「サピエンス全史」の著者が警告するAIと情報の未来

「サピエンス全史」の著者が警告するAIと情報の未来
「我々は神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にあります」

世界的なベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は6年前、2018年に行った私とのインタビューでこう語りました。AI=人工知能がもたらす脅威についてまるで予言するかのような指摘です。

今年9月にはAIを含む情報の過去と未来、情報と真実、情報と権力の複雑な関係を読み解く本を出すといいます。

本のメッセージを大胆に予測しつつ、進化するテクノロジーとの向き合い方を探ります。

(国際部デスク 豊永博隆)

生成AIここまで来た!

雨上がりの夜の東京を歩く女性の動画。

ChatGPTを開発したアメリカのベンチャー企業「オープンAI」が公開した動画生成のソフト「Sora」でつくられました。

どんな動画をつくりたいか、文章で入力したただけでリアルな動画を短時間で作成してしまうといい、発表当初、世界で驚きをもって受け止められました。

入力した文章は「スタイリッシュな女性が暖かく光るネオンといきいきとした看板が埋め尽くす東京の通りを歩く。濡れた道路は、色とりどりの光の反射を生み出している」など、簡単なものでした。

“AIに政治を任せてみよう”

欧米ではAIに政治を任せてみようという動きまで出始めています。
アメリカ西部ワイオミング州の州都シャイアンの図書館で働くビクター・ミラーさんは2024年11月に行われるシャイアン市長選挙にAIの立候補を申請しました。

当局からAIの立候補は認められなかったため、本人が選挙戦に出ました。
街にはサイボーグのような絵とともに「AIを市長に」と書かれた看板も立てられました。

ミラーさんはAIのほうが党利党略に左右されることなく最適な解決策を導き出せると考えています。
市民
「あなたは共和党を支持しますか」

AI
「AIは特定の政党は支持しません」
ミラーさん
「分断を乗り越えるのが難しい今、客観的な知能であるAIはすばらしい解決策になりえます」

著名な歴史学者とのインタビュー

こうした状況を先回りして予言していたのが歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏です。
私とのインタビューは2018年8月にイスラエルのテルアビブで行われました。

このときハラリ氏は次のようにコンピューターやAIの進化に警鐘を鳴らしていました。
ハラリ氏
「コンピューターが意識を発達させて問題解決をはかるとは想像できません。最も恐ろしいシナリオは意識や感情を全く持たない超越的な知的な存在によって世界が支配されることです」

深い考えはどこから来る?

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏。

世界で2500万部が売れたという大ベストセラー「サピエンス全史」の著者です。
「サピエンス全史」は「人類種のなかでなぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか」など人類の歴史を独自の視点でひもといた書です。

ハラリ氏は1976年生まれのイスラエル出身で、イギリスのオックスフォード大学で中世史、軍事史を学び、ヘブライ大学で歴史学を教えてきました。
ハラリさんがこの本を書くきっかけとなったのは、今もイスラム組織ハマスとの激しい戦闘を繰り広げるイスラエルという国で生まれ育ったということが大きく影響しています。
繰り返し行われる紛争や戦闘を身近に感じ、なぜ人類は戦争を繰り返すのかと大きな『矛盾』を感じたハラリさん。

その答えを探ろうと軍事史の研究を続け、それを学生に分かりやすく教えようと考えを重ねてまとめあげたのが「サピエンス全史」だったのです。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教と3つの宗教の聖地があるとされる場所。
街を歩いていると、建物が語りかけてくるような歴史の重みをひしひしと感じます。

異なる宗教が交差し、衝突や矛盾が毎日の暮らしに存在する場所だからこそハラリさんの深遠な考えが醸成されるのだなと現地に行き、納得するものがありました。

鋭い刃物のような知性

実際、会ったときの印象ですが、鋭い刃物のような切れ味のある知性の塊という印象を強く受けました。
質問すると一瞬かみしめて、それを高速で処理し、深い思考に基づき、静かに、丁寧に答えてくれます。

