行してしまうと思う。私に限らずファンの方は転売されたチケットに食いついてしまうことも多いですが、欲しくても買わないというのが一番だと思う」
チケット転売トラブル 大幅に増加
国民生活センターによりますと、全国から寄せられたインターネットでのチケット転売に関する相談件数は
▽2019年度は4693件と過去最も多くなりましたが、新型コロナの感染が拡大しイベント自体が中止になった影響で
▽2020年度は322件と大幅に減少しました。
しかしその後は
▽2021年度が843件
▽2022年度が1690件、
▽昨年度は1060件と、イベントの再開に伴って再び増加しています。
営利目的でチケットの高額転売を繰り返し警察に検挙されるケースも相次いでいます。
ことし5月には、アイドルグループのファンクラブのサイトにうその情報で会員登録しコンサートチケットを不正に購入したほか、正規の2倍以上の価格で転売したなどとして、札幌市の男女4人が北海道警に逮捕されました。
去年までの2年間におよそ2億円を売り上げていたとみられています。
また、3日にはミュージカルのチケットを不正に転売したとして埼玉県の夫婦が警視庁に書類送検されました。
夫婦はチケットの転売を繰り返し、5年間で1000万円以上を売り上げていたとみられ、調べに対し「複数のチケットを買ってよい席以外は転売していた。転売した利益で行きたい公演のチケットを買っていた」などと供述しているということです。
旧ジャニーズ タレント所属会社 悪質なケースには被害届けも
高額転売は個人どうしでチケットを売買できる「転売サイト」やSNSでアイドルなどのコンサートを中心に増えているということです。
旧ジャニーズ事務所のタレントが所属する会社「STARTO ENTERTAINMENT」などが調査したところ、所属する7つのグループのコンサートなどのチケットが、大手転売サイトで正規の価格のおよそ10倍の1枚10万円以上で出品されているケースが少なくとも248件確認され、1枚25万円で売られていたこともあったということです。
調査を受けて会社、それに会社と契約するイベント運営会社が不正な転売への対応で業務に支障が出たなどとして先月、大手転売サイトに対し法律に基づいて高額転売者の情報開示を求める手続きをとったことがわかりました。
これに対し、サイト側からは「情報を開示することが相当であると判断できない」などと回答があったということで今後、イベント運営会社が、裁判所に情報開示の申し立てを行うということです。
業界団体によりますと、転売サイトに対し民間企業が高額転売者の情報開示を求めるのは異例だということです。
会社側は悪質なケースについては警察に被害届けを出すことも検討するということです。
会社側の代理人 中島博之弁護士
「チケットの価格は幅広い年齢層に来ていただくため、おおむね1万円以下に設定されている。ファンを食いものにする行為に対しては断固とした措置をとる」
業界団体「抜本的対策は難しい」
転売サイトやSNSでは、人気のアイドルグループのコンサートや注目度の高いスポーツの試合観戦などのチケットを中心に高額で転売されているケースが見られますが、業界の関係者は抜本的な対策が難しいのが現状だと話します。
イベント運営会社やチケット販売会社などで作る「チケット適正流通協議会」によりますと、コロナ禍によるイベント中止や規模縮小で業界から人材が流出してしまい、その後、イベントが再開されるようになっても、業界全体として人材が確保できず人手不足の状態になっているということです。
加えて、イベントの予算も限られる中で本人確認を徹底するなどのチケットの転売対策が十分にとられないケースが少なくないといいます。
業界では悪質なケースは警察にも相談しながら対応しているということです。
チケット適正流通協議会 事務局 石川篤さん
「本人確認に人手をかけて、予算を出せるイベントは多くなく、細かく対策ができなくて非常に苦しい状況です。行きたい公演に行けず、悔しい思いをされるのはよくわかりますが、その思いにつけ込む誘いに安易にのらないようにしてもらいたい」