牛角が「女性半額セール」で大炎上…「男性差別じゃない」「非モテの僻み」と言い張る人たちの「お粗末すぎる擁護論」

御田寺 圭 プロフィール

なお、今回の炎上を受けて「米国のカリフォルニア州では、裁判所が『性別による価格差は、有害な固定観念を強化する』との判断を下し、営利事業者による男女差別を禁じている」「牛角が進出しているニューヨーク州やペンシルベニア州などにも、性別を理由としたサービスの価格差を禁止する法規定がある」と指摘する記事も大きな反響を得ている。日本がいわゆる「ポリコレ」受容の模範としてきた米国では、すでに「営利企業が男女の扱いに差をつける」ことは明確に違法とされているのだ。日本はグローバル基準でみれば明らかに「遅れた」男女平等意識を持っているといえよう。

「奢る男性も得をする」?

(4)の「女性が半額になれば男性側も得をする」という主張も無茶苦茶だ。そもそも論として、なぜ男性が奢る前提になっているのか。甚だしく論外である。

SNS上で定期的に盛り上がる「奢り奢られ論争(男性は女性に奢るべきか否か論争)」もまた、個人的には「おもんない」のでその是非をめぐる議論にコミットするつもりはないのだが、しかし「男性が奢ること」を所与とする論を立てつつ男女平等を語るのは端的に欺瞞である。せめて「私は差別主義者なので女性だけを優遇するのはアリだと思います」と素直に表明するべきだ。

 

そして(5)「男のほうがたくさん食べるのだから、女は損をしている」についてだが、個人的にはこれが(悪気なく言っているのはわかるが、それゆえに)もっとも問題だと思っている。ようは「生理的・身体的な特質のせいで経済的な「損」を被る性が一定の補償を受けるのは、差別ではなくむしろ公平のために妥当なことだ」と言っていることになるからだ。

この論理を正当化するのであれば、男性側が「よく食べる(=多くのカロリーを必要とする)」という身体的・生理的特性もまた、見方を変えれば「損をしている」とみなすことができる。たとえば昨今では生活困窮者や災害避難者に対して「女性には生理用品の保証をつけろ」という論調が盛り上がっているが、同様の理路で「男性のほうがよく食べるのだから食糧配給や公的支援を女性より多く分配すべきだ」という主張も成立しうる。

さらにもっと根深い問題をいえば「男性のほうが統計的に寿命が短いのだから年金支給を早めろ・医療保険の負担を下げろ」という理屈も成立するし、男性のほうが過労死や労災死のリスクの大きな仕事をしているのだから、給与に「男性手当て」をつけるべきだといった主張もありえることになる。だが実際にはそのような「傾斜配分」は成立していないし、そのような主張は「女性差別」として一蹴されるだろう。つまり、「男性・女性一般の生理的・身体的特質」を根拠として男女の扱いに格差をつけることには、きわめて慎重な判断が必要になるということだ。そもそもそのような考えは「本質主義」としてさんざん批判されてきたのではなかったのか。

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