その静かさの裏に熱い情熱も感じます。

また、例え話がうまく、難しい概念も簡単に理解できるようにしてくれるので、どんどん引き込まれていきます。

ホモ・デウスを書いた意図

日本で2018年に刊行された次作「ホモ・デウス」ではテクノロジーの進化と人類の未来について読み解き、AIの進化がもたらすリスクを警告しています。
この本のタイトル、「ホモ・デウス」はラテン語の組み合わせです。

ホモは人類、デウスは神という意味なのだそうです。

ハラリさんは本を書いた意図をこう語ります。
ハラリ氏
「私はこのタイトルを比喩ではなく、文字どおりの意味で使っています。実際われわれは神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にあります。聖書や世界中の多くの神話にあるように神々は動物や植物などを望みどおりに創造しました。現在、われわれはバイオテクノロジーとAIの助けによって生命を設計し、製造する方法を学んでいるのです」

知能と意識が初めて分離する

ハラリさんが本のなかでも、そしてインタビューでも強調していたのが「知能と意識の分離」という難しいテーマです。

歴史上、人類は「知能」と「意識」が結び付いてものごとを判断していました。

ハラリさんは知能とは「問題を解決する能力」、意識とは「物事を感じ取る力=感情」だと説明しています。

ところがこれまで密接に結び付いていた2つが、AIによって分離されようとしているというのです。

そうなると、一体どちらが重要なのかという問題が浮上し、企業や政府、軍隊はいずれ知能を優先し、意識=感情をないがしろにしかねないというのがハラリさんの問題意識です。

つまり、テクノロジーは人間らしさを次第に軽視していくのではないかと警鐘を鳴らしているのです。

“AI市長”実現せず

冒頭に記した、AIに政治を任せようと立候補したアメリカ・ワイオミング州のミラーさんは8月20日の予備選で敗退しました。

投票者数11000人余りに対して327票しか獲得できませんでした。

ただ、ミラーさんはメディアへのインタビューで「AIを候補者名簿に載せ、有権者にAIによる統治という画期的な選択肢を提供した最初の人物だ」と自信たっぷりに語ったそうです。

この選択肢が人類にとって幸せなものなのかどうか、議論は分かれそうです。

多くの人が“無用者階級”になる?

AIが進化していくとどうなるのか、ハラリさんはインタビューでは次のような恐ろしい未来図を指摘していました。
ハラリ氏
「AIを使えばコンピュータによって多くの作業が行われるため、人間は労働市場から追い出され、多くの人が経済的価値や政治力を失い、“無用者階級”となります。バイオテクノロジーによって、経済的でなく、はじめて生物学的な不平等が生まれるのです」
生成AIの導入による失業がアメリカでも話題になってきていますが、そのことを2018年に予言していたことになります。

AIとどう向き合えばいいの?

AIなどのテクノロジーの進化、そしてあふれかえる情報とどう向き合ったらいいのか。

ヒントとなりそうなのがハラリさんの新しい著作です。
タイトルは「Nexus」、2024年9月10日に英語版が刊行されます。

日本語版は来年春の刊行予定だそうです。

この本のテーマは「情報」あるいは「情報技術」となっています。

公開されている文書によれば、石器時代から、近世の魔女狩り、ナチズム、そして今日のポピュリズムの台頭まで、歴史的な視点から「情報」をとりあげ、情報と真実、情報と官僚制や神話、権力との複雑な関係を読み解くといいます。

新刊は何を語る?

新しい著作では人類史のさまざまなフェーズごとに情報がどのような役割を担ったのか、情報を握った権力者などがどのように情報を用いて目的を達成したのか、それがどのようにして今の危うさにつながっているのかなどが壮大なスケールで示されるのではないかと推測します。

厳しい未来が示されそうですが、これまでの傾向として、ハラリさんは絶望だけを描くことはしませんでした。

最後の希望の光、そのために何をするべきなのかも示してきました。
私とのインタビューでも歴史を学ぶ意味は過去を知ることではなく、これから正しい選択をするためにあると語っていました。

