生成AIスタートアップ Sakana AI エヌビディアから出資と発表

生成AIを開発している日本のスタートアップ企業、「Sakana AI」がアメリカの半導体大手、エヌビディアから出資を受けると発表しました。

アメリカの巨大IT企業をはじめ、世界でAIの開発競争が激しくなる中で、新興企業の囲い込みも活発になっています。

「Sakana AI」はアメリカのIT大手、グーグルで生成AIの研究開発を行ってきたメンバーらが東京で立ち上げたスタートアップ企業で、4日、アメリカの半導体大手、エヌビディアから出資を受けることになったと発表しました。

出資比率や金額は明らかにしていませんが、持ち株比率が上位の大株主になるということです。

エヌビディアが手がけるAI向けの半導体は、その高い画像処理性能から高いシェアを持つ一方、生成AIの普及に伴って世界的な争奪戦が起きています。

会社としては、出資を受けることで、開発を加速できるメリットがある一方、エヌビディア側も生成AIを手がける企業と連携することで需要に沿った半導体開発につなげるねらいがあります。

「Sakana AI」の伊藤錬最高執行責任者は「エヌビディアと組むことで日本で世界級のAIのリサーチラボを作りたい。日本の特性を生かした研究開発を行っていく」と話しています。

生成AIをめぐっては、グーグルやアップルなどの「GAFAM」と呼ばれる巨大IT企業をはじめ、世界で開発競争が激しくなっていて、新興企業の囲い込みも活発になっています。

「Sakana AI」グーグルの研究者ら東京で設立

「Sakana AI」はアメリカのIT大手、グーグルでAI開発に携わった研究者らが去年7月に東京に設立したスタートアップ企業です。

この会社は、複数の既存のAIを組み合わせて言語や画像の処理能力が高いAIを生み出す技術を強みとしていて、業界で高い関心が寄せられています。

ことし1月には、NTTグループやKDDIのほか、ソニーグループのそれぞれのベンチャーキャピタルなどから合わせて45億円を調達しました。

ことし7月には、AIに日本語で浮世絵の特徴を学習させることで、浮世絵風の画像を作り出す生成AIモデルを開発したと発表し、日本文化の特徴を取り込んだAIとして注目されました。

「エヌビディア」時価総額 世界1位(ことし6月)

アメリカの半導体大手「エヌビディア」は、文章や画像などを自動で生成する生成AIに必要なGPUと呼ばれる半導体の設計や開発を行っています。

GPUは、画像を処理するとともに、大量の計算も同時に処理できる高性能な半導体です。

多くの生成AIにエヌビディアが設計したGPUが搭載され、AIを開発する企業の間で連携を模索する動きも出ています。

生成AIの需要の高まりで会社の時価総額は拡大し、ことし6月には3兆ドル余りとなって、アメリカのアップルやマイクロソフトを抑えて世界1位となりました。

株式市場ではエヌビディアをはじめとする半導体関連や大手IT企業の銘柄がけん引する形で日米ともに株価の上昇が続き、日経平均株価などの最高値更新の要因ともなりました。

一方、こうした企業の決算や新たな発表の内容が市場の期待を下回ると、株価が大きく下振れする場面も出ていて、株式市場での影響力が一段と高まっています。

生成AI開発 新興企業の囲い込みの動き

文章や画像などを自動で作る生成AIをめぐっては、マイクロソフトやグーグルなど巨大IT企業をはじめとして、世界で開発競争が激しさを増しています。

生成AIは、おととし、アメリカの「オープンAI」が「ChatGPT」を公開し、活用が急速に広がってきています。

こうした動きに、「マイクロソフト」が「オープンAI」に、「グーグル」と「アマゾン」はスタートアップの「アンソロピック」にそれぞれ出資するなど、アメリカのIT大手が先行して開発を進める新興企業の囲い込みを進める動きが出ています。

日本でも開発相次ぐ

これに対し、日本でも開発の動きが相次いでいます。

▽ソフトバンクは、日本で最大規模の学習量を持つ生成AIを今年度中に完成させる方針を示しているほか

▽NTTやNECは、ことし3月から企業向けのサービスを始めています。

▽また、KDDIが、東京大学発のスタートアップ企業「イライザ」を子会社化したほか、スタートアップや研究機関の間でも開発が進んでいます。

規制の議論も

生成AIをめぐっては、生産性の向上などのメリットの一方、偽情報の拡散や犯罪への悪用といったさまざまなリスクも指摘されています。

こうしたリスクに対し、アメリカは、イノベーションを促す立場から過度な規制には慎重な一方、EUは、AIの一部の利用などを規制する法律を成立させるなど、規制に対する考え方に違いも出ています。

日本でも新たな法規制を導入するかどうか検討をしていますが、開発や普及の強化と安全性や信頼性の確保をどのように両立していくかが大きな課題となっています。

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