牛角が「女性半額セール」で大炎上…「男性差別じゃない」「非モテの僻み」と言い張る人たちの「お粗末すぎる擁護論」

御田寺 圭 プロフィール

男性差別は「差別」とみなされにくい

最後に(6)だが……これについてはこの一言につきる。「だから私は何度も何度も何度もキャンセルカルチャーは危ないと言ってきただろ」と。自分が他人に振りかざすときには最強の武器に見えるが、その武器は自分だけが自由に使えるわけではない。同じ武器を相手が振りかざすことだってできるし、そうなったときには世の中はたちまち「言ったもの勝ち」の殲滅戦になる。本誌現代ビジネスを含め、私はこれまでさまざまなメディアで何度も警告してきた。そしていま、まさにそういう時代に突入しつつあるのだ。

他にも紹介しきれていない細々とした論点はあるのかもしれないが、挙げているときりがないので、これくらいにしておく。

 

いずれにしても今回の騒動において浮き彫りになったのは、「男性差別を許さない!」という怒りの声を(冷笑的に)批判する側の人びとの主張や価値観は、とてもこれまでに戦わされてきた議論を踏まえて出されたとは思えないほど旧態依然とした性差別主義であり、きわめて保守的なジェンダーロールやジェンダーバイアス——つまり「男性は女性に奢るのが当然」「男性は女性よりもたくさん食べるのが当然」といった価値観——に立脚したものがほとんどであったということだ。

今回の騒動でそこかしこで現れた「モテないだろw」「器ちっさ!w」「女は小食なんだから!」「営利企業の自由だ!」といった意見には呆れてしまうばかりだが、一方でそのような感情任せの放言ですら、主に「男を嘲笑する」という文脈からなお根強い支持や共感を獲得し、以て社会的・政治的影響力が高められてしまう現状があることも事実だ。まだまだ「男性差別」と「女性差別」には、動員できる権力と影響力の非対称性が歴然としてある。

この騒動でも再確認させられることになったが、じつはこの世の中には、真剣かつ原理原則的に「男女平等」とか「差別撤廃」を実現したいと考えている人などほとんどいないのではないか。世間体として見栄えがいいから、流行っているから、そうした意見をとりあえず唱えてきただけで、実際には「差別していい存在」に対しては差別するし、それを指摘されたら「モテない奴の僻み!」と言い出す。私にはますます「男女平等」や「差別撤廃」というイデオロギーが空虚なものに見えてしまう。

あなたがたこそ本当の意味で「モテたいだけ」なのではないかと。

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