そして、先端テクノロジーの脅威から身を守る方法について、次のように語っていました。
ハラリ氏
「今やわれわれはハッキングされる動物です。アマゾンやグーグル、中国政府やアメリカ政府はハッキングに必要な膨大なバイオテクノロジーとコンピューターの知識を蓄積しています。自分自身をよりよく知る努力をしなければ、彼らがあなたの選択を予測するだけでなく、欲望も操作されてしまうのです。一番重要なことは自分自身を知ることだと思います。自分が何者であるのかを理解することです。あなたの心はどんな声を発していますか。あなた以外にあなたのことを理解できる人は誰もいません。他の誰もあなたの頭の中をのぞいて見ることはできないのです」
新刊でも膨大な情報に左右されないための自分なりの軸をもつことの大切さを最後は訴えるのではないかとみています。

ちなみに本のタイトル、Nexusの英語の意味は「つながり、むすびつき」という意味です。

情報と私たち人類のむすびつきと解釈すると、いろんな深い知見や洞察が得られそうです。

情報の渦に飲み込まれないために

産業革命以降、次々と新しい技術が登場し、私たち人類はその恩恵にあずかって経済を豊かにしてきました。

生成AIを含むAI技術もビジネスを圧倒的に効率化し、生活をより便利にしてくれるものなのでしょう。負の面があるからと警戒して「後ずさり」したり、「使わない」という選択はもったいない気がします。

一方で、AIはこれまでとは根本的に違う、革新的な技術であるがゆえに、使い方を注意しないと、うみだされる情報の渦に飲み込まれてしまいかねないと感じています。

それを防ぐためには、自分が何をやりたいのかをよく知り、人が主となって技術を使うことが大事なのだと感じています。

(2024年8月26日 ニュースーンで放送)
国際部デスク
豊永 博隆
1995年入局
経済部記者、アメリカ総局(ニューヨーク)、おはBizキャスター、大阪局デスク、経済部デスクを経て現職
「サピエンス全史」の著者が警告するAIと情報の未来

ビジネス
特集
「サピエンス全史」の著者が警告するAIと情報の未来

「我々は神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にあります」

世界的なベストセラーとなった「サピエンス全史」の著者でイスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏は6年前、2018年に行った私とのインタビューでこう語りました。AI=人工知能がもたらす脅威についてまるで予言するかのような指摘です。

今年9月にはAIを含む情報の過去と未来、情報と真実、情報と権力の複雑な関係を読み解く本を出すといいます。

本のメッセージを大胆に予測しつつ、進化するテクノロジーとの向き合い方を探ります。

(国際部デスク 豊永博隆)

生成AIここまで来た!

(クリックすると映像が再生されます)
雨上がりの夜の東京を歩く女性の動画。

ChatGPTを開発したアメリカのベンチャー企業「オープンAI」が公開した動画生成のソフト「Sora」でつくられました。

どんな動画をつくりたいか、文章で入力したただけでリアルな動画を短時間で作成してしまうといい、発表当初、世界で驚きをもって受け止められました。

入力した文章は「スタイリッシュな女性が暖かく光るネオンといきいきとした看板が埋め尽くす東京の通りを歩く。濡れた道路は、色とりどりの光の反射を生み出している」など、簡単なものでした。

“AIに政治を任せてみよう”

欧米ではAIに政治を任せてみようという動きまで出始めています。
ビクター・ミラーさん
アメリカ西部ワイオミング州の州都シャイアンの図書館で働くビクター・ミラーさんは2024年11月に行われるシャイアン市長選挙にAIの立候補を申請しました。

当局からAIの立候補は認められなかったため、本人が選挙戦に出ました。
街にはサイボーグのような絵とともに「AIを市長に」と書かれた看板も立てられました。

ミラーさんはAIのほうが党利党略に左右されることなく最適な解決策を導き出せると考えています。
市民
「あなたは共和党を支持しますか」

AI
「AIは特定の政党は支持しません」
ミラーさん
「分断を乗り越えるのが難しい今、客観的な知能であるAIはすばらしい解決策になりえます」

著名な歴史学者とのインタビュー

こうした状況を先回りして予言していたのが歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏です。
私とのインタビューは2018年8月にイスラエルのテルアビブで行われました。

このときハラリ氏は次のようにコンピューターやAIの進化に警鐘を鳴らしていました。
ハラリ氏
「コンピューターが意識を発達させて問題解決をはかるとは想像できません。最も恐ろしいシナリオは意識や感情を全く持たない超越的な知的な存在によって世界が支配されることです」

深い考えはどこから来る?

歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリ氏。

世界で2500万部が売れたという大ベストセラー「サピエンス全史」の著者です。
「サピエンス全史」は「人類種のなかでなぜホモ・サピエンスだけが生き残ったのか」など人類の歴史を独自の視点でひもといた書です。

ハラリ氏は1976年生まれのイスラエル出身で、イギリスのオックスフォード大学で中世史、軍事史を学び、ヘブライ大学で歴史学を教えてきました。
ハラリさんがこの本を書くきっかけとなったのは、今もイスラム組織ハマスとの激しい戦闘を繰り広げるイスラエルという国で生まれ育ったということが大きく影響しています。
爆撃を受け煙を上げるガザ地区のビル
繰り返し行われる紛争や戦闘を身近に感じ、なぜ人類は戦争を繰り返すのかと大きな『矛盾』を感じたハラリさん。

その答えを探ろうと軍事史の研究を続け、それを学生に分かりやすく教えようと考えを重ねてまとめあげたのが「サピエンス全史」だったのです。

エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教と3つの宗教の聖地があるとされる場所。
街を歩いていると、建物が語りかけてくるような歴史の重みをひしひしと感じます。

異なる宗教が交差し、衝突や矛盾が毎日の暮らしに存在する場所だからこそハラリさんの深遠な考えが醸成されるのだなと現地に行き、納得するものがありました。

鋭い刃物のような知性

実際、会ったときの印象ですが、鋭い刃物のような切れ味のある知性の塊という印象を強く受けました。
質問すると一瞬かみしめて、それを高速で処理し、深い思考に基づき、静かに、丁寧に答えてくれます。

その静かさの裏に熱い情熱も感じます。

また、例え話がうまく、難しい概念も簡単に理解できるようにしてくれるので、どんどん引き込まれていきます。

ホモ・デウスを書いた意図

ホモ・デウスを書いた意図
日本で2018年に刊行された次作「ホモ・デウス」ではテクノロジーの進化と人類の未来について読み解き、AIの進化がもたらすリスクを警告しています。
この本のタイトル、「ホモ・デウス」はラテン語の組み合わせです。

ホモは人類、デウスは神という意味なのだそうです。

ハラリさんは本を書いた意図をこう語ります。
ハラリ氏
「私はこのタイトルを比喩ではなく、文字どおりの意味で使っています。実際われわれは神の能力だと伝統的に考えられてきた力を入手する過程にあります。聖書や世界中の多くの神話にあるように神々は動物や植物などを望みどおりに創造しました。現在、われわれはバイオテクノロジーとAIの助けによって生命を設計し、製造する方法を学んでいるのです」

知能と意識が初めて分離する

ハラリさんが本のなかでも、そしてインタビューでも強調していたのが「知能と意識の分離」という難しいテーマです。

歴史上、人類は「知能」と「意識」が結び付いてものごとを判断していました。

ハラリさんは知能とは「問題を解決する能力」、意識とは「物事を感じ取る力=感情」だと説明しています。

ところがこれまで密接に結び付いていた2つが、AIによって分離されようとしているというのです。

そうなると、一体どちらが重要なのかという問題が浮上し、企業や政府、軍隊はいずれ知能を優先し、意識=感情をないがしろにしかねないというのがハラリさんの問題意識です。

つまり、テクノロジーは人間らしさを次第に軽視していくのではないかと警鐘を鳴らしているのです。

“AI市長”実現せず

“AI市長”実現せず
冒頭に記した、AIに政治を任せようと立候補したアメリカ・ワイオミング州のミラーさんは8月20日の予備選で敗退しました。

投票者数11000人余りに対して327票しか獲得できませんでした。

ただ、ミラーさんはメディアへのインタビューで「AIを候補者名簿に載せ、有権者にAIによる統治という画期的な選択肢を提供した最初の人物だ」と自信たっぷりに語ったそうです。

この選択肢が人類にとって幸せなものなのかどうか、議論は分かれそうです。

多くの人が“無用者階級”になる?

AIが進化していくとどうなるのか、ハラリさんはインタビューでは次のような恐ろしい未来図を指摘していました。
ハラリ氏
「AIを使えばコンピュータによって多くの作業が行われるため、人間は労働市場から追い出され、多くの人が経済的価値や政治力を失い、“無用者階級”となります。バイオテクノロジーによって、経済的でなく、はじめて生物学的な不平等が生まれるのです」
生成AIの導入による失業がアメリカでも話題になってきていますが、そのことを2018年に予言していたことになります。

AIとどう向き合えばいいの?

AIなどのテクノロジーの進化、そしてあふれかえる情報とどう向き合ったらいいのか。

ヒントとなりそうなのがハラリさんの新しい著作です。
タイトルは「Nexus」、2024年9月10日に英語版が刊行されます。

日本語版は来年春の刊行予定だそうです。

この本のテーマは「情報」あるいは「情報技術」となっています。

公開されている文書によれば、石器時代から、近世の魔女狩り、ナチズム、そして今日のポピュリズムの台頭まで、歴史的な視点から「情報」をとりあげ、情報と真実、情報と官僚制や神話、権力との複雑な関係を読み解くといいます。

新刊は何を語る?

新しい著作では人類史のさまざまなフェーズごとに情報がどのような役割を担ったのか、情報を握った権力者などがどのように情報を用いて目的を達成したのか、それがどのようにして今の危うさにつながっているのかなどが壮大なスケールで示されるのではないかと推測します。

厳しい未来が示されそうですが、これまでの傾向として、ハラリさんは絶望だけを描くことはしませんでした。

最後の希望の光、そのために何をするべきなのかも示してきました。
私とのインタビューでも歴史を学ぶ意味は過去を知ることではなく、これから正しい選択をするためにあると語っていました。

そして、先端テクノロジーの脅威から身を守る方法について、次のように語っていました。
ハラリ氏
「今やわれわれはハッキングされる動物です。アマゾンやグーグル、中国政府やアメリカ政府はハッキングに必要な膨大なバイオテクノロジーとコンピューターの知識を蓄積しています。自分自身をよりよく知る努力をしなければ、彼らがあなたの選択を予測するだけでなく、欲望も操作されてしまうのです。一番重要なことは自分自身を知ることだと思います。自分が何者であるのかを理解することです。あなたの心はどんな声を発していますか。あなた以外にあなたのことを理解できる人は誰もいません。他の誰もあなたの頭の中をのぞいて見ることはできないのです」
新刊でも膨大な情報に左右されないための自分なりの軸をもつことの大切さを最後は訴えるのではないかとみています。

ちなみに本のタイトル、Nexusの英語の意味は「つながり、むすびつき」という意味です。

情報と私たち人類のむすびつきと解釈すると、いろんな深い知見や洞察が得られそうです。

情報の渦に飲み込まれないために

産業革命以降、次々と新しい技術が登場し、私たち人類はその恩恵にあずかって経済を豊かにしてきました。

生成AIを含むAI技術もビジネスを圧倒的に効率化し、生活をより便利にしてくれるものなのでしょう。負の面があるからと警戒して「後ずさり」したり、「使わない」という選択はもったいない気がします。

一方で、AIはこれまでとは根本的に違う、革新的な技術であるがゆえに、使い方を注意しないと、うみだされる情報の渦に飲み込まれてしまいかねないと感じています。

それを防ぐためには、自分が何をやりたいのかをよく知り、人が主となって技術を使うことが大事なのだと感じています。

(2024年8月26日 ニュースーンで放送)
国際部デスク
豊永 博隆
1995年入局
経済部記者、アメリカ総局(ニューヨーク)、おはBizキャスター、大阪局デスク、経済部デスクを経て現職